Priest


2010年9月25日(日)「プリースト」

PRIEST・2011・米・1時間27分(IMDbではアメリカ版122分、豪版133分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル、dts、SDDS)

(米PG13指定)(3D上映もあり)

公式サイト
http://www.priest-movie.jp/
(全国の劇場リストもあり。情報少)

昔、人類とヴァンパイア族の戦いがあった。教会は神の力により人々を守り戦ったが、ヴァンパイアの力は強く総力戦により世界は荒廃してしまった。そして教会は究極の兵器、プリーストを投入。これは超人的な能力を持つ戦士で、これにより形勢は逆転した。教会は高い塀で囲まれたシティを作りそこで人々を保護。一方、数が少なくなったヴァンパイアは居留地に押し込められた。プリーストは解散、やがて人々から忘れられた。そんな時、辺境の荒廃地アウトポスト10で家族がヴァンパイアらしい一団に襲われ、娘のルーシー(リリー・コリンズ)がさらわれる。その地区の保安官ヒックス(カム・ジガンデイ)はルーシーの彼氏で、彼女がよく叔父のプリースト(ポール・ベタニー)の話をしていたことから一緒に救出に行って欲しいと頼む。しかし教会はヴァンパイアの襲撃を認めると人々が不安になることからプリーストに許可を出さない。悩んだすえ、プリーストは教会の制止を振り切り救出に向かう。

73点

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 いやあ、王道のB級映画。一言でいえば「トンデモ」な内容のファンタジー。ありえないような話を、しっかり世界観を作り込んで、いかに本当らしく見せるか。観客をその世界に引き込んで、いかにハラハラドキドキさせるか。本作はいろんな映画の要素をおいしいところをいただいて、寄せ集めで作ったような映画。メインはヴァンパイアもののようで、SF西部劇といった雰囲気。レトロフューチャー。これが面白く思えるかどうか。

 ヴァンパイアもので、未来を描いたSFでありながら、形式は西部劇。レトロフューチャーの雰囲気は、都市部は「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)、郊外は「マッドマックス/サンダードーム」(Mad Max Beyond Thunderdome・1985・豪/米)。ヴァンパイアvsヴァンパイア・ハンターは「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米/チェコ)的で、「アンダーワールド」(Underworld・2003・英/独ほか)的でも、「ブレイド」(Blade・1998・米)的でもある。もちろん「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)も入っているし、「ケルベロス 地獄の番犬」(1991・日)も入っている。コナミのゲームが原作の「サイレントヒル」(Silent Hill・2006・加/仏ほか)も入っている感じ。この監督はかなりのファンタジー映画ファンか。いやマニアか。

 プリーストを演じたポール・ベタニーはA級作品にも出ている人だが、あえて好んでB級に出ている雰囲気。自由に演じさせてもらえるとか、なにかメリットがあるんだろう。「Rock You![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)や「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind・2001・米)はとてもよく、注目されるきっかけに。最近は対策の「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏)で刑事役を演じていたが「レギオン」(Legion・2010・米)のようなB級作品にも出ていた。

 プリーストの1人、女性のプリーステスはマギー・Q。「M:i:III」(Mission: Imposible III・2006・米/独/中)や「ダイ・ハード4.0」(LiveFree Hard 4.0・2007・米/英)でメジャーに乗り、最近はTVアクション・シリーズ「NIKITA/ニキータ」(2010〜2011・米)に出ている。

 裏切るプリーストは、ニュージーランド出身のカール・アーバン。悪役が多い感じで、最近では「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)のマッコイ役や、ブルース・ウィリスのアクション「RED/レッド」(Red・2010・米)のCIAエージェント役をやっている。注目され出したのはホラーの「ゴーストシップ」(Ghost Ship・2002・米/豪)あたりからだろうか。

 若い保安官ヒックスを演じたのはカム・ジガンデイ。吸血鬼メロドラマ「トワイライト〜初恋〜」(Twilight・2008・米)に出ていた人で、本作の前にクリスティーナ・アギレラとシェールのミュージカル「バーレスク」(Burlesque・2010・米)のバーテン役をやっていた。使っていた銃は水平に2本の銃身が並んだモーゼル・ミリタリーのようなSFガン。この銃のためにプリーストが弾丸の先端に十字の刻みを入れたダムダム弾(?)を作ってやるのだが、被甲弾じゃなくて鉛の弾って……この方がヴァンパイアに効くのか。

 教会をしきっている高位聖職者のリーダーらしきオレラスを演じたのはクリストファー・プラマー。往年の傑作ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)のトラップ大佐を演じた人で、最近は「Dr.パルナサスの鏡」(The Imaginarium of Doctor Parnassus・2009・英/加/仏)でパルナサス博士を演じていた。1929年生まれというからもう80歳を超えている。まだまだかくしゃくとしたもの。がんばってほしい。

 銃器はほかに多銃身のSFショットガンや、教会のガードらしい特殊部隊が使っているポンプショットガンをデコったSF銃などが登場。

 原作は韓国のミンウー・ヒョンの同名コミックなんだとか。脚本はコリー・グッドマン。アメリカでは“Apollo 18”という作品が2011年9月に公開されているが、いまのところ日本での公開はない模様。

 監督はスコット・スチュワート。ポール・ベタニーと「レギオン」(Legion・2009・米)を撮った人だ。劇場長編映画としては2作目。キャリアーの中ではビジュアル・エフェクトが最も多い(The Orphanageのスタッフとして記載され、個人名がクレジットされていないものが多いようだが)。こんなB級をどんどん撮って欲しい。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待っていると10分前くらいに開場。3D上映で前売りとの差額は100円。これなら何の文句もない。別な新宿の劇場では同じ3Dメガネで差額は700円だ。たしかにこちらは安い分、メガネがちょっと曇っていた。メガネ拭きで拭いても簡単にはきれいにならなかったが、見ているうちに気にらならなくなった。ただ、あえて3Dにする必要はなかったと思う。立体感はあったが、全体に暗い色調で、メガネを掛けるとさらに暗くなるのでそこがつらい。邪魔な感じもするし。

 観客層は若い人から中高年までいたが、やっぱりメインは中高年。女性は1/3ほど。最終的には228席に30人くらいの入り。これはさみしい。

 気になった予告編は……スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから007ダニエル・クレイグの「ドラゴン・タトゥーの女」。デビッド・フィンチャー監督らしい絵作りで面白そうだが、3部作の1だとか。とは言え、リメイクなので肝心のミステリー部分は見た人はすべて知っているわけで、その辺がどうなのか。

 「アメイジング・スパイダーマン」は新たにリスタートするもので、また蜘蛛に噛まれるところから始まるんだとか。それでいいのかなあ。神々の戦いを描くという「インモータルズ」はとにかく絵がスゴイと。


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