Rango


2010年10月23日(日)「ランゴ」

RANGO・2011・米・1時間47分

日本語字幕:丸ゴシック体下、小寺陽子/シネスコ・サイズ(2.35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.rango.jp//
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ペットのカメレオン、ラース(声:ジョニー・デップ)は、いつも1匹でたいくつだから、自分で話を作って演じるという遊びをやっていた。ある日、砂漠の中の1本道を走行中の車から飼育ケースごと落下し、放り出されてしまう。砂漠をさまよううち、ショットガンを持った女性のビーンズ(字幕ではマメータ、声:アイラ・フィッシャー)に助けられ、ダート(土)という名の町にたどり着く。そこは水不足にあえぐ小さな町で、ラースはつい調子に乗って武勇伝を語り、西部から来たランゴだと名乗ってしまう。偶然が重なりタカを倒したランゴは保安官へ推薦され、亀の市長(声:ネッド・ビーティ)によって正式に任命されることに。そんなとき、銀行から貴重な水が盗まれてしまう。

73点

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 良くできている。ちゃんとした西部劇。大人でも楽しめる。ちょっと主役がおバカすぎるきらいはあるが。絵のリアルさは注目に値する。キャラクー以外はまるで実写のよう。水、煙、ガラス、夕日、砂漠……ありとあらゆるものがリアル。ただ、キャラはほどよくデフォルメされ、毛並みや質感などはリアルなものの、ちゃんと擬人化されている。普通なら3D上映にするところだろうが、よくぞノーマルのまま公開してくれた! エライ!!

 でも、このストーリー、なんだか最近も聞いたことがあるような。主人公の成長の物語。最初はつい軽いウソをついてしまい、引くに引けなくなってそれを隠すためにウソを付き、どんどん雪だるま式にウソが大きくなって、ヒーローに祭り上げられてしまう。そしてそれが見破られて挫折し、再び立ち上がりみんなの力を借りて本当のヒーローになる……。ハリウッドの定番、そしてアメリカ人が好きな話なのだろう。確かに気持ちの良い話。スッキリする。しかし、でき過ぎで、ありふれていないかい。もちろん見せ方を変えると名作になるということはある。でもなあ……。残念な3D上映映画「ガリバー旅行記」(Gulliver's Travels・2010・米)もこんな話じゃなかったか。

 4人(フクロウだが)のバンドの歌と曲でナレーションが語られ、話が進む。町一番の気の強い美女(?)に、応援してくれる幼い子供。西部劇の定番としては、町を牛耳る町長、スゴ腕の殺し屋、主人公の棺桶を作る葬儀屋、山師のじい様、決闘、水争い……と、どれひとつ怠りない。そしてやっぱり西部劇のヒーロー、アイコン(西部の精霊)はクリント・イーストウッド。そうとは言っていないが、この雰囲気としゃべり方はどうみてもイーストウッドだろう。「マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾」(800 balas・2002・西)でもヒーローはイーストウッドだった。さらには、なぜかジャバ・ザ・ハットのようなキャラもいた。

 もちろん声は本人ではなく(出てくれたら最高だったが)、ティモシー・オリファント。「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)で悪役を演じ、「ヒットマン」(Hitman・2007・仏/米)では機械のような殺し屋を演じた人。意識して声を当てたのではないだろうか。ただ、アルマジロとか、なぜか字幕が関西弁のキャラがいて、違和感出まくり。「シュレック」(Shrek・2001・米)のハマちゃんということか。吹替じゃないのだから(ボクは吹替でも違和感があったが)やめて欲しい。

 ランゴの声はジョニー・デップ。原語ではカメレオンではなく、リザード(とかげ)と呼ばれていた。「アリス・イン・ワンダーランド」(Alice in Wonderland・2010・米)、「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏)、「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides・2011・米)と映画出まくり。本作では「パイレーツ」シリーズのジャック・スパロー船長のイメージのままカメレオンのキャラも決められたような感じ。使っていた銃はコルトSAAそっくりだが、なぜかスウィング・アウトしてしまう構造。残弾をひと目で見せるために必要だったのだろう。

 男まさりのカメレオン、ビーンズ(マメータ)の声はアイラ・フィッシャー。「お買いもの中毒な私!」(Confessions of a Shopaholic・2009・米)で主演を務めた美女。まあ、このキャラはあまり美人といえないな。残念。使っていた銃は水平二連ショットガン。まさに定番。突然フリーズするのは「ファインディング・ニモ」(Finding Nimo・2003・豪/米)のドリーか。

 亀の町長の声はネッド・ビーティ。古くから活躍していて、良い人も悪党も演じられる人。傑作アクション「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)では悪徳上院議員を演じていた。

 ランゴを応援するセーラー服のネズミの少女、プリシラの声はアビゲイル・プレスリン。アラン・アーキンがアカデミー助演男優賞を受賞した「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)で孫娘を演じた人。ちょっと前には傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)に出ていた。

 凶暴なガンマン、ニシキヘビ系の大蛇、ジェイクの声はビル・ナイ。いかにも凶悪な感じが素晴らしい。ゲテモノからドイツ軍将校まで何でも演じられる人。有名なところでは「アンダーワールド」(Underworld・2003・英/独ほか)シリーズや「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」(Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest・2006・米)シリーズのデイヴィ・ジョーンズがある。しっぽにガトリングガンのような銃器が仕込まれている。なぜか回転するのはシリンダーのようだが。

 山師のジイ様、もぐらのバルサザーの声はハリー・ディーン・スタントン。1950年代から西部劇などで活躍していた人。壮大な歴史物語絵巻「西部開拓史」(How the West Was Won・1962・米)やクリント・イーストウッド主演の戦争コメディ「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)、SFホラーの金字塔「エイリアン」(Alien・1979・米/英)にも出ている。

 脚本はジョン・ローガン。「グラディエーター」(Gladiator・2000・米/英)や「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)を書いた人。なるほどうまいわけだ。

 監督・製作はゴア・ヴァービンスキー。大ヒット作「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)シリーズの監督だが、ネイサン・レインのコメディ「マウス・ハント」(Mousehunt・1997・米)や、銃がキーとなるプラッド・ピットのアクション「ザ・メキシカン」(The Mexican・2001・米)、そしてなんとホラーの「ザ・リング」(The Ring・2002・米/日)も撮っている。でもやっぱりコメディ系が得意なのではないだろうか。

 銃はほかにウインチェスターM92のようなレバー・アクションも登場。SAAのカートリッジにはPMC .45の刻印まで。PMCは実在のメーカー。お金が出ているんだろうか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。10分前くらいに入場開始。下は幼稚園か小学生低学年くらいから中高年まで幅広く、男女比は4対6くらいで女性が多かった。ジョニー・デップ人気か。

 最終的に409席に4〜4.5割くらいの入り。まあまあというところか。でも出来は良いのでもっと入っても良いと思う。

 気になった予告編は……CGアニメの「アーサー・クリスマスの大冒険」は、サンタの息子アーサーが、たった1つ配り忘れたプレゼントを渡しに行く物語らしい。吹替版の予告で、ウエンツ瑛士が吹替。

 韓国映画「第7鉱区」は、「エイリアン」(Alien・1979・米/英)や「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)、「アビス」(The Abyss・1989・米)を合わせたような物語か。しかし雰囲気はハリウッド。日本ではなかなか出せない雰囲気だ。

 くらくなって、スクリーンが左右に広がりシネスコ・サイズになってから、「ヒューゴの不思議な発明」。監督はマーティン・スコセッシで、クロエ・グレース・モレッツ、ベン・キングスレー、ジュート・ロウらが出ている。残念なのは3D上映ということ。スコセッシよお前もか。

 暗くなってから遅れて入って来ているのに、堂々と携帯をライト代わりに使って人の迷惑などかえりみず入ってくる母と子。まったく何を考えているんだろう。悲しくなる。


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