Moneyball


2010年11月13日(日)「マネーボール」

MONEYBALL・2011・米・2時間13分

日本語字幕:丸ゴシック体下、菊地浩司・監修:KOTA/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS

(米PG-13指定、日G指定)

公式サイト
http://www.moneyball.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

2001年10月15日、メジャーリーグ球団のオークランド・アスレチックスはアメリカン・リーグの優勝決定戦で、ちょっとしたエラーがきっかけとなって惜しくもニューヨーク・ヤンキースに破れる。ジェネラル・マネージャーのビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、オーナーに掛け合い、良い選手を獲得するためもう少し予算を出してくれと交渉する。しかしあっさりと断られ、トレードで強化を図ろうと、クリーブランド・インディアンズのGMのところへ交渉に行く。そこで出会ったのが補佐役として選手の分析をおこなっていたピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)。イェール大学で経済学を専攻した秀才で、選手たちに対して独自のデータ分析を行っていた。ビリーはすぐにピーターを引き抜き、自分のアシスタントにすると、多くの選手の分析をさせ、低予算でも勝てる新たな視点で選んだ有望選手を雇うことにする。しかし、スカウトマンや監督は強く抵抗するのだった。

73点

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 実話の映画化。すべてがすべてうまくいかないところがミソ。野球はあまり知らないが、試合の陰でGMや分析係、スカウトがどんな活動をしているのかがわかって非常に興味深かった。そして、プロとは、メジャー・リーグであっても、こうも簡単にトレードされ、チャンスも与えられるが、逆にあっさりクビにもされる厳しい世界なんだとわかった。

 そしてTVや新聞といったマスコミの報道のいい加減さ。「マネーボール理論」を散々バカにしながら、それがうまくいき出すと「監督の采配が素晴らしい」とむしろ逆らっていた監督を持ち上げ始める。見当違いも良い処。失礼な質問でもガンガンぶつけていくのが良いインタビューアーだとでも思っているようで、呆れるほどの厚顔無恥さ。

 そしてベテラン・スカウトマンたちの傲慢さ。ほとんどは勘で選手を掘り出してきて、適切な指導をせず選手をダメにしてしまう。「選手ではなく、勝利を買うべき」だと。求めているものが間違っていると。考え方が昔のままだと。

 長い歴史、伝統という高い壁。ある意味、既得権益を守ろうとすること、超保守的な姿勢ということかもしれない。日本ならなおさらなのではないだろうか。アメリカでさえこれだけの抵抗がある。

 しかし「マネーボール理論」でも優勝はできず、再び下位で低迷という現状。日本選手として松井秀喜が所属する。

 ビリー・ビーンを演じたブラッド・ピットは、自信の制作会社「プランB」を持ち、積極的に制作にもかかわっている。本作はプロデューサーも兼ねているが、「プランB」は関わっていない模様。この前に「ツリー・ヤブ・ライフ」(The Tree of Life・2011・米)に出演・制作しているが、それが「プランB」の作品。傑作「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)ではプロデューサーに専念、出演していないが「プランB」の作品。この映画のプロモーションのため、一家で来日。

 イェールの秀才ピーター・ブランドを演じたのはジョナ・ヒル。人気作の続編「ナイト・ミュージアム2」(Night at the Museum: Battle of the Smithsonian・2009・米/加)にクレジットなしで出ているらしい。見ていないが「40歳の童貞男」(The 40 Year Old Virgin・2005・米)系の作品に多く出ているようだ。

 1年契約しかもらえず不安を抱えたままチームを率いる、GMの言うことを聞かない監督アート・ハウを演じたのは、フィリップ・シーモア・ホフマン。痛快アクション「M:i:III」(Mission: Impossible III・2006・米/独/中)の悪役や「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(Charlie Wilson's War・2007・米)のCIAエージェントなど大作にも出演しつつ、アート系にも出演し「カポーティ」(Capote・2005・米)でアカデミー主演男優賞を受賞。さすがにうまい。

 原作はマイケル・ルイスの「マネー・ボール 奇跡のチームを作った男」(中山宥・ランダムハウス講談社)。ストーリーは本作が初めてというスタン・チャーヴィン。脚本はスティーヴン・ザイリアンとアーロン・ソーキンの2人。2人とも話題作がずらりと並ぶ。スティーヴン・ザイリアンは監督もしているが、デビュー作は「コードネームはファネルコン」(The Falcon and the Snowman・1985・英/米)で、他に「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)や「今そこにある危機」(Clear and Present Danger・1994・米)、「ハンニバル」(Hannibal・2001・英/米)など大作ばかり。アーロン・ソーキンはデビュー作が「ア・フュー・グッドメン」(A Few Good Men・1992・米)で、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」や「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Network・2010・米)を手掛け「ソーシャル・ネットワーク」で最優秀脚本賞を受賞している。

 監督はベネット・ミラー。数々の映画賞を受賞した「カポーティ」(Capote・2005・加/米)の監督。本作はそれに続く劇場長編映画の2作目。もはや巨匠のような手堅い演出というか、横綱相撲というか、余裕さえ感じさせる作り。とても2作目とは思えない。今後も期待だろう。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分前くらいに着いて、15分前くらいに開場。入場開始のアナウンスがハッキリしないのが残念。女性の声は通りやすいが、早口だとエコーもあるから聞き取りにくい。

 野球だからか、下は小学生くらいから、中高年まで幅広い。少年が少々と、20代くらいから中高年まで平均していた感じ。男女比は半々くらい。

 座ってすぐにケータイのチェック。ロビーでやれ。入口で電源は切れ。マナーが悪いんだから強制でやらせるしかないと思う。最終的に607席に4割くらいの入りだったろうか。地味な内容だし、こんなものかな。

 気になった予告編は……同じ様な日本映画の予告ばかりが続き……「アメイジング・スパイダーマン」も同じ予告。なんで蜘蛛に刺されるところから作り直すんだろう。意味がわからない。映画会社はサム・ライミの「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)シリーズが気に入ってなかったんだろうか。IMDbでも評価は7.4と高いのに。


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