1911


2010年11月5日(土)「1911」

辛亥革命・2011・中/香・2時間02分

日本語字幕:丸ゴシック体下、遠藤濤美子/シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル

(米R指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.1911-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1911年3月、清王朝に対して共和制を求め何度も革命活動を起こし、その度に失敗してきた孫文(ウィンストン・チャオ)は国外逃亡を余儀なくされ、あとを信頼する同士、黄興(ジャッキー・チェン)に託す。そして黄興が清朝政府に追われないように、秘密機関の女、徐宗漢(リー・ビンビン)と供に夫婦として広州に向かうように指示する。4月、同盟会は広州で武装蜂起、総督府と激しい戦いを繰り広げる。一方、孫文はサンフランシスコで華僑の人々に革命のための募金を募っていた。ところが、そこに電報が入り、蜂起は失敗し、72名(86名)が戦死したことを知る。しかしそれにより革命の機運は高まり、諦めなかった黄興は、10月再び湖北省の武昌で武装蜂起、優勢を勝ち取る。その報は孫文に届き、孫文はヨーロッパへ向かうと、イギリス・フランス・ドイツ・アメリカの4国銀行団に対して、清朝政府に借款を行わないように要請する。一方、清朝政府は軍の司令官として袁世凱(スン・チュン)を任命する。

72点

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 何年にもわたる歴史的な大事件を2時間程度に映画化すると、どうしても細部が欠落する。大きな動きだけになってしまい、個人は希薄になってしまう。だからドラマが大味になりがち。本作もていねいに作り込まれてはいるのだが、どうしても感情が伝わって来にくい。

 戦闘シーンはリアルで、銃声も怖い。薬莢が落ちる音まで入っている。がれきが飛び散り、指が飛んだり、手が飛んだり、血糊が派手に飛んだりするが、どうにも傷みや恐怖、悲しさ、怒り、使命感、勇気などの感情が伝わってこない。

 全体としては、こんなに犠牲者が出て、未来ある若者たちがどんどん死んで、革命の悲惨さはわかる。しかしやはり全体であって個人はない。

 しかも、中国人名が漢字ではあってもなじみが薄く、覚えられない。名前が2つある場合もあり、覚えきれない。黄興は強克とかいうニックネームだか通称だかもあって、一体誰が誰やら。しかも最初だけ字幕には日本語読みのルビが付いているが、その後は漢字のみ。いきなり徐宗漢と出てきても誰のことやら。男か女かさえわからない。そして中国語版も中国の伝統で吹替になっているから、違和感はある。ジャッキーの地声はほとんどみんな日本では知っていて、それと違うからなんだかなあ、という感じ。だから日本語吹替版がメインになっているのか。

 それをもったわかりにくくしているのが、たぶん歴史上、有名な人なのだろう、すぐに戦死してしまう人物までが字幕が(中国語で)出るので、画面上は日本語字幕と合わせて字幕だらけ。読み切れない。歴史の教科書に出てくる孫文や袁世凱はどうにかパッと認識できても、他がむずかしい。

 歴史の教科書の写真で見た孫文にそっくりのウィンストン・チャオは、台湾出身で、ミシェル・ヨーの冒険活劇「レジェンド 三蔵法師の秘宝」(天脈傳奇・2002・中/香港ほか)に出ていたらしい。本作の前にも「孫文 100年先を見た男」(Road to Down・2007・中/マレーシア)で孫文を演じているんだとか。

 ジャッキー・チェンは本作で映画出演100作目となるらしい。お金にこだわりはないらしく、息子にも財産は残さないと宣言、東北大震災に多額の寄付をした。凄い人だ。ただ最近は良い作品に恵まれていない気はする。使っていた銃はモーゼル・ミリタリー・ピストルで、しかも2挺拳銃。後半ではS&Wの5インチくらいのランヤード付きのハンドエジェクターらしいリボルバーも使う。ジャッキーはちゃんとトリガー・ガードから指を外に出していた。突撃の時持っているマシンガンはたぶんマキシム・マシンガン。一般兵士はボルト・アクションのモシン・ナガンを使っていた。

 徐宗漢を演じたリー・ビンビンは、ミッシェル・ヨーのSFアクション「シルバーホーク」(Silver Hawk・2004・香)に出ていた人で、最近ではチャン・ツィイーの「女帝[エンペラー]」(The Banquet・2006・中)に出ていたらしい。

 光緒帝の皇后であり、西太后の姪という隆裕皇太后はジョアン・チェン。ベルナルド・ベルトリッチの傑作「ラストエンペラー」(The Last Emperor・1987・中/伊ほか)の皇后役で注目され、デヴィッド・リンチ監督のTVシリーズ「ツイン・ピークス」(Twin Peaks・1990〜1991・米)でまた衝撃を与えた人。まだまだ新作が6本も控えている売れっ子だ。

 脚本はワン・シントンとチェン・バオグァンの2人。どちらもあまり実績はないようだ。

 総監督はジャッキー・チェンで、監督はもともと撮影監督だったチャン・リー。フォン・シャオガン監督の「ハッピー・フューネラル」(Big Shot's Funeral・2001・中/香)や、日本でも話題となった「レッドクリフPart I」(Red Clife・2008・中)シリーズの撮影を担当している。ジャッキー・チェンに認められ、本作で監督デビューを飾ることになったという。

 公開初日の字幕版は最終回のみ、銀座の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。15分前くらいに入れ替えとなって場内へ。やや前席が邪魔になる劇場で、今回は2階席はなし。2階の前列なら見やすいのだが。

 歴史物らしく中高年がメイン。女性は1/3くらい。最終的には350席ほどの1階席の5.5割くらいが埋まった。

 それにしても携帯を使っているヤツが多い。中にはケータイで話ながら入ってくるヤツもいる。いっそのこと場内はケータイ禁止にすれば良いのに。必要ならロビーで使えばいい。ライト代わりに使っているヤツもいるし。メールもロビーでやれ。

 気になった予告編は……上下マスクの「リアル・スティール」は、新しいと言うか長いバージョン。ロボット部分には日本の要素が多いような。つい先頃アシモの新型が発表されたばかりだしなあ。

 ドキュメンタリーらしい「ピラミッド5000年の嘘」は、すべてウソだったとか何とか。地球に関する考え方も変えなければならないとか、見るしかない感じ。ホントかなあ。

 「山本五十六」は戦争反対論者としての山本五十六を描くらしい。さすが「大和」の映画を作った東映らしく、海戦シーンは凄い迫力。

 はやぶさの映画は3本くらいあるようで、どれがどれやらわからなくなってきた。それも含め古い映画のような画質の予告が数本続いて、上下マスクの「マイウェイ」はカン・ジェギ監督の作品で、オダギリジョーとチャン・ドンゴンが共演する実話の映画化らしい。2人の男が日本、ソ連、ドイツの軍服を着て戦うことになるというドラマチックな物語。これは見たい。

 仮面ライダーは40周年だそうで、「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ」は子供に大人気なんだろう。デジタル技術の進歩でかなり凄いことになっているようだ。


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