Don't Be Afraid of the Dark


2012年1月21日(土)「ダーク・フェアリー」

DON'T BE AFRAID OF THE DARK・2011・米/豪/メキシコ・1時間40分

日本語字幕:丸ゴシック体下、佐藤恵子/ビスタ・サイズ(1.85、Arricam、Moviecam)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.darkfairy.jp/
(全国の劇場リストもあり)

ロードアイランドの古いお屋敷を購入しリフォームした建築家の父アレックス・ハースト(ガイ・ピアース)のもとに、ロスの別れた妻のところから小学生の娘サリー(ベイリー・マディソン)がやって来る。しかし父の隣にはインテリア・デザイナーで恋人のキム(ケイティ・ホームズ)がいた。情緒不安定症のサリーはなじめず、家を出て広い庭で遊んでいると、地下室を発見する。代々御屋敷に勤めているというハリス(ジャック・トンプソン)は危険だから近づくなというが、アレックスは壁を破りドアを見つけ出す。そこはかつての家主ブラックウッド(ゲイリー・マクドナルド)のアトリエで、不気味な絵と、ボルトで封じられた暖炉の灰溜めがあり、サリーにだけ「あけてくれ」という不気味な声が聞こえてくる。

60点

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 時間の無駄。腹が立った。怖くもないし、音で脅すだけ。何回か眠くて気を失ってしまった。新宿のこの環境の良い劇場で見たら、たいていのものは許せると思っていたのだが、そうじゃないものもあるんだ。そういう意味で勉強になった。IMDbで5.7点だが、そこまで評価するものがあったかどうか。

 まず、とにかく脚本がひどい。おそらくこれまでにハリウッドのみならず、世界中でゴマンと書かれてきたホラーの手あかまみれになったパターンだらけの、耳タコ物語。娘の言うことを信じようとしない父、その娘に取り入ろうとするが娘の言うことは信じない女、オーナーにちゃんと説明しない使用人……登場人物はバカなヤツばかりで、みな自ら危険な方に行って怖い思いをするし、事件を複雑なものにして行く。普通なら、そんなことはしないだろうと誰もが思うことを堂々とやる。当然起こるべき惨劇が起こる。主人公とも言うべき幼い少女は、キャラクター設定がかわいくなく、まったく感情移入できないから、かわいそうに思えない。

 こんなものに良く有名俳優が出たなあ。きっと、「これはただのホラーじゃないんだ。家族の絆、親子の愛を描いたものなんだ」とかなんとか言ったのだろう。まったくそんなことはない。全然納得できない展開と、バカげた結末。本来なら、クライマックスで語られる恋人が洞窟の中に置き去りにさられたところから、本格的な物語が始まるべきところ、愛していた女性のはずなのに、男はあっさりと諦めてしまう。血を分けた娘1人が助かればそれで良いのか。助けに行けよ! クレーン車でも、ブルドーザーでも、現代の重機をなんでも投入して、穴を掘り広げて入って行けよ。そして、あらゆる武器を使って、ゴブリンだかガーゴイルズだかを皆殺し、彼女を助け出せよ。

 最悪なのは、何も解決せず、そのまま屋敷を売りに出してしまうこと。せめて焼き払うとかしろよ。でなければ、この屋敷を次に買った人が同じ様な目に遭うだろう。これは犯罪ではないだろうか。「未必の故意」というやつだ。とても許せない。

 しかも武器の1つがポラロイドって。いまどきデジカメじゃね?

 実はTVドラマの「地下室の悪魔」(1973・米)のリメイクなんだとか。オリジナルは74分。日本でも何度か放送されているらしい。最初は目新しかったのかも知れないが……。

 少女サリーを演じたのはベイリー・マディソン。本作ではあまりかわいいキャラではないため、かなり損をしていると思う。1999年のアメリカ生れというから、13歳。2006年(7歳)くらいから映画に出始めたらしい。有名どころでは感動ファンタジー「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米)で、主人公の幼い妹を演じている。戦争帰還兵と家族を描いた「マイ・ブラザー」(Brothers・2009・米)にも出ているようだが、見ていない。TVにも良く出ていて、公開を控えた映画は4本もある。注目の子役だ。

 頼りにならない父親役はガイ・ピアース。最近あまり大きな役がなかった感じがする。「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)や「ラビナス」(Ravenous・1999・チェコ/英/米)、「メメント」(Memento・2000・米)は衝撃的だった。新作は10本くらいあると言うから心配はないどころか、とても人気で大忙しといったところ。わからないものだ。

 少女を救うママ的な役割の女性キム役はケイティ・ホームズ。まあB級映画の女王といったイメージが強い。一般には女優よりトム・クルーズの奥さんとして知られているのでは。本作でもB級的な「なぜ?」という行動パターンを取るし、キャラとしても掘り下げの浅い設定。メジャーな作品では「バットマンビギンズ」(Batman Begins・2005・米/英)と「サンキュー・スモーキング」(Thank You for Smoking・2006・米)くらいだろうか。

 残念な脚本はプロデューサーでもあるギレルモ・デル・トロ。どうも監督より大きく広告に出ていたこの名前にだまされたような感じ。異世界に紛れ込んだかのような「クロノス」(Cronos・1993・メキシコ)や恐ろしいホラー「デビルズ・バックボーン」(El espinazo del diablo・2001・西/メキシコ)、悲しく残酷な戦争ファンタジー「パンズ・ラビリンス」(El laberinto del fauno・2006・西/メキシコ)などは素晴らしかったけど……最近は製作が多いようで、SFホラー「スプライス」(Splice・2009・加/仏/米)も怖いことは怖いが設定がどうもという作品で、「ロスト・アイズ」(Los ojos de Julia・2010・西)は小劇場公開で見ていない……。もう自分では撮らないのだろうか。

 監督はトロイ・ニクシー。カナダ生れの人で、もとはコミック誌のイラストレーターなんだとか。長編劇場映画は初めてで、この前に短編を撮っており、それがトロント国際映画祭で上映され、本作へとつながるらしい。うーん、他の脚本のものも見てみないとなんとも言えない。その前に次があるのかどうか。

 公開初日の初回(といっても14:30から)、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。12〜13分前に開場になって場内へ。観客層は20代くらいの若い人が多く、中高年は2割くらいか。男女比は半々くらいだった。関係者らしい人たちが5〜6人、前方に立っていて、隣にいた女の子が「あれ立ち見? 気になる」と言っていた。まさに。2人もいれば十分でしょ。

 最終的に127席はほぼ満席。これは驚いた。なぜ? 特に有名俳優も出ていないし、監督もほぼ新人だし……ギレルモ・デル・トロだけでこんなに若い人たちにウケるとも思えないしなあ。だれか有名人がほめたのだろうか。

 途中左の方で1回、右の方で1回、携帯のバイブレーションがヴィーンと唸りをあげた。一気にシラケル。現実に戻されてしまった感じ。場内ではマナー・モードにするだけじゃなく電源を切っておけよ。劇場は場内に携帯の電波が入らないようにシールドできないものだろうか。入口で携帯の電源を切るように言うとか。メールのチェックとか、ケータイのゲームなんてロビーでやれ。

 気になった予告編は……上下マスクの「スーパー・チューズデー」は、アメリカの大統領選挙の裏側を描くものらしい。どうかと思っていたが、予告をみたら面白そうな感じ。主演はジョージ・クルーニーで、3/31公開。

 「アーティスト」はミニ・シアター系の公開でしかも今どきモノクロ。アート系かと思っていたら、予告を見るととても面白そうな感じ。とても見たい気がした。サイレントからトーキーになり、新人女優とベテラン男優の立場が入れ替わってしまうと。4/7公開。

 上下マスクの「ブレイキング・ドーン」は、「トワイライト・サーガ」の最新作で、しかもパート1だとか。まだやってたんだ。もう2でお腹いっぱいなんだけど。

 クリント・イーストウッド監督最新作、上下マスクの「J・エドガー」は、FBIを作り、歴代の大統領に恐れられたジョン・エドガー・フーバーの生涯を描くものらしい。レオナルド・ディカプリオが20代から77歳までを演じるのだとか。1/28公開。


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