The Hunter


2012年2月4日(土)「ハンター」

THE HUNTER・2012・豪・1時間40分

日本語字幕:丸ゴシック体下、伊東武司/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts

(日G指定)

公式サイト
http://www.hunter-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

傭兵で優れたハンターでもあるマーティン・デヴィッド(ウィレム・デフォー)は、パリで軍事バイオ技術企業レッドリーフから、絶滅したと言われるタスマニアタイガーを見つけ、そのDNAサンプルを持ち帰るよう依頼される。助手を付けると言う申し出を断り、単身タスマニアに降り立ったマーティンは車で、予約した人里離れた山奥のアームストロング家にたどり着くと、電気も点かずドアは開け放たれたままで人気がない。やがて幼い姉と弟が現れ、ママは寝たままで、パパは山へ行ったまま帰らないという。大学から調査に来たと名乗ったマーティンは、荒れ果てた家の状態から諦めて街へ降り、ホテルを探そうとするが、街には林業に携わる者が多く、自然保護の名目でやって来る大学の連中は嫌われており、誰も部屋を貸してくれない。しかたなく、洗剤やガソリンなどを買ってアームストロング家にもどると、レッドリーフからガイドを命じられたという現地の男、ジャック・ミンディ(サム・ニール)が現れる。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 ハリウッド・スターを使った豪華なハリウッド・テイストのオーストラリア映画。これまでにも「オーストラリア」(Australia・2008・豪)などもあったわけだが、本作は若干スケールが小さい感も。ハッピー・エンドではないが後味は悪くなく、感動的。オーストラリア、タスマニアの大自然の絶景も見もの。この辺は映画らしく、素晴らしい絵がとらえられている。

 ただ、ドラマの展開は凡庸でありがち。西部劇の「シェーン」(Shane・1953・米)のようでもある。荒んだ心を持った男が、大自然の中で人間らしい心を蘇らせて、コミュニケーションを取っていく。しまいには親子、夫婦のような情が芽生える。だから展開は、やや意外な部分はあるものの、ほぼ読める。

 気になるのは展開のもたつきだ。ほとんど大した事件も起きない部分、ドラマ上もそれほど重要でないと思われるシーンが比率として多い。また、男のクールな面、プロっぽい面がほとんど描かれていないのも?だ。初めから良い人だったのではこの仕事でタスマニアへ来たことの意味が無くなってしまう。

 自然保護団体と林業を生業とする男たちの対決も、せっかく取り込んでいながら中途半端。そこからもっと事件に発展しても良さそうなものなのに、何も起きない。本当のリアルはこんなものかもしれないが、映画なんだから、そこは工夫が欲しかった。そして、3D-CGとおぼしきタスマニアタイガーにももっとリアリティがほしかった。

 主人公のマーティン・デヴィッドはウィレム・デフォー。ミュージカルのようなアクション「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)の悪党役から注目され、オリバー・ストーンのベトナム戦争映画「プラトーン」(Platoon・1986・英/米)の悪役を経て、「最後の誘惑」(The Last Temptation of Christ・1988・米/加)ではイエス・キリストを演じ、傑作アクション「処刑人」(The Boondock Saints・2000・加/米)ではエキセントリックな女装捜査官、クラシック・ホラーの真実を描く「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(Shadow of the Vampire・2000・英/米/ルクセンブルク)のヴァンパイアなど、カメレオン俳優さながらの化け具合。使っていたライフルは非常に風変わりなタイプで、ひょっとしたら映画オリジナルのプロップ? ちょっと雰囲気はRPAレンジマスターに似ていたが……。調べてみたところ、どうもドイツのスナイパー・ライフル、Keppeler(ケッペラー)Model KSらしい。そしてiPodとスパイダルコ・ナイフ。

 宿となるアームストロング家の未亡人ルーシーはフランシス・オコナー。スピルバーグの「A.I.」(A.I.・2001・米)で哀しい母親を演じていた美女。あまり活躍していない感じだが、もっとハリウッド映画に出て欲しい。

 怪しい男、ジャック・ミンディはサム・ニール。山に住んでいるくせに海が好きらしく、着ているものはヘリー・ハンセン。残念なホラー「オーメン/最後の闘争」(The Final Conflict・1981・英/米)あたりから注目され、スピルバーグのハリウッド大作「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)で優しげなグラント博士、SF宇宙ホラー「イベント・ホライゾン」(Event Horizon・1997・英/米)では狂気の博士を、ロビン・ウイリアムズのSF感動作「アンドリューNDR114」(Bicentennial Man・1999・)では優しいお父さんを演じている。使っていたライフルは普通のボルト・アクションだったから、レミントンのM700か。

 原作はオーストラリア生れのジュリア・リーの同名デビュー小説。官能映画「スリーピングビューティー/禁断の悦び」(Sleeping Beauty・2011・豪)の脚本と監督も担当している。脚本はアリス・アディソン。オーストラリアでTVの脚本を手掛けてきた人で、どうやら映画は本作が初めて。今後どうか。

 監督はダニエル・ネットハイム。オーストラリア生れで、写真家からイラストレーターを経てオーストラリアのTVの演出家に。そして本作が劇場長編映画デビュー作。なかなか良い感じなので、問題は次作。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、30分前くらいに着いたらすでに開場済み。20人前後が座っていただろうか。限定100人分、初回プレゼントがあり、タスマニア産のはちみつをもらった。ラッキー♪ ただ1Fのエレベーター前では開場しているのかどうかわからないので、そこを改善して欲しい。

 客層は中高年で、男女比はほぼ半々くらい。最終的には、男性がちょっと増えて男女比6対4くらいに、そして年齢層も高寄りに。469席の3.5割くらいが埋まった。

 スクリーンはシネスコで開いていて、ビスタになってCM・予告ヘ。気になった予告は……瑛太と松山ケンイチが共演する「僕達急行A列車で行こう」は粒状感が目立って、画質が良くない。まるで古い映画のよう。どうしたのだろう。まさか16mmで撮ったわけじゃ……。

 「はやぶさ 遥かなる帰還」は東映60周年の一環の作品だそうで、2/11公開。ただ、パンがどうしてあんなにブレブレになるんだろう。不思議。

 アニメ「ももへの手紙」は新予告。てっきり美少女恋愛ものと思っていたら、意外な妖怪ものという展開。監督は「人狼JIN-ROH」(2000・日)の沖浦啓之。妖怪がトトロみたいで、ちょっと宮崎アニメっぽい気もするが、期待できそう。4/21公開。

 スクリーンが少し上下に、そして左右に広く広がってシネスコ・サイズになってから、「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」は新予告に。スゴイ迫力。完全にアクション作品。ますます見たくなる。3/10公開。

 レイフ・ファインズとジェラルド・バトラーが共演する「英雄の証明」は、レイフ・ファインズが監督するシェイクスピア劇を現代に置き換えた物語。かなりアクションもあるようだ。期待したい。


1つ前へ一覧へ次へ