Immortals


2010年11月12日(土)「インモータルズ -神々の戦い-」

IMMORTALS・2011・米・1時間50分

日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/ビスタ・サイズ( with Panavision、デジタル、HDCAM)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)
公式サイト
http://immortals.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)


かつて人類がこの世に誕生する前、天空では神々の一族とタイタン一族の戦いがあり、破れたタイタン属は地下に封じ込められた。やがて地上に人類が誕生、古代ギリシャの時代になり、過去の戦いの記憶は失われ、神々の存在さえ信じないものが現れ始めた。そんな時、イラクリオンの王ハイペリオン(ミッキー・ローク)が、伝説の究極の武器「エピロスの弓」を手に入れるため軍を動かして片っ端から神殿を襲い始める。一方、オラクル(巫女)のパイドラ(フリーダ・ピント)は、何者かが「エピロスの弓」でタイタン族を解き放つビジョンを見る。そして、ついにハイペリオンの軍勢がコルダス半島に迫っていた。その町に住むテセウス(ヘンリー・カヴィル)は農夫の生れだが、老師(ジョン・ハート)の教えを受け、戦士としての戦いの技を習得していた。しかし彼の母は町の人々から娼婦として差別され、町の人々がタルタロス山に逃れる際も、一番最後にされる。そこへハイペリオン軍が侵入、テセウスは捕らえられ、目の前で母を惨殺される。

74点

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 絵のように美しい映像と、感情を揺さぶる悲惨な物語、過激なまでのバイオレンス表現。そして、ある部分時代設定などは無視し、表現やストーリーを優先する感じは、決して悪くはなく、いかにも作り物、お話、ファンタジー、映画という作りは、巧妙にその世界の中に観客を引きずり込んでいく。つまり、リアルにリアルに作り込むことで観客を引き込む方法もあるが、逆にあえて作り物っぽさを出して引き込む方法もあるということだろう。人形劇だってうまく作られたものは泣かされることもあるし、ハラハラドキドキもする。生身の人間が名演技で泣き叫んでいても、何も伝わってこない時もある。たぶん中途半端が一番いけない。

 もともと話が神話なのだから、本当かどうかも確かではないし、誰も見たことがない。ならば自由に作って差し支えない。重要なのはストーリーで、そして何を語るかだと。だから、城門の上に出るはしごが鉄の現代風のものでも、鷹が留まるところが鉄骨のぼこぼこしたT字のバーでも、鎧が軽くて柔らかそうに見えても、いいのだ。その辺が気になるとこれは楽しめない。

 この神話における神々は、全能のゼウスであっても人間臭く、悩み、命令違反をし、そして戦いの末死ぬこともある。さらに、人間であっても、その崇高な行いによって死後神に列せられることもあると。

 拷問器具として金属の牛が出てくるが、実際に古くからあったそうで、そういえば最近見た気がするが「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」(The Three Musketeers・2011・独/仏ほか)だったろうか……。

 この作品が面白くなったのは、徹底して残忍な敵、絶対悪のようなハイペリオンが怖くて説得力があったおかげだろう。敵が怖くて強いから、主人公の頑張りが輝き、感情が伝わってきて思わず応援したくなる。

 その敵役ハイペリオンを演じたのはミッキー・ローク。最近はすっかり悪役として定着してきた感じ。「トヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(Year of the Dragon・1985・米)や「ナインハーフ」(Nine 1/2 Weeks・1986・米)のときはカッコイイ役だったのに。日本でボクシングの試合をやって、すっかり猫パンチが有名に。しかし後味の悪い映画に挙げられる「レスラー」(The Wretler・2008・米/仏)では各賞を受賞し、「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)でも憎たらしい悪役を好演。今では顔も悪役っぽくなってしまった。怪優の雰囲気さえ漂う。

 主演のテセウスを演じたのは、イギリス生れのヘンリー・カヴィル。史劇ものの「トリスタンとイゾルデ」(Tristan + Isolde・2006・独/チェコほか)や史劇風ファンタジー「スターダスト」(Stardust・2007・英/米/アイスランド)に出ていた人。史劇向きのキャラなんだろうか。

 巫女のパイドラを演じたのはフリーダ・ピント。「スラムドッグ$ミリオネア」(Slumdog Millionair・2008・英)で世界中に知られることになり、つい最近「猿の惑星:創世記」(Rise of the Planet of the Apes・2011・米)に出ていた。

 全能の神ゼウスの人間界での姿はジョン・ハート。ベテランの名優だ。不思議な感じが良く漂っていた。「ハリー・ポッターと賢者の石」(Harry Potter and the Sorcerer's Stone・2001・米/英)シリーズでもずっと活躍していたが、オジサン世代には傑作ホラーSF「エイリアン」(Alien・1979・米/英)で胸を食い破られる役が印象に残っている。すごかったなあ。この人もイギリス生れ。

 ゼウスの天上での姿はルーク・エヴァンス。「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」でアラミスを演じていた人。ほかに刑事アクション「ブリッツ」(Britz・2011・英)や残念な冒険ファンタジー「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)にも出ている。イギリス生れ。

 テセウスと一緒に戦うことになる兵士スタブロスはスティーヴン・ドーフ。吸血鬼アクション「ブレイド」(Blade・1998・米)やクライム・アクション「スティール」(Riders・2002・仏/英/加)が良かったが、最近はジョニー・デップの「パブリック・エネミーズ」(Public Enemies・2009・米)に出ていた。この人も悪と善の中間のようなポジションで、存在感がある。アメリカ生れ。

 脚本はチャーリー・パルラパニデスとヴラス・パルラパニデスのたぶん兄弟。弟のチャーリー・パルラパニデスはプロデューサーのスコット・ルーディンのアシスタントとして何本かの映画に関わり、本作で脚本家デビュー。兄のヴラスは監督もやっていて、いろいろな形で映画に関わりながら、本作は長編劇場映画の脚本としては2本目。

 監督はターセム・シン。インド生れで、夢の世界を描いた「ザ・セル」(The Cell・2000・米/独)や驚異の映像とともに衝撃のストーリーが心に残る「落下の王国」(The Fall・2006・米/印)で知られる人。CMやミュージック・ビデオの人で、とにかく絵作りが独特だ。そのためには多少のリアリティは犠牲にする。今後も期待の監督だ。

 そのターセム・シン監督のすべての作品で衣装デザインを担当しているのが、石岡瑛子。そのデザインは斬新で、妙に心に残る。フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキャラ」(Dracula・1992・米)でも衣装デザインを担当、アカデミー賞最優秀衣装デザイン賞を受賞している。

 公開2日目の、2D上映字幕版の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、30分前くらいに到着。10分前くらいに開場となって場内へ。史劇系のファンタジーということでか、ほんどが中高年。男女比は半々くらい。最終的には157席の7.5割くらいが埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「ドラゴン・タトゥーの女」は新予告に。オリジナル版とどこまで同じなのか、どこが違うのか。とにかくセリフなど一切なしで、ビートが効いた曲だけでの予告はカッコいい。

 俳優でもあるピーター・バーグ監督の新作、上下マスクの「バトルシップ」は、日米海軍合同演習で、突然正体不明の巨大な宇宙戦が現れて……というSFアクションらしい。「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)系のものすごくメカニカルなビジュアル。浅野忠信も出ているらしい。4/13公開とか。

 上下マスクの「タンタンの冒険」も新予告に。いずれにしても人間が不気味。なんでスピルバーグがロバート・ゼメキスみたいなことを……。


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