Blitz


2010年10月15日(土)「ブリッツ」

BLITZ・2011・英・1時間37分(IMDbでは105分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、種市譲二/シネスコ・サイズ(レンズ、Arri、デジタルも)/ドルビー・デジタル、SDDS

(英18指定、米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://blitz-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

南ロンドン署の刑事トム・ブラント(ジェイソン・ステイサム)は犯罪者に対しては容赦なく暴力を振るう武闘派。新聞に載る騒ぎとなったため、しばらく謹慎するように署長に命令されるが、管内で女性警察官がパトロール中に喉を撃ち抜かれて殺される凶悪事件が発生、チャンスをやると復帰を許される。そして、かつて助けてやった男から目撃情報がもたらされる。そんな時、奥さんを亡くし休職している警部に替わって、西ロンドン署からゲイという噂のあるポーター・ナッシュ警部(パディ・コンシダイン)が配属されてくる。

74点

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 メイン・ビジュアルの銃、コルト・ダブル・イーグルなんていうレアな銃は全く関係ないが、とにかく恐ろしいイギリス映画。これを見るとイギリスへは行きたくなくなる(行く機会もお金もないが)。実際、最近イギリスでの暴動が報道されたこともあり、映画の絵空事ではないのがヒシヒシと伝わってくる。一説には、イギリスでの銃器規制により一般人の銃器所持が禁止されて余計に治安が悪くなり、暴動が大きく長引くようになったとも言われる。犯罪者は法律が厳しくなろうが、必要なら銃を手に入れる。そして容赦なく引き金を引く。この怖さ。

 自分を稲妻(ブリッツ)と呼び、新聞に事件の予告や詳細を伝える異常な犯人。被害者をハンマーでめった打ちにしたあと、死体の横でお菓子を食べながらテレビのクイズ番組を見るなど、とにかく普通じゃない。それに輪をかけて、タバコは吸うし酒は飲むし、態度も言葉遣いも最悪な犯罪者と紙一重の刑事。救いは、悪は許さないという強い心。これで腐敗警官だったら最悪だが、そういう男手はない。そして高感度の高いジェイソン・ステイサムが演じているから、不快になる手前で踏みとどまっているのだろう。

 最初は異常者の無差別殺人と思われた事件が、次第に違う様相を見せてくる。ほとんど暴走刑事とゲイの上司による単独捜査で、鑑識も登場せず、指紋や血痕も調べないのは、TVドラマ「CSI」を見ている人にとっては信じられないだろう。それをやっていれば、ここまで過剰な暴力を使わずに、犯人を特定でき、しかも起訴まで持っていけたのにと。ただ、見ている時はそれほど気にならない。冷静に考えるとおかしいと。まあ捜査に勢いがあると、時間のかかる科学捜査は待っていられないということはあると思う。

 主演は今やアクション俳優として引っ張りだこのジェイソン・ステイサム。大作からB級まで出まくり。ボク敵には「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)シリーズと「アドレナリン」(Crank・2006・米)シリーズが好きだが、つい最近リメイクの「メカニック」(The Mechanic・2011・米)にも出ていて、なかなか良かった。39歳、まだまだバリバリやれる。新作が5本位上も控えている。

 ゲイの上司ナッシュはパディ・コンシダイン。「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」(In America・2002・アイルランド/英)や「シンデレラマン」(Cinderella Man・2005・米)の感動作にも出ているそうで、確かにどこかで見た顔。ちょっと前には「ボーン・アメティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米/独)や「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)に出ていた。知的なゲイ、それでいて芯は太いという雰囲気が良く出ており、うまい。

 強烈な悪役のブリッツを演じたのはアイダン・ギレン。何を考えているのかわからず、平気で残虐なことをしそうな雰囲気がすごい。スクリーンではとても怖く見える。アイルランド出身で、これまではTVでの活躍が多かったようだ。劇場映画では「シャンハイ・ナイト」(Shanghai Knights・2003・米/香)に貴族役で出ていたらしい。格好によって雰囲気が全く変わる。この冷血な感じが合っているのではないだろうか。今後にも期待したい。ちょっと雰囲気が「スパイダー」(Along Came a Spider・2001・米/独/加)の犯人役のマイケル・ウィンコットにも似ている。使っていた銃はP226。

 浮浪者のような情報屋はネッド・デネヒヘー。こんな役が多いようで、最近だとロバート・ダウニー・Jrのアクション「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独/英)やラッセル・クロウの「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)、「ハリー・ポッターと死の秘宝PART1」(Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 1・2010・英/米)に出ている。ピッタリのイメージ。

 銃はほかに、使用された武器がSIGの9mmとわかったあとでSP47/8の写真が出てくる。そして警察の特殊部隊はMP5にドット・サイトを載せたものやライト付きを装備。クライマックス近く、P226のスライドを操作して装填しているのに、次のカットでハンマー・ダウンだったのは残念。エンド・クレジットでアーマラー&レプリカと出たので、撃たないシーンではレプリカが使われたのだろう。イギリスでは最近ハンドガンが所持できなくなったので、アクション映画撮影も大変になったに違いない。名前はマーク・シェリーとかなんとか。

 原作・製作総指揮はケン・ブルーウン。公式サイトによると、日本を含む世界各地で英語教師をしたあと、ブラジルの刑務所に入れられる事態となり、それがきっかけで小説を書くようになったらしい。この強烈な暴力描写はその辺から来ているのかもしれない。

 脚本はネイサン・パーカー。ちょっと話題になったがマイクロ劇場公開だった「月に囚われた男」(Moon・2009・英)の脚本を書いた人。そういえばその主演のサム・ロックウェルもちょっとアイダン・ギレン系の人であるような気がするのはボクだけか。

 監督はエリオット・ネスター。TV・CMの世界からミュージック・ビデオに進み、初監督作品の日本劇場未公開「Love is the Drug」(2006・米)が高く評価され本作に至るらしい。当然、今後も期待だろう。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。30分ほど前に到着し、ロビーで待っていると10分前くらいに開場。ほぼ中高年で若い人はわずか。関係者らしい一団が6〜7人。多すぎるって。女性は1/5くらいか。その後やや増えたので1/4くらいになったかも。最終的には149席がほぼ満席に。

 最近はスマホが多いので、場内で操作されるとまぶしくてしようがない。ロビーでやれ。そして、ロビーにいる時に電源をオフにさせろ。場内でメール・チェックするほど忙しいなら映画に来るな。……ってグチが多くなったかなあ。

 気になった予告編は……上下が狭まってシネスコ・サイズになってから、「スマグラー」は、怖そうで、面白そうで、どっちなの。あとは見慣れた予告ばかり。


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