Battle : Los Angeles


2010年9月17日(土)「世界侵略:ロサンゼルス決戦」

BATTLE: LOS ANGELES・2011・米・1時間56分

日本語字幕:丸ゴシック体下、太田直子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35、XDCAM)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.battlela.jp/
(入ると画面極大化。音にも注意。全国の劇場リストもあり)

2011年8月12日、全世界の主要都市に同時に未知のエイリアンの大規模な攻撃が仕掛けられた。アメリカも全軍が出動する中、士官学校を卒業したばかりのマルチネス少尉(ラモン・ロドリゲス)と、退役届けを出したばかりの2等軍曹(スタッフ・サージャント)マイケル・ナンツ(アーロン・エッカート)を臨時の副官に迎えた海兵隊の2-5部隊は、西海岸ロサンゼルスのリンカーン地区の警察署からの救援要請で、避難し遅れた民間人を救出に向かうことになる。彼らは敵の正体を知らぬままヘリで現場へ向かう。

74点

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 ものすごい戦争映画。迫力も、臨場感もたっぷり。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)のようでもあり、まるで本当にロサンゼルスが戦場になっているよう。「第9地区」(District 9・2009・米/ニュージーランドほか)のように宇宙人もそこにいるようだし、絵も音も迫力満点。セリフでドラマを語るのではなく、行動で語っていくところが素晴らしい。全編ほとんどが戦闘シーンで、これは撮影がとても大変だったに違いない。出演者も、ほとんど感情的なセリフなしで演技をしなければならないわけで、チャレンジングだったと思う。よくまとめたものだ。これはできるだけ大スクリーンで見た方が良いと思う。

 原因や動機はほとんど語られず、結末も示されないが、それが気にならない。これも珍しいこと。切り取られた1つのエピソードの中でちゃんと起承転結があるからだろう。これも上手い。音楽での盛り上げも、実に勇ましくて、いい。観客も一緒に戦ってしまう感じ。

 ただ、印象を一言でいうと、これは「海兵隊の宣伝映画?」。海兵隊は国と国民のために命を掛けて戦い、不屈だと。しかし、これは一般兵士ではなく、特殊部隊レベルの作戦なのでは。ヘリでの強襲で、特殊爆弾を使ったり、携行対戦車砲のAT4なんかも使うし、LAV-25装甲車も使っちゃうし。やっぱり設定としては「ブラックホーク・ダウン」のように特殊部隊の混成部隊の方が自然なのでは。

 そしてカメラ揺すりすぎ。手持ち撮影のように揺れまくり。シネスコだと見ている方はものすごく疲れる。しかも字幕があるとそれが倍増する。途中で「少しは落ち着いてカメラを止めろ」と叫びたくなった。ここぞというところで使ってこそ効果があるのでは。全部揺れまくりって!!

 海兵隊の部隊という設定なので、メインの武器はM16A4ライフルとM4A1カービン。フラッシュライトとAN/PEQ-15、ACOGスコープ、ヴァーチカル・グリップ付き。M203を付けたものも出てくる。分隊支援火器はミニミM249。車載銃はFN MAGとM2ブローニング。LAV-25装甲車は25mmのチェヘーンガンを搭載しているが、残念ながら使わない。おそらく主要な出演者は実際に軍隊などで、かなりトレーニングを積んだのだろう。それぞれ動きがリアルで説得力があった。もちろんミリタリー・テクニカル・アドバイザーが付いている。

 主役の海兵隊のスタッフ・サージャント(二等軍曹)マイケル・ナンツはアーロン・エッカート。主役は少ないものの、最近は重要な脇役をやっている人。タバコ産業などの巨大な企業のPR活動をコミカルに描いた「サンキュー・スモーキング」(Thank You for Smoking・2005・米)や、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)にトゥー・フェイス役で出ている。本作中、後退した敵に対して前進攻撃する際、M4A1からベレッタM9への鮮やかなトランジッションを見せる。

 途中で合流する空軍のテクニカル・サージャント(二等軍曹)のエレーナ・サントスを演じたのはミシェル・ロドリゲス。女性プロ・ボクサーを描いた劇場映画デビュー作の「ガールファィト」(Girlfight・2000・米)以降、「バイオハザード」(Resident Evil・2002・英/仏)や「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)など、アクション系が多い人。そして似合っているし上手い。使っていた銃はM4A1。

 メガネの黒人伍長ケヴィン・ハリスは日本に何度も来ている歌手のニーヨ。自然な感じで違和感はなかった。使っていた銃はM16A4ライフル。

 民間人の1人、ジョーはマイケル・ペーニャ。スナイパー映画の傑作「ザ・シューター 極大射程」(Shooter・2007・米/加)でFBI捜査官ニック・メンフィスを演じた人。そのまえに傑作群像劇「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)にも透明なマントのエピソードで出ていた。使う銃はM16A4ライフル。

 民間人の女性、ミッシェルはブリジット・モイナハン。「コヨーテ・アグリー」(Coyote Ugly・2000・米)で注目され、「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)、「トータル・フィアーズ」(The Sum of All Fears・2002・米/独)、「リクルート」(The Recruit・2003・米)、「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)、「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War・2005・仏/米/独)と着実にキャリアを積み重ねてきた。ちょっと見ないと思っていたら、これに出ていたか。

 ほとんど戦闘シーンの脚本を書いたのはクリストファー・バートリニー。この前にミステリーの「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」(The General's Daughter・1999・独/米)を書いている。軍では共通するが、あとはむしろ共通点なし。この10年ほどの間に、作風が変わるほどの何かがあったのか。

 監督はジョナサン・リーベスマン。南アフリカ出身で、またまたマイケル・ベイ製作のリメイク・ムービー、「テキサス・チェーンソー ビギニング」(The Texas Chain Saw Massacre: The Beginnig・2006・米)を監督しているらしい。「テキサス……」は見ていないが、本作を見る限り今後も期待できそう。ほとんどが戦闘シーンで、敵味方複雑な動きがあり、カットが速くカット数も多く、合成も多いから、撮影は相当大変だったと思う。同じことを何度もやらなければならない。それをテンションを落とさず最後までじっくりとやり抜くというのは、並大抵のことではない。いや、むしろ、どうやって撮っていったんだろう。いずれ発売されるDVDとかBDでそんなメイキングが付いていると良いのだが。

 武器担当はスティーヴ・カーンズ。TVから映画も手掛けるようになったようだが、今でもメインはTVか。映画は、日本では劇場未公開だったがなかなか面白かったシリーズ2作目の「トリプルXネクスト・レベル」(xXx: State of the Union・2005・米)や、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull・2008・米)、シリーズ4作目「バイオバードIVアフターライフ」(Resident Evil: Afterlife・2010・独/仏/英)、シリーズ3作目「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」(Transformers: Dark of the Moon・2011・米)などを手掛けている。軍系の武器が強いのかも。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で、45分前くらいに着いたらオヤジが3人、20代の男性が1人。35分前くらいに整列に来て、30分前くらいに開場。この時点で10人くらい。老夫婦が1組いて、女性が1人。中高年というより高齢者が多い感じ。最終的には1,064席に100人くらいの入りか。ちょっと少なすぎるのでは。

 CM予告が始まってもほとんど明るいままなので、くらいシーンがほとんど見えない。もっと暗くしてもらえないだろうか。後から入ってくる人のためなのだろうが、遅れてくる人はそれくらい覚悟すべきだろう。配慮されることで余計に遅れてくるということもあるのでは。

 気になった予告編は……なんとヒット作の第2弾が公開されるらしい。上下マスク「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」は前作と同じ配役で、新たなキャラクターとして「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvunnor・2009・スウェーデン/デンマークほか)のピアスだらけのハッカーを演じたノオミ・ラパスが出ている。面白そう。

 上下マスクの「キャプテン・アメリカ」は新予告に。より具体的な内容になってきた。ただのブルックリンのガキか。面白そうだし、カッコいい。

 スクリーンがシネスコ・サイズになってから、若者にクモが噛みついて……って「アメイジング・スパイダーマン」はまた最初から? 違いは主観カメラが多いということくらいか。なぜこんなに早くリメイクするのだろう。

 そして007ことダニエル・クレイグの「ドラゴン・タトゥーの女」。音楽だけで、セリフ一切なし。カッコいい。ただ、デヴッド・フィンチャー監督とはいえ、オリジナル版と全く同じ印象。リメイクだから当然といえば当然だが。

 それにしても、ケータイを点けたまま、遅れて入ってくるってどういうこと。まぶしいんだよ。


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