The Adventures of Tintin: The Secret of the Unicorn


2010年12月4日(日)「タンタンの冒険★ユニコーン号の秘密★」

THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN・2011・米/ニュージーランド・1時間47分

日本語字幕:手書き風書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(デジタル、2.35/IMDbではIMAX=1.44、3D=1.85、その他=2.35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG指定)(3D上映、デジタル上映、日本語吹替版もあり)


公式サイト
http://tintin-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

いくつもの難事件を解決しているジャーナリストのタンタン(声:ジェイミー・ベル)は、ある日、青空市で17世紀の軍用帆船「ユニコーン号」の模型を見つけ、購入する。すると、その直後から男が入れ替わり現れて、言い値で良いから譲ってくれと言う。しかしきっぱりと断ったタンタンは、それを部屋に持ち帰り飾ると、図書館でユニコーン号について調べることにする。帰宅すると、部屋が荒らされ、模型が消え去っていた。ただ、模型の中に入っていたパイプが落ちていて、中にメモが入っている。そこへ模型を買おうとした男が現れ、何者かの銃撃を受け、目の前で殺される。そして自身も何者かにさらわれてしまう。

71点

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 IMDbでは7.8という信じられない高得点。ボクはノレなかった。107分が長い。退屈で途中気を失いそうになった。基本、作りは漫画というかアニメなのに、まるで実写のようなリアルさで、とてもアンバランス。だったら実写でやればいいのに。すごいスタント・シーンも3D-CGで作っていると思うと完動でも何でもなく、ただ当たり前で気持ちも盛り上がっていかない。アップになったらなったで、視線が定まっていない感じで、目力が全く無し。どこに焦点を合わせているのか、やぶにらみな感じが気になって、感情移入する手前で冷静になってしまって……。ギャグも滑りまくり。

 技術がスゴイのは良くわかった。3D-CGで海の水や、風になびく髪の1本1本、汚れのある鏡に映る姿など、スゴイとは思う。しかし、どこか足が地についていないような、動きが流れてしまうような、不自然な感じ。人間を使って実写で撮れ! 主人公以外みんな鼻が異常にでかいし、女性のキャラクターが極端に少ないのも気になる。ヒロイン不在のアドベンチャーなんて!

 スピルバーグ監督の集大成という感じはものすごくした。伝わってきた。「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(Raiders of the Lost Ark・1981・米)シリーズの要素も入っているし、「JAWS/ジョーズ」(Jaws・1975・米)や「未知との遭遇」(Close Encounters of the Third Kind・1977・米)、「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)の場面もある。まあ見たようなカットというかシーンを寄せ集めた印象も。オープニングのアニメ・タイトルは「めまい」(Vertigo・1958・米)などのヒッチコック映画のソール・バスのような雰囲気だし。

 たぶん実写だったら面白かったのでは。あるいは「塔の上のラプンツェル」(Tangled・2011・米)的な伝統的アニメの手法か、「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)的なカリカチュアライズされた3D-CGアニメの手法の方が、もっと心に伝わってきた気がする。どこかに漂うニセモノ的な、疑似人間っぽい雰囲気がじゃまをしているような……。たぶん実写を前提として作られたものと、CGアニメを前提として作られたものの違いということもあると思う。

 英語ではティンティンと言っているタンタンの声はジェイミー・ベル。イギリスのヒット・ダンス映画「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英/仏)の主人公を演じた人。とても面白かったリメイク「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)にも出ていたから、そのつながりで本作に出たのかも。第二次世界大戦時のビエルスキ・パルチザンを描いた「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)でビエルスキ兄弟の末っ子を演じ、ダニエル・クレイグと共演している。

 アル中のハドック船長の声はアンディー・サーキス。大ヒット作「ロード・オブ・ザ・リング」(Rhe Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)シリーズ以降、3D-CGの元の動きとなるパフォーマーとして有名になった気がする。同じピーター・ジャクソン監督の「キング・コング」でも出演しているほかにキング・コングの動きも担当している。ジェイミー・ベルとは第一次世界大戦奇譚ホラー「デス・フロント」(Deathwatch・2002・英/独)で共演している。つい最近「猿の惑星:創世紀(ジェネシス)」(Rise of the Planet of the Apes・2011・米)で猿のシーザーの元を演じている。

 悪の紳士、サッカリンの声はダニエル・クレイグ。世界的人気シリーズの「007/カジノロ・ワイヤル」(Casino Royale・2006・米/チェコほか)以降007を演じている人。つい最近「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米/印)でカウボーイを演じていたし、これからヒット作のリメイク「ドラゴン・タトゥーの女」(The Girl with the Dragon Tatoo・2011・米/スウェーデンほか)シリーズの公開が控えている。二枚目の紳士だが本作では全く違和感がなかった。実話の映画化スピルバーグの「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)でスピルバーグと仕事をしている。

 英語ではトンプソンといっている双子のような他人のデュポン(2人の名は発音は同じだがスペルが違う)の声はサイモン・ペッグ。傑作コメディ「ホット・ファズ 俺たちスーパー・ポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)の過激警察官を演じていた人。意外と声の出演も多いようで「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」(The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader・2010・米)ではリーピチープの声を当てている。近日公開の「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米)にも出演している。相棒のもう1人のデュポンの声は、「ホット・ファズ」でも相棒を演じたニック・フロスト。

 冒険に次ぐ冒険のジェットコースター脚本は、スティーヴン・モファット、エドガー・ライト、ジョー・コーニッシュの3人。スティーヴン・モファットはイギリスのTVコメディの脚本家のようで、映画はあまり書いていない模様。エドガー・ライトは監督でもあり、どちらも激面白かった「ホット・ファズ」や「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英/加)の脚本・監督をやっている。ジョー・コーニッシュはスティーヴン・モファット同様イギリスのTVコメディの脚本家。ということは、脚本家はほとんどイギリス人で固めたということか。

 原作はベルギーの人気コミック作家、エルジェの「タンタンの冒険旅行」。これは最初は1929年、こども新聞に掲載されたものだったとか。以降1976年まで続いている。原作がフランス語なのでティンティンとタンタンとか、ちがいがあるのだろう。デュポンがトンプソンになつたのはなぜだろう。

 監督・製作は巨匠、スティーヴン・スピルバーグ。最近はプロデューサー業が多いようで、本作は久々の監督作品。腕が鈍ったか。自在なカメラワークは健在だが、3D-CGだと当たり前のことなので、格別印象に残らない。この前の監督作が「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(・2008・)で、さらにその前に「宇宙戦争」(War of the Worlds・2005・米)もあって、どれも評判が良くなかったからなあ……。「ミュンヘン」と「ターミナル」(The Terminal・2004・米)は良かったけど。期待は戦争映画らしい「戦火の馬」(War Horse・2011・米)だ。

 ほかに製作では監督でもあるピーター・ジャクソン、キャサリーン・ケネディがいる。ピーター・ジャクソンは「ホビット・シリーズ」を撮影中らしいが、どうなることやら。本作を見ると不安になってくる。キャサリーン・ケネディはこれまたプロデューサーのフランク・マーシャルの妻で、スピルバーグ作品を中心に多くのヒット作を手掛けている。最近の作品は残念な「エアベンダー」(The Last Airbender・2010・米)と、イーストウッドの「ヒアアフター」(Hereafter・2010・米)……うむむ。

 公開4日目の2D字幕版初回(といっても1日1回のみの上映)、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておき、当日30分ほど前に到着。ほぼ10分前ほどに開場となって場内へ。客層は20代くらいから中高年まで、意外と幅広かった。男女比はほぼ半々。最終的には157席に5.5割ほどの入り。みな3D上映で見るのだろうか。ボクは700円の価値があるとは思えない。200〜300円なら良いけど。400円は微妙。

 気になった予告編は……まあ、とにかくタイトルが最後にちょっとだけしか出ないものが多い。まったく頭に残らない。だから覚えられない。どうやって前売り券を買えばいいんだ。作る方の自己満足なんじゃないかなあ。

 上下マスクの3D-CGアニメ「長ぐつをはいたネコ」は日本語吹替版の新予告に。また3D上映らしいが、どうなんだろう。ボクはあんまり好きじゃない「シュレック」(Shrek・2001・米)のにおいがプンプンするけど。

 スクリーンが左右に広がってから、浅野忠信が出演しているハリウッドSF大作らしい「バトルシップ」の予告。内容は良くわからなかったが、日本の自衛隊とアメリカ軍の合同演習中に、巨大なエイリアンのバトルシップが現れて……という話らしい。しかし4月13日公開とか。まだだいぶ先。


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