Sanctum


2010年9月18日(日)「サンクタム」

SANCTUM・2011・米/豪・1時間43分(IMDbでは108分)

日本語字幕:手書き風書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.85、HDCAM)/ドルビー・デジタル、dts(IMDbではSDDSも)

(米R指定)(3D上映、日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://sanctum-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

南太平洋、パプアニューギニアのジャングルの真ん中にぽっかりと口を開けた巨大な垂直の穴。その先は水路になっており、人跡未踏。その洞窟の調査をするため、資産家で冒険家のカール(ヨアン・グリフィズ)の資金援助により、世界的な洞窟冒険家フランク(リチャード・ロクスバーグ)をリーダーとするグループが2,000m地下まで到達していた。そこへカールがエベレストで知り合ったという若い女性の登山家ヴィクトリア(アリス・パーキンソン)と、フランクの息子ジョシュ(リース・ウェイクフィールド)を連れてやってくる。ところが近づいていた嵐が巨大化し、サイクロンとなったため大量の雨水が洞窟に流れ込み、調査隊は脱出できなくなる。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 どこかで聞いたような話。新鮮味が全く無し。しかも声がすべて吹替のようで、臨場感がまったく感じられない。ただ、洞窟の絵は素晴らしい。CGで描いたり、実写データやミニチュアを合成しているのかもしれないが、説得力がある。本当にカメラなどの機材をそこに運び、役者たちを連れて行って撮影したような感じがする。立体音響も効果的に使われ、迫力がある。ただ、登場人物に魅力的な人物がおらず、まったくといっていいほど感情移入できない。みんなバカっぽい。ここが最大のミスかも。つまり観客がどうしても助かって欲しいと思うような気になれないのでは、この手の映画では失敗ではないだろうか。

 タイトルよりも製作総指揮のジェームズ・キャメロンの名が目立っている感じだが、なぜジェームズ・キャメロンが? 「アバター」(Avatar・2009・米/英)の3D撮影システムを使うため? あれだけ緻密な脚本を書く人がこれをOKにするとは。確かに「アビス」(The Abyss・1989・米)に通じるものはある。水中自動3Dカメラは「タイタニックの秘密」(Ghost of the Abyss・2003・米)に通じるけど……。

 洞窟映画といえば、最近でいうと洞窟ホラー「地獄の変異」(The Cave・2005・米/独)や女性だらけのサバイバル「ディセント」(The Descent・2005・英)があってどちらもあまり後味が良くなかったが、本作も後味があまり良くない上に、どちらも越えていない気がする。せめて何か、面白いとか、オリジナリティがあるとかすればいいのに……。3D上映というだけ。これは辛い。

 父と子の確執、出資者と実働部隊のギャップ、豊富な経験と初心者、勇気と無謀、あまい判断、最新機器、停電、孤立、事故……など面白い要素をこれだけ詰め込んで、これか。何の化学反応も起きなかったと。音楽も、ベタなつけ方で、しかもなりっぱなし。うるさい。洞窟内では叫ぶようにしてコミュニケーションを取っているのに、それに負けないように付けられているから、セリフが聞こえづらい。じゃま。

 日本ではG指定(制限なし)だが、かなり残酷なシーンが多い。水中に浮く目をむいた死体とか、大けがを負って助けられないからと溺れさせるシーンや、髪の毛がロープに絡まり頭皮がはがれるシーンなど、大人でも目を背けたくなるシーンがある。

 あまり有名な役者は出ていない。憎まれ役のフランクを演じたのはリチャード・ロクスバーグ。悪役が多い人で、「M:I-2」(Mission: Impossible II・2000・米/独)の敵のボス、ドラキュラものの「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米/チェコ)のドラキュラ伯爵、「ステルス」(Stealth・2005・米)の博士、「機械じかけの小児病棟」(Fragile・2005・西/英)の医師などを演じている。

 冒険家のカールはヨアン・グリフィズ。超大作「タイタニック」(Titanic・1997・米)で船員を演じていた人で、その後残念なSF「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米/独)のゴム人間をやっていた。

 実話に基づく脚本を書いたのはジョン・ガービンとアンドリュー・ワイトの2人。ジョン・ガービンはダイヴィング・コーディネーター役もやっていて脚本は本作が初めて。アンドリュー・ワイトはTVドキュメンタリーのプロデューサーを長年務めてきた人で、「タイタニックの秘密」もプロデュースしている。実話に基づくとは言え、劇作品しかも脚本は初めて。なぜこの人たちに脚本を任せたのか。ドキュメンタリータッチを重視したということか。2人ともダイヴィングやケーヴィングのベテランで、世界各地を探検しているらしい。まさにフランクのような人たちなのだろう。

 監督はアリスター・グリアソン。短編は何本か撮っているが、劇場用長編映画は第二次世界大戦中のオーストラリアと日本の戦いを描いた「男たちの戦場(未)」(Kokoda・2006・豪)に続いて2本目。それが高く評価されて本作の監督へとつながったのだとか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜日に確保。ここの3D上映方式は「新宿ピカデリー」と同じ液晶方式だが、なぜか前売り券との差額は700円ではなく、たった100円。これは安い。これなら3D上映でも良いかも。ただ、3D眼鏡を借りたら、くもりはあった。100円だからしょうがないか。メガネ拭きでどうにかきれいにした。

 30分くらい前に着き、豆乳入りのカフェオレを飲んで待っていると、10分前くらいにアナウンスがあり場内へ。客層は若い人から中年層くらいまで。女性は1/3くらいいただろうか。最終的に228席に3割くらいの入り。これは始まったばかりにしては少ないが、この内容ではまあ、しようがないか。

 気になった予告編は……スピルバーグの3D-CGアニメ、上下マスクの「タンタンの冒険」は新予告。やっぱりロバート・ゼメキスの3D-CGアニメのように気持ち悪さがある。動きは滑らかなのに、どこか不自然な雰囲気。写実的すぎるんじゃないかなあ。逆に言えばアニメッぽくない。

 上下マスクの「インモータルズ」は「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2006・米)風に神々の戦いを描くものらしい。絵が絵画的で素晴らしかった。

 上下マスクの「三銃士」は日本語吹替での予告。やっぱり雰囲気が変わる。TV的な感覚で見てしまうからだろうか。

 上下マスク「プリースト」は絵に書いたようなB級ムービーという雰囲気。ポール・ベタニーがヴァンパイア・ハンターで、ほかにクリストファー・プラマーやマギーQらも出ているという豪華配役。面白そう。


1つ前へ一覧へ次へ