The Next Three Days


2010年9月24日(土)「スリーデイズ」

THE NEXT THREE DAYS・2011・米/仏・2時間13分(IMDbではアメリカ版122分、豪版133分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、ARRI、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG13指定)

公式サイト
http://threedays.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大学で講師を務めるジョン・ブレナン(ラッセル・クロウ)の家に、ある朝突然警察がなだれ込み、妻のララ(エリザベス・バンクス)を上司の殺人容疑で逮捕する。ララが現場にほかの女がいたという証言は証拠がないとして無視され、裁判の結果、アレゲニー刑務所に収容される。やがて3年後、30年の刑が確定し、子供のルーク(タイ・シンプキンス)は学校でいじめられるようになり、妻は自殺未遂。彼女が無実だと信じるジョンは、彼女の人生を取り戻すため、様々な手を尽して脱獄させる計画を練る。そんな状況の中、ララは長期受刑者の入る刑務所へ移送されることになる。そこは遠く、簡単に面会に行ける場所ではなかった。期限は3日後。ジョンは計画を実行に移す。

75点

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 うーん、さすがはポール・ハギス作品。重いテーマでずっしりと来る。とても感動的で、考えさせられる。簡単な答など無いし、犯罪だからといって一方的に責めることもできない気がする。こういう話は良くあると思うが、他の作品より現実的でリアル。たくさんの想定外と失敗。劇中「あんたは必死すぎるから失敗する」と犯罪者に言われるが、まさにそんな感じ。それが観客にも伝わってくる。ほぼ133分間、緊張しっぱなし。普通のピカレスクではないからハッピーではないが、絶望的でもない、ほろ苦いエンディング。

 結局、この事件のおおもとをたどれば、警察の現場の捜査はテレビの「CSI」のようなものではないということ。立件に必要なものさえ見つかればそこで打ち切り。必要以外のものは探さない。それに不運が重なると無実でも30年の刑となる。この恐ろしさ。

 それでも、大学講師としての緻密な計画と、不測の事態に対応できる能力、絶対に諦めない姿勢、そして心底悪人にはなりきれない良い人の部分が、見るものに驚きと感動を与えてくれる。この行為は犯罪だが、観客は応援したくなる。加えて、細かな伏線と小道具の使い方の上手さ。具体的に書くと楽しめなくなるので書かないが、よく練られた脚本だと思う。

 ジョン・ブレナンはラッセル・クロウ。オーストラリアでキャリアをスタートさせ、西部劇の「クイック&デッド」(The Quick and the Dead・1995・米/日)からハリウッドへ進出。「NO WAY BACK/逃走遊戯」(No Way Back・1995・米)では豊川悦司と共演。「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)や「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)などミステリー&アクション系の話題作に出演。最近は「消されたヘッドライン」(State of Play・2009・米/英/仏)や「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)に出ていた。「クイック&デッド」からラッセル・クロウの銃器係とガン・コーチはずっとセル・リード。本作では、初めて銃砲店でグロックを買う設定で、弾の詰め方を店員に質問する初心者。だからあえて構え方をカップ・アンド・ソーサーにしたのだろう。ただ、銃を公共のゴミ箱に捨てる時、ちゃんとスライドを引いてチャンバーをクリアしているところなど、この男の良い人らしさを表している。愛車は前半プリウス、後半シボレー。

 妻のララはエリザベス・バンクス。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(Catch Me If You Can・2002・米/加)や「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)、モンスター・ホラーの「スリザー」(Slither・2006・加/米)などに出ていた人。最近ではブルース・ウィリスの「サロゲート」(Surrogates・2009・米)の製作総指揮を夫とともに務めた。

 ジョンがララを脱獄させるために参考にする本「塀を越えて」の著者として登場するデイモン・ペニントンはリーアム・ニーソン。ちょっとしか出てこないが印象に残る。さすがの存在感。最近良かったのはプロのスパイを演じた「96時間」(Taken・2008・仏/米/英)や、似たようなアクションもの「アンノウン」(Unknown・2011・英/独ほか)で、この人、意外にアクション系が良い。

 ジョンのおじいさんは、ほとんどセリフがないがブライアン・デネヒー。基本悪役が多い人だが、感動SF「コクーン」(Cocoon・1985・米)あたりから良い人も多くなってきた感じ。最近はTVが多いようで、映画はリメイク・アクション「アサルト13要塞警察」(Assault on Precinct 13・2005・米/仏)やロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演した「ボーダー」(Righteous Kill・2008・米)に出ていた。貫録、大有り。

 近所のママ、ニコールはオリヴィア・ワイルド。28年ぶりの続編「トロン:レガシー」(Tron: Legacy・2010・米)の美女。近日公開される「カウボーイ&エイリアン」にも出ている。今後注目の女優。

 監督・脚本・製作はポール・ハギス。TV出身の人で、劇場長編映画の脚本デビューはクリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米/独)で、いきなりアカデミー賞最優秀脚本賞にノミネート。続く監督・脚本・製作の群像劇「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)で最優秀脚本賞とを最優秀作品賞を受賞。再びクリント・イーストウッドの「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)でも最優秀脚本賞にノミネートされている。人気を盛り返したと言われる「007/カジノ・ロワイヤル」(Casino Royal・2006・英ほか)も手掛けている。ものすごい実力者。テーマに対する研究というかリサーチも非常に深いような気がする。

 赤いタブル・コロンの点滅から白い文字が現れるタイトル・クレジットがかっこいい。誰が担当したのかはわからなかった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席自由で、40分前くらいに着いたらオヤジが1人。35分前くらいにボックス・オフィスが開いて、10人くらいに。ほぼ中高年というか、高齢者寄り。25分前くらいに整列されて、まもなく開場。この時点で20人くらい。女性は1/3ほど。最終的には1,064席に1.5割くらいの入り。なぜこんなに少ないのだろう。もっと入って良い映画だと思うけど。

 気になった予告編は……とにかく予告編が始まっても場内が明るく、暗部が良く見えない。夜のシーンなど全くダメ。遅れて入ってくる客への配慮だろうが、入っている人のほうが多いし、配慮すべきは先に入っている人だろう。予告だってタダじゃないだろうし。上下マスクの「スクリーム4」なんかくらいシーンが多く、ほとんど解らなかった。「カウボーイ&エイリアン」も夜のシーンは全滅。ああイライラする。

 


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