My Way


2012年1月14日(土)「マイウェイ 12,000キロの真実」

MY WAY・2011・韓・2時間25分

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(デジタル、RED One)/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://myway-movie.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1928年、日本占領下の韓国・京城に1人の少年、長谷川辰雄が東京からやってくる。かけっこが得意で東京で一番だという。その日本人将校宅の韓国人の使用人の息子、キム・ジュンシクもかけっこが得意だということで競いあい、お互いにライバルとして成長する。しかし、2人が高校生になった時、爆弾テロによって陸軍の高官だった長谷川の祖父(夏八木勲)が爆殺され、ジュンシクの父が犯人に疑われ激しい拷問の結果、障害を負ってしまう。おじいちゃん子の辰雄はジュンシクと絶交し、韓国人に激しい恨みを抱き冷酷非情な軍人へと成長する。
1938年、韓国で全日本のオリンピック代表を決める「朝鮮マラソン選手権」が開催され、辰雄(オダギリジョー)とジュンシク(チャン・ドンゴン)も出場。2人はトップ争いを演じるもジュンシクが振り切って1位になる。しかし日本軍の上層部はジュンシクに進路妨害があったとして辰雄を優勝と発表し、暴動が起きる。ジュンシクを含む暴動の首謀者は裁判の結果、日本軍の軍役に付くことを命じられる。
1939年、ジュンシクらはノモンハンに展開する部隊で、ソ連軍の猛攻に耐えていた。しかし司令官の高倉大佐(鶴見辰吾)が一時退却を許したことを重く見た軍上層部は、高倉大佐を二等兵に降格の上、切腹を命じる。代わりに赴任してきたのが、大佐に出世した辰男だった。

75点

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 韓国映画らしい、残酷なまでのリアリティ。腕が飛び、足が飛び、血が飛び散り、全身が四散する。そして、強烈な感情の爆発。「ブラザーフッド」(Brotherhood・2004・韓)のようでもあり、「戦場のレクイエム」(集結號・2007・中)のようでもあった。そしてラストの感動。あやうく涙がこぼれそうになった。

 ただ、やはり日本軍人は完全に悪人で、韓国人はすべて良い人という人物設定は、韓国映画としては当たり前なのだろうが、ステレオタイプで浅い印象。客観的に見ると物語に深みが欠けると思う。ああいう状況でも、日本軍人にも良いヤツはいたし、韓国人にも悪いヤツがいたというほうが自然だしリアルというものだろう。かろうじて主人公キム・ジュンシクの友人ジュンデと、日本軍人で後退を許した高倉大佐くらい。しかしほんのちょっとでいなくなる。もう少し人物設計に深みがあれば……。これは勧善懲悪な冒険談ではなく、人間ドラマなんだから。どんな人間だって、良い面もあれば悪い面もあるはず。

 ほとんど全編日本語で、それに韓国語、中国語、ロシア語、ドイツ語、英語が入ってくる。しかも、スケールの大きな戦闘シーンはハリウッド映画のようで、臨場感もたっぷり。戦車戦まである。CGもかなり使われているようだが、爆破で破片がやたらに飛ぶのが迫力があって痛そう。人だけが吹っ飛ぶのではなく、大砲も、トラックも、マシンガンも、なんでも吹っ飛ぶ。だから怖い。西部戦線は「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2001・米/独ほか)のようで、ノルマンディは「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のよう。全体の構成は「プライベート・ライアン」だ。戦後の1人の人物から始まって戦中に話が行き、戦後で終わる。そしてそれが誰かわかる。

 なんでも、公式サイトによると、アメリカ公文書館に保存されていた1枚の写真がヒントになって本作ができたらしい。第二次世界大戦時、ノルマンディ上陸作戦後、アメリカ軍に捕らえられたドイツ軍捕虜の中に1人の東洋人がいたというのだ。日本人なのか、韓国人なのか、中国人なのかわからない。とにかく彼は日本、ソ連、ドイツの軍服を着て戦い、ノルマンディにたどりついたという。これをカン・ジェギュが想像力を働かせ、壮大な物語として書き上げた。

 ラスト、マラソンの結果がわからないのが良い。1位になったのかどうか。そんなのは関係ないことなのだ。

 クレジットの順番で行くと、最初に名前が出るのはオダギリジョー。徹底した冷徹な軍人をリアルに演じ、いい味を出している。ボクが最後に劇場で見たのは「蟲師」(2006・日)だったか。その後「空気人形」(2009・日)などマイナー系の作品に出ていて、「悲夢(ヒム)」(Sad Dream・2008・韓/日)あたりから韓国映画や中国映画で主演している。本作もその1つ。今後の活躍に期待したい。使っていたのは、後期型の十四年式拳銃。ただ、これが撃つ時になるとガバメントになっていたような……。ソ連軍ではモシン・ナガンM1890/30ライフル、ノルマンディではMG42マシンガンをぶっ放している。

 2番目のクレジットだったのは、とにかく徹底して良い人役のチャン・ドンゴン。最近公開作が小さな劇場になってきたので、「タイフーンTYHOON」(Tyhoon・2005・韓)くらいまでしか劇場で見ていない。まあ二枚目で、うまい人で、まさに映画スターという感じ。「友へ チング」(Chingoo・2001・韓)や「ブラザーフッド」も良かった。アクションもガンガン行けるところが良い。使っていた銃はたぶん三八式歩兵銃。やはりソ連軍ではモシン・ナガン、ノルマンディではMG42を使っている。

 母も自分も日本軍に陵辱され、復讐の鬼となった中国人の女スナイパーはファン・ビンビン。ジャッキー・チェンの「新宿シンシデント」(新宿事件・2009・香)やアンディ・ラウの「墨攻」(A Battle of Wits・2006・中/日ほか)に出ていた人。最近ではドニー・イェンの「孫文の義士団」(十月圍城・2010・中/香)にも出ていたらしいが、劇場が小さかったので見ていない。使っていた銃はスコープ付きの三八式だったと思うがメモをし忘れた。モシン?

 公式サイトの情報が少ないので断定はできないのだが、ジュンシクの友人ジョンデを演じたのはたぶんキム・イングォン。もしこの人なら、つい最近、残念なパニック映画「TSUNAMI-ツナミ-」(Haeundae・2009・韓)に出ていた。抑留されてから、ソ連ではトカレフを使う。

 徹底した悪で、最後には味方であるはずの長谷川にまで、もう上官じゃないと絡む下士官を演じたのは山本太郎。ちんぴらっぽい憎たらしさが実にうまい。つい最近、続編が公開された1作目の「カイジ 人生逆転ゲーム」(2009・日)でも嫌らしい役を好演。ボク的には「MOON CHILD」(2003・日)が良かったかな。

 製作・監督・脚本はカン・ジェギュ。日本でも大ヒットした「ニキータ」系女性アクション「シュリ」(Swiri・1999・韓)や、戦争ドラマ「ブラザーフッド」の監督・脚本を担当した人。まあ大変な才能を持った人だ。感情を揺さぶる手腕は半端ではない。だからこそ脚本も手掛けているのだろう。製作も兼ねれば、さらに思い通りの映画が撮れることになる。あまり多作な人ではないが、次作も楽しみだ。

 ほかに登場する銃は、日本軍の保弾板式の九二式重機関銃、ソ連軍のDP軽機関銃、同・防盾・車輪付きのマキシム重機関銃、ドイツ軍のモーゼルKar98kライフル、同・ワルサーP38など。航空機はソ連軍のI-16だろうか(もっとスマートだった気がするが)、そしてアメリカ軍のP51ムスタング、同B17爆撃機なども出てきたが、どうも3D-CGっぽかった。戦車はノモンハンで使われたというT26軽戦車を、ドイツとの戦闘ではIII号戦車っぽいものが、「プライベート・ライアン」を手掛けたチームに依頼して再現されたらしい。確かに雰囲気はそっくりで驚かされる。金がかかっている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で金曜に確保。25分前くらいに着いたら、あまり混んでいなかった。意外に思っていると、次の回が舞台あいさつ付きらしい。なるほど。10分前くらいに開場になって、エスカレーターで上の階へ。観客層としては、ほぼ高齢者。第二次世界大戦物だからなあ。この時点で30人くらいのうち、女性は5人ほど。最終的には433席に60人くらいいただろうか。舞台あいさつの前で良かった。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……なんと「愛と誠」が実写映画化されるんだと。監督・三池崇史、主演は妻夫木聡と武井咲。なぜ、いま? 6/16公開。

 NHKドラマの映画化「外事警察」はダークな雰囲気ながらアクション満載ふう。面白そう。任務遂行のためなら手段を選ばない、と。こういうドラマをNHKが作ったとは。6/2公開。

 水谷豊の「HOME愛しの座敷わらし」は家族ドラマらしいが、座敷わらしが出るのか。ファンタジーなら見たいけど。

 チャン・グンソクの「きみはペット」はファンが殺到するんだろうなあ。ボクらオジサンには予告でさえ恥ずかしいくらい。


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