Cowboys & Aliens


2010年10月22日(土)「カウボーイ&エイリアン」

COWBOYS & ALIENS・2011・米/印・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(IMDbではレンズ、クレジットではwith Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.cowboy-alien.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

西部の荒野で意識を取り戻した男(ダニエル・クレイグ)は、記憶を失っており、自分の名前もわからなかった。突然襲ってきた3人の男たちをあっという間にやっつけると、武器や馬、上着や帽子などを手に入れ、近くの町に向かう。そこはかつて金鉱で栄えたが金が採れなくなって寂れ、今は大牧場主のダラーハイド(ハリソン・フォード)に支配される町だった。そして男は手配書で彼が銀行強盗のジェイク・ロネガンと気付いたシェリフのジョン・タガート(キース・キャラダイン)によって逮捕される。連邦保安官に引き渡すため馬車に乗せられた時、正体不明の飛行物体が現れ、町の人々を次々とさらっていく。ここでジェイクの腕にとり付けられていたブレスレットが反応、銃では撃ち落とせなかった飛行物体に向けて発射すると1機を撃ち落とすことができる。翌日、ダラーハイドが指揮を取り、誘拐された人々を連れもどすボランティアの部隊が編成され、飛行物体から脱出したと思われる足跡を追って、追跡が始まる。

83点

1つ前へ一覧へ/次へ
 西部劇が好きで、SFも好きだとこの映画はたまらない。寄せ集めという印象はあるが、きっちり西部劇を作り込んでいる。町を牛耳るボス、強盗団、追跡、インディアンといった西部劇の定番をきっちりと盛り込み、その上でSFを構築し、これまた定番の人間狩り、侵略、宇宙船、強力な武器、おぞましい姿、巣、なども混ぜ込んでいる。荒唐無稽といえばまさにそのとおり。ピンと来ない人もいるだろう。ボクはハマった。2時間、嫌なことは忘れ、頭を空っぽにして西部劇とSFの世界を堪能した。それが気持ち良かった。

 拉致と奪還は「エイリアン」(Alien・1979・米/英)的でもあり、エイリアン侵略ものの定番。しかし西部劇でもジョン・フォードとジョン・ウェインの「捜索者」(The Searchers・1956・米)があり、融合しやすかったのだろう。実際、脚本家チームは「捜索者」に「未知との遭遇」(Close Encounter of the Third Kind・1977・米)のマジックを持ち込むことを想像したという。原作はスコット・ミッチェル・ローゼンバーグのグラフィック・ノベル。本ができる前にタイトルから映画化権が取得されたという。そのため、ストーリーはイメージ画から想像された映画オリジナルのものらしい。

 公式サイトによると、設定では1873年のアリゾナということになっているようだが、スクリーンには出ない。この年はちょうどコルトのSAAがアメリカ陸軍に制式採用された年。本作にも登場するカートリッジ式のS&Wスコフィールドが陸軍に採用されたのは1870年。一般にはパーカッション方式からカートリッジ式への過渡期。ジェイク・ロネガンを襲う3人組の1人がパーカッション方式のレミントンM1858を使っている。さらにジェイクは一味の1人からコルトM1860のカートリッジ・コンバージョンを奪って使う。ストックを取り付けるためのねじが付いていた。一方、お金持ちのダラーハイドはシルバーめっきでアイボリー・グリップを付けたSAAの7.5インチを使っている。ライフルはウインチェスターのM66イエローボーイ。ホルスターはもちろんオーセンティックなループ・ホルスター。

 ガン・コーチはもち早撃ち世界チャンピオンのセル・リード。セッセル・クロウ作品はハリウッド・デビュー作からずっと手掛けている人。当然西部劇を手掛けることも多いが、タクティカルもきっちりしかもカッコ良く指導できる人。つい最近公開された「メカニック」(The Mechanic・2011・米)はインチキ宗教家のボディガードたちの動きが素晴らしかった。

 ダニエル・クレイグが主演でありながら、出ずっぱりという感じではなく、各キャラクターそれぞれに見せ場が作られている。そしてそのバランスが絶妙。群像というほどそれぞれが立っているわけではなく、かといって取ってつけたようでもなく、絶妙なバランス。この辺も上手い。

 ジェイク・ロネガンを演じたのはダニエル・クレイグ。6代目007で、イギリス生まれ。だからたぶん西部劇は初めてだと思うが、ガン・コーチのセル・リードのおかげか、銃の取扱が手慣れてい鮮やか。ガンマンらしく見えた。アクション・シーンが上手いのは007だから当然だろう。

 犯罪者ではないがどちらかといえば悪役なダラーハイドはハリソン・フォード。ちゃんと最後には良いところを持っていっている。「お前が息子だったら良かったのに」というインディアンのエピソードはちょっと泣かせる。さすがにほぼ70歳だから、かなり老けた感じ。インディ・ジョーンズはもう無理だろうなあ。この前に「恋とニュースのつくり方」(Morning Glory・2010・米)に出ていたようだが見ていない。

 謎の女ガンマン、エラはオリヴィア・ワイルド。ガンベルトをワンピースの上からクロス・ドローで吊っている。「トロン:レガシー」(TRON: Legacy・2010・米)で注目され、「スリーデイズ」(The Next Three Days・2010・米/仏)に続く出演。今や公開を控えている作品が8本ほどもある超売れっ子。

 サルーンのオーナー、ドクはサム・ロックウェル。異常な役が上手い人だが、本作では比較的まともな役。この前に「アイアンマン2」(・2010・)で悪役を演じている。強い印象に残ったのは「キャメロット・ガーデンの少女」(Lawn Dogs・1997・英)。大ヒット作「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)も良かったが、SFコメディの「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)も良かった。

 シェリフのジョン・タガートはキース・キャラダイン。義理の兄がTVドラマ「燃えよ!カンフー」(Kung Fu・1972〜1975・米)のデヴィッド・キャラダイン。ボクには「ロング・ライダース」(The Long Riders・1980・米)から西部劇俳優というイメージが強い。だからシェリフや苦には納得のキャスティング。

 ダラーハイドの部下のインディアン、ナット・コロラドはアダム・ビーチ。クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」(Flags of Our Fathers・2006・米)で印象に残る役を好演。その前にもニコラス・ケイジの戦争映画「ウインドトーカーズ」(Windtalkers・2002・米)に出ている。本作でも出番は少ないが印象に残る。

 ダラーハイドからボウイ・ナイフをもらい、男になれといわれる少年、シェリフのジョン・タガートの孫?エメット・タガートは、ノア・リンガー。かなり残念なファンタジー「エアベンダー」(The Last Airbender・2010)米でスキンヘッドの主役を演じた少年だ。才能があるのにあの作品ではイメージが良くなかった。本作で多少取り戻せたのでは。10歳からトレーニングを始め、12歳で黒帯を獲得。テコンドーのテキサス州チャンピオンなんだとか。

 脚本家チームはロベルト・オーチー、アレックス・カーツマン、デイモン・リンデロフ、マーク・ファーガス、ホーク・オストビーの5人。

 メキシコ出身のロベルト・オーチーとアレックス・カーツマンは、マイケル・ベイのSF「アイランド」(The Island・2005・米)や、トム・クルーズのアクション「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・米/独/中)、傑作SF「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)を手掛けた人。

 デイモン・リンデロフはTVの人気シリーズ「刑事ナッシュ・ブリッジス」(1996〜2001・米)や「LOST」(2004〜2010・米)を手掛けている。そしてマーク・ファーガスとホーク・オストビーはSFアクションの「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)や「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)を手掛けている。

 SF系とアクション系はカバーしているようだが、西部劇経験者が1人もいないような……。しかし、アメリカ映画の基本は西部劇といわれることもあるようで、アメリカ映画の根底には西部劇の要素が含まれていて、プロの脚本家なら書けるということか。

 監督はジョン・ファブロー。監督よりは俳優として知られていたが、最近、傑作SFアクション「アイアンマン」を2作ともヒットさせ、それが評価されて本作へとつながったらしい。しかし過去の作品を見ても、出演作にも西部劇がないのも、やっぱりアメリカ人だからか本格的に撮れちゃうんだ。ハリウッドのシステムがそうできているということもあるのかも知れないが。

 途中どこかでケータイが鳴り、メールだったのか、オヤジが堂々と液晶を開いてチェックしていた。まぶしいっちゃない。まったくマナーの悪さと来たら……。強制的にロビーで電源を切らせるべきでは。

 公開初日の初回、新宿の大劇場は全席自由で、40分とちょっと前に着いたらボックス・オフィスは開いていて、入口にはオヤジが3人。32〜33分くらい前に開場となって場内へ。この時点でオヤジが7〜8人。この直前に宅配便でフィルムが届いていた。こんなギリギリ? 別なフィルムか?

 20分前くらいになって20人くらい。こんなに少なくて大丈夫か。劇場が次々となくなって、三丁目付近には最新設備のシネコンができたから、みんな危ない雰囲気のある歌舞伎町には来なくなった感じが……。新宿コマ跡に東宝のビルができて、そこにシネコンがあればまた人の流れが変わるかも知れない、それまでこの劇場が持つかどうか。ここは1と2だけだからなあ。でも、がんばって欲しい。

 最終的には1,064席に60〜70人くらいの入り。ほとんど中高年で、女性は12〜13人ほど。うむむ。三丁目方面はもっと混んでいるんだろうなあ。でもスクリーンの大きさなら絶対こっちなんだけど。

 場内が明るいまま、スクリーン周辺だけ暗くして始まった予告編で気になったのは……やっぱり良く見えない。明るいシーンばかりなら見えるが、ちょっとくらいともう見えない。上下マスクの「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」や「ドラゴン・タトゥの女」は暗いシーンが多く、細部が全くわからない。この予告ってお金を取っているんじゃ……? 

 上下マスクの「ワイルド7」は新予告に。どうも警察内部の人間と戦うことになるらしい。銃も新予告ではキャラクターごとにちゃんと変えられている模様。でも飛葉チャンのウッズマンはないだろうなあ。

 上下マスクの「ピザボーイ」は、ピザ配達の青年が無理矢理強盗させられるというコメディで、どうかという気もしたが、監督が「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)の人ということで、意外に面白いかも。劇場次第か。上下マスク「タンタンの冒険」も新予告のよう。でもどこかに違和感が……。

 上下マスクの「スクリーム4」も新予告だったようだが、ほぼ暗いシーンの連続なので、何が何やら。3本とも見てきたので気が引かれるが、いまさら何かあるのか。劇場によるかなあ。


1つ前へ一覧へ/次へ