Kirin no Tsubasa


2012年1月29日(日)「麒麟の翼 劇場版・新参者」

2012・TBS/東宝/レプロエンタテインメント/毎日放送/電通/講談社/中部日本放送/RKB毎日放送/茂田オフィス/北海道放送/TBSラジオ&コミュニケーションズ・2時間09分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル

(日本語字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.shinzanmono-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

東京・日本橋の橋の上、中年の男・青柳武明(中井貴一)がナイフを腹に突き刺した状態で、翼のある麒麟像近くまで歩いてきて死亡する。そして間もなく、現場付近で発見された容疑者・八島冬樹(三浦貴大)が逃走を図り交通事故で瀕死の重傷を負う。捜査本部は八島が青柳を金品目的で殺害したものとして裏付け捜査を開始するが、所轄の刑事・加賀恭一郎(阿部 寛)は殺害現場から7〜8分も離れた場所まで歩いて行き、誰にも助けを求めなかったことに疑問を感じ、パートナーの従兄弟の本庁刑事・松宮脩平(溝端淳平)とともに所持品から独自の捜査を始める。すると意外な事実が判明するが……

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 ちょっと来た。あやうく涙が流れるところ。感動した。複雑なピースが最後にピタリとはまりスッキリ解決。その時、悲しい真実が暴かれ、心揺さぶるメーセージが明らかになる。良くできたストーリー。そして、奇をてらわない地道な積み重ねて行くような演出。ちょっと笑いも入れつつ、感動の物語を紡いで行く。素晴らしい。しかも、語られることが、今良くあるような事柄にリンクしていて、身につまされるというか、実に身近なものとして感じられる。リアリティのある話。

 警察の思い込み捜査もちょっと触れつつ、マスコミ報道により差別や解雇がなされ、家族が崩壊し、個人の人生が破壊されるさま、新たな確執が起こるさま……つまり報道被害か、そんなものが起こるようすが、怖い。人事ではない。巻き込まれでも、濡れ衣でも、自分が当事者・関係者になったら確実に身に降りかかるであろう悲劇だ。

 そして、描かれている親子関係の断絶。それを修復しようと懸命になる父の姿、父の思い、子に対する愛……それを知った時の子供の衝撃……これらが実に良く伝わってくる。ちっともお説教臭くない。

 とにかく素晴らしいのは、お父さん青柳武明を演じた中井貴一。どうにか息子との関係を修復しようとする姿や、それが空回りする感じ、いろいろ背負って麒麟像の前で事切れるその姿とか、感動させてくれる。この前の、ちょっと残念な「ワイルド7」(2011・日)でも1人良かったし、奇談的な「プリンセストヨトミ」(2011・日)や、笑わせてくれた「ステキな金縛り」(2010・日)も良かった。注目したのはTVの山田太一ドラマ「ふぞろいの林檎たち」(1983・TBS系)だった。

 阿部寛は、別に悪くないのだけれど、美形でカッコいいだけにどちらかといえばコメディの方が向いている気がする。TVの「トリック」(2000〜・テレビ朝日系)シリーズなんて抜群。映画では「大帝の剣」(2006・日)も良かった。

 若手では溝端淳平がいい感じ。等身大で変に気張った感じもないし、演技しているっていう感じもなくナチュラル。ジュノン・スーパーボーイだけに美形だし。そしてお節介な看護師役の田中麗奈も存在感があった。CMの「なっちゃん」がねえ。「第一生命」のナイトなんかはどうかと思ったけれど、どこかで吹っ切れたのか、素晴らしい演技派に。

 また、中学生というか高校生の4人組がまたリアル。青柳の息子役の松坂桃李、同級生黒沢役の聖也、同級生杉野役の山崎賢人、1年下の吉永役の菅田将暉、みんないい。

 原作は人気作家、東野圭吾の加賀恭一郎シリーズの最新作「麒麟の翼」。発売後2カ月で30万部を売り上げたというだけあって、実に良くできた感動的ドラマ。すばらしい。それにしても、この人の原作小説はTV・映画で引っ張りだこという雰囲気。映画に使われたのは広末涼子の「秘密」(1999・日)からのようだが、ボクが最初に見たのは血まみれの「レイクサイドマーダーケース」(2004・日)だった。映画の脚本はTVの「相棒」シリーズをずっと手掛けている櫻井武晴。

 監督は土井裕泰。公式サイトによるとTBSの社員なんだとか。どうりでTVをたくさん手掛けているわけだ。劇場長編映画では本作の前に「ハナミズキ」(2010・日)を手掛けているようだが、ボクの守備範囲の映画ではないので見ていない。「涙そうそう」(2006・日)も「いま、会いにゆきます」(2004・日)も見ていない。でも本作はいい感じなので、もっとミステリーを手掛けてほしい。それも映画らしいもっと派手な感じのものを。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに着くと10分前くらいに開場。20代くらいから中高年まで幅広いものの、メインは20代くらいの若い人たち。中高年は3割くらいか。TVの映画化だとこういうパターンが多い。男女比は3.5対6.5くらいで女性の方が多かった。最終的には287席、ほぼすべてが埋まった。まあ、とにかく遅れてくるヤツが多い。

 エキセントリックな髪形の実写ドラマ「逆転裁判」はゲームの映画化。あそこまでゲームの登場人物の髪形に似せる必要があったのだろうか。アニメ的な世界ではOKでも、実写ドラマではまじめなのかふざけているのかわからない。まさか子供向け?

 ジャンボ・ジェットが海に不時着するらしいシリーズ最新作は「ブレイブハーツ海猿」。もはや安定した面白さ。ある程度は期待して良さそう。夏公開らしい。

 またまたTVの劇場版らしい「ホタルノヒカリ」は漫画が原作で、日本テレビ系。TVを見ていなかったので内容はよくわからないが6/9公開とか。綾瀬はるかがちょっとオードリー・ヘップバーンのような雰囲気。

 漫画原作の「宇宙兄弟」は2人の兄弟、小栗旬と岡田将生が宇宙をめざす話らしい。なんだか、ちょっと「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)のような雰囲気もあるような。5/5公開。

 上下マスクの「SPEC天」は、どうやらシリアスと笑いが共存する堤幸彦ワールド全開の超能力ドラマらしい。やっぱりこれもTVからで、元はTBS。4/7公開。ちょっと面白そう。USPなどを使っている模様。

 上下マスクでなかなかタイトルがでなくてイライラした「GIRL」は、よく内容がわからなかったが、日本版「セックス・アンド・ザ・シティ」(Sex and the City・2008・米)のような雰囲気。5/26公開。


1つ前へ一覧へ次へ