Unfair the answer


2010年9月19日(月)「アンフェアthe answer」

2011・関西テレビ放送/フジテレビジョン/ジャパン・ミュージックエンターテインメント/共同テレビ/東宝・1時間49分

ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー・デジタル

(字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.unfair-movie.jp/index.html
(全国の劇場リストもあり)

警視庁で検挙率No.1の刑事、雪平夏見(篠原涼子)は、前作の事件で左遷され、北海道・西紋別町の刑事課に勤務し、課長の一条道孝(佐藤浩市)と男女の関係になっていた。その頃、東京の警視庁管内でクギ撃ち銃(ネイル・ガン)を使った連続猟奇殺人事件の3件目が発生。事件の容疑者が次に殺害されるという異常事態。3件目の死体からは雪平の元夫、フリー・ジャーナリストの佐藤和夫(香川照之)の指紋が発見され、その情報は西紋別署にももたらされる。すると、雪平の前に佐藤が現れ、USBメモリは見られなかったと返し、ほとぼりがさめるまで海外に行くと言って姿を消す。ところが翌日、佐藤は連続猟奇殺人事件と同じ手口で殺害され、容疑者として雪平が逮捕される。すぐに東京地検から検事の村上克明(山田孝之)が現れ、自分が担当すると刑事たちを追い出すが……。

72点

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 キャッチ・コピーは「雪平、最後の事件。」。でも見終わると、終わってないじゃん、という感じも。とは言え、これで終わらせるのが正解なんだろう。結局、雪平以外、全員がアンフェアということで。最後の最後は、観客に少しのヒントも与えていなかった映画のというか監督のアンフェアというおまけ付き。巨悪は倒せない。これがテーマか。

 なかなかハラハラドキドキの展開。小道具があとで効いてくる展開も見事。「悪魔のいけにえ」(The Texas Chain Saw Massacre・1974・米)のようになって、それから「チェイサー」(The Chaser・2008・韓)や「悪魔を見た」(I Saw the Devil・2010・韓)のようになりつつ、一線は超えずに最後はちゃんと日本映画としての「アンフェア」にもどってくる。この振り幅が佐藤志摩子監督なのではないだろうか。さすがにホラー感覚は素晴らしい。

 ただ、展開がどうにも納得が行かない。後から、そういえばおかしかったなというのではなく、見ている時に、えっ、こんなことする?とか、なんでそんなことするの?ということが多かった。この辺が気になるかならないか。ボクは気になってしまった。

 たとえば北海道で雪平が逮捕される時、警視庁で検挙率No.1のベテラン刑事なんだからじたばたしたらかえって疑われることがわかっているのに走り出してしまうとか、追手を振りきったあと殺害現場に行きたいといって行くと、事件後すぐのはずなのに現場が封鎖もされておらず、乾いていない血が残っていて、しかもわかりやすいところからあとで重要な証拠も発見される。鑑識や捜査官は現場を調べていないのか。容疑者が自宅から車で外出し、歩いて帰ってきたり(ナガシマ監督か!)、脅しの電話を自宅から(!)かけていてリダイヤルするとその家の中でベルが鳴ったり、雪平がその家の中(に限らずどこでも)を調べるのにすぐフラッシュライトを点けたり(外から気付かれてしまう)、とてもまぶしい液晶のフラッシュライトを顔に直接当てられても犯人は平気だったり、些細な理由で容疑者というか殺人鬼が刑事と手を組んだり……。USBメモリを渡すのにもっと近くへと言われて危険な相手に本当に近づくとか、うーむ、バカなのか?

 篠原涼子は高ビーな女を好演。前作から4年ぶりだが、ちっとも歳を取っていない感じは素晴らしい。これから公開される「ステキな金縛り」(2011・日)にも出ているらしいが、今後はしばらく産休に入るとか。はまり役だから言うことなし。使っている拳銃はS&WのM3913レディ・スミス。実際に日本の一部の警察で採用されているらしい。そして課長の一条の銃だったと思うがP230らしい銃も使う。銃は良いが、グリッピングが甘いのがちと残念。もっとハイ・グリップしなきゃ。

 エリート検察官の村上克明を演じたのは山田孝之。映画出まくりだが、「電車男」(2005・日)のオタクから、「鴨川ホルモー」(2009・日)のおバカ、「クローズZERO」(2007・日)のツッパリまで、硬軟なんでもやれる人。ただダークな役はハマりすぎて怖いので、ちょっと笑えるキャラの方がいいような気はする。本作は彼のいろんな面が出ている。その意味で面白い。

 異常者、結城を演じたのは大森南朋。不気味な感じは良く出ていたが、しゃべると普通の人っぽく、無言の方が怖かった気がする。NHKの大河ドラマ「龍馬伝」で武市半平太を演じていた。劇場映画では傑作ミステリーの「ゴールデンスランバー」(2009・日)で竹内結子の夫を演じていた。もっと古くは、三池崇史監督の「殺し屋1」(2001・日)では気弱で泣き虫の殺し屋イチを演じて鮮烈に印象に残った。

 原作は秦建日子の「推理小説」(河出文庫)。脚本監督は佐藤志摩子。イギリスでヴァンパイア映画「ヴァージニア」(Tale of a Vampire ・1992・英)を撮り、帰国後なかなかのアドベンチャー・ホラー「エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS」(1995・日)を撮っている。その後、前作の脚本を書き、「K-20怪人二十面相・伝」(2008・日)なども監督・脚本して、本作に至ると。普通の日本人監督にはないエンターテインメント性が見事だと思うのだが、やっぱりホラー系なんかが向いているのではないだろうか。

 銃器特殊効果はパイロテックの大宮敏明と早川光。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で土曜日に確保。30分前くらいについてコーヒー飲みながら待っていると、12〜13分前に入場開始。年齢層は20代〜中高年まで割と幅広く、男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。特に中年女性、オバサンたち。最終的に607席に3.5割くらいの入り。話題作の割には今ひとつの入り。TV系とは言え、前作から時間がたちすぎたか。

 気になった予告編は……上下マスクの「カイジ2」は2週間で2億円に4人の負け組が挑むというもの。面白そうではあるんだけど、ポイントで見られるなら……という感じかな。

 上下マスクの「ステキな金縛り」は三谷幸喜作品で、面白そうなんだけれど、あまりにオールスター状態ということもあり、「THE有頂天ホテル」(2005・日)みたいなら良いが、「ザ・マジックアワー」(2008・日)みたいだとちょっとなあ。


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