Rise of the Planet of the Apes


2010年10月9日(日)「猿の惑星 創世記ジェネシス」

RISE OF THE PLANET OF THE APES・2011・米・1時間46分(IMDbでは105分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS

(米PG-13指定)(デジタル上映もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/saruwaku/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

密猟によってアメリカの製薬会社ジェンシスの実験施設に連れて来られたチンパンジーたちを使い、ウィル・ロッドマン(ジェームズ・フランコ)をリーダーとするグループはアルツハイマー病の特効薬の開発に取り組んでいた。そして新たに開発されたALZ112を投与したチンパンジーの中で、特にW09番の青い目を持つチンパンジーが目覚ましい効果を上げ、人間でもむずかしいルーカス・タワーというパズルを何度も連続して解いて見せた。ウィルは人間を使った臨床試験に移る許可を得るため、上司のスティーヴン・ジェイコブス(デヴィッド・オイェロウォ)とともに重役会でプレゼンテーションを行う。ところがちょうどその時、W09番のチンパンジーが逃亡、暴れ回ったため、警備員に射殺される。原因はチンパンジーが妊娠しており、赤ん坊を守るためだったのだが、実験はすべて中止、チンパンジーたちも処分されることに。しかしウィルは赤ん坊を生かすため家につれ帰り、アルツハイマー病の兆候を見せる父チャールズに会わせる。父が読んでいた本からシーザーと名付けられたチンパンジーは驚異的な知能の発達を見せる。3年後、父の症状はさらに進み、隣人とのトラブルからシーザーが助けに入り怪我をしてしまう。ウィルは研究所からALZ112を盗み出すと、自分の父に投与する。

85点

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 面白かった。よくできた物語。かつての劇場版「猿の惑星」(Planet of the Apes・1968・米)シリーズでは未来からタイム・トラベルしてきた猿のコーネリアスとジーラの息子がシーザーと名乗り、猿たちのリーダーになって人類への反旗を翻すということになっていたが、本作では未来とは全く関係なく、新薬がきっかけとなって、猿が進化を遂げ、人類は破滅の道をたどるという形になっている。その薬がアルツハイマーの特効薬として開発されるところも面白いし、手話を使う猿など、最近の話題もちゃんと取り込み、実に説得力がある。猿たちも、人類に対して反旗を翻すというより、単に自由を求めて人間の支配を逃れるための行動。力で人類から権力を奪い取るわけではない。

 主人公の父がアルツハイマーで、息子がそれをどうにかしたくて奮闘しているというところもいい。身につまされる人も多いのでは。壊れていく父の姿。これは辛い。やがては自分の問題になるかも知れない。自分が壊れていくことになったら、どうするだろう。そして、それを優しく見守る賢い猿。パフォーマンス・キャプチャーと呼ばれる俳優の演技をコンピューターに取り込む方式は、単なるモーション・キャプチャーではなく、エモーション・キャプチャーと呼ばれるほどに感情の微妙な表現まで取りこめるのだという。この手法によるCGの猿の感情表現が感動的だ。感情だけでなく、知性を感じさせるまなざし。単に瞳だけの表現の問題ではないと思う。

 ただ、巨大製薬会社の暴走というのはあまりにもパターンという気はする。研究者が止めるのも聞かず、金もうけのため危険な実験を進めてしまう。ここだけがちょっと残念といえば残念か。

 映画の中で「モンキーじゃないエイプだ」というセリフがある。モンキーは普通の猿で、エイプはチンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどの類人猿を指すらしい。たしかにこの映画で徒党を組むのはチンパンジー、ゴリラ、オランウータンだ。そして、シーザーは「自分たちは弱いが団結すれば強い」と折れた枝を束ねて思う。まるで3本の矢のようなエピソード。

 しかし3D上映にしなかったのは偉い。今はちょっと話題作だとすぐ3D上映だ。本作も充分にできたはずだが、そうしなかった。そこが良い。

 冒頭の密猟シーンで使われていたライフルはリー・エンフィールド。ウィルのノートPCはMacBook Pro。ラストに登場する警察の特殊部隊はM4A1カービン、MP5、グロックなどを装備。ヘリにはミニミ。なんかSG551か552もあったような気がしたが、気のせいか。

 ウィル・ロッドマンを演じたのはジェームズ・フランコ。「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)で注目を集めた人で、その後第一次世界大戦のアメリカ人パイロットたちの活躍を描いた「フライボーイズ」(Flyboys・2006・英/米)でも好演、話題となったポール・ハギスの「告発のとき」(In the Valley of Elah・2007・米)などに出ていたものの、最近は小さな作品が多かったのでどうしたのかと思っていたら本作が来たかと。この後も出演作が目白押し。

 CGの基になるシーザーの演技を担当したのはアンディ・サーキス。「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)のCGのコングや、「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)のCGのゴラムでも基になる演技を担当した。「キング・コング」ではオンボロ船の船長も演じていた。本作は、猿らしい動きはもちろん、キング・コングでもやっていたが、微妙な感情表現までやっていて、これが感動させてくれる。素晴らしい。

 ウィルのアルツハイマーの父チャールズを演じたのはジョン・リスゴー。1970年代から活躍している人だが、本作の雰囲気から「ハリーとヘンダースン一家」(Harry and the Hendersons・1987・米)を思い出してしまった。意識したキャスティングかも。悪役もうまいし、コミカルな役柄もはまる。

 恋人となる女性獣医キャロラインはインドの女優さん。話題となった「スラムドッグ$ミリオネア」(Slumdog Millionare・2008・英)でヒロインを演じた美女だ。その後ハリウッド進出をはたしたようだが、大作は本作が初めて。最新作は「インモータルズ」ということになるらしい。

 動物保護局の所長はブライアン・コックス。「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)とか「X-MEN 2」(X2・2003・加/米)とか、悪役が多い人なので何かやりそうな雰囲気なのだが、たぶんこの人の罪は何もしなかった、見ようとしなかった罪ということになるのだろう。

 その所長のバカ息子がトム・フェルトン。さすがに「ハリー・ポッターと賢者の石」(Harry Potter and the Sorcerer's Stone・2001・米/英)からのドラコ・マルフォイ役。憎たらしい感じが抜群に上手い。今後、ほかでの活躍も期待したい。

 ちょっと気の弱い同僚飼育員のロドニーはジェイミー・ハリス。かなり痩せているので、ちょっと不気味な役が多い感じ。テレンス・マリックの「ニュー・ワールド」(The New World・2005・米/英)やイリュージョン映画「プレステージ」(The Prestige・2006・米/英)に出ている。つい最近、残念な映画「グリーン・ホーネット」(The Green Hornet・2011・米)にポパイ役で出ていた。本作では人が良くて、しかし気の弱そうな感じが良く出ていた。

 脚本と製作を兼ねたのはリック・ジャッファと奥さんのアマンダ・シルヴァーの2人。アマンダの卒論の脚本をリックが製作して怖いスリラー「ゆりかごを揺らす手」(The Hand That Rocks the Cradle・1992・米)として映画化。ほかに2人でピーター・ハイアムムズのモンスター映画「レリック」(The Relic・1997・米/英ほか)の脚本も手掛けているらしい。それ以来しばらく製作がなかったが、ここにきて急に映画化とは。

 監督はルパート・ワイアット。イギリス出身でTVでキャリアを重ね、日本劇場未公開の「The Escapist」(2008・英/アイルランド)が高く評価されて本作にいたったらしい。本作が良かったので、次作にも期待してしまう。はたして……。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分前くらいに付いたら劇場自体が開いていなかった。9時に入口が開いてロビーへ。10分ほどして開場となった。下は小学生くらいから、上は中高年まで。メインはやはり中高年で、オリジナル版「猿の惑星」(1968)を劇場か数年後のTV放送で見て衝撃を受けた世代ということか。女性は1/3ほど。最終的には301席の9.5割くらいが埋まった。

 まあ、マナーの悪さには驚かされる。列に並ばない人が多い。それで列が動き出すと平気で横は入りしてくる。入口を入って列はエスカレーターに続いていると、階段を走って登って先に横は入りする。ルールはなくても、こういうことはいかがなものか。ガッカリさせられる。携帯だけの話ではない。

 気になった予告編は……上下マスク、トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」は、楽しみな映像がてんこ盛り。特に高層ビルに取りついたトム・クルーズはスゴイ。楽しみ。

 ソダーバーグの新作「コンテイジョン」は、豪華俳優陣によるオールスター状態の疫病の感染爆発映画らしい。でもどこかで聞いたような話。B級の臭いがぷんぷんするのに俳優がとにかく豪華。ソダーバーグ……どうなんだろう。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「In Time」の予告。SFアクションのようで、人類は25歳になると寿命が尽き、あとはお金次第で生き延びる長さが違うと、そんなような話。そして、その命を裏でコントロールしていたヤツがいたとかで事件が起きるらしい。ジャスティン・ティバーレイク、オリヴィア・ワイルド、アマンダ・サイフリッド、キリアン・マーフィーらが出ている。面白そう。


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