Tower Heist


2012年2月5日(日)「ペントハウス」

TOWERE HEIST・2011・米・1時間44分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-16指定、日G指定)

公式サイト
http://penthouse-movie.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ニューヨーク、マンハッタンに立つ65階建ての「ザ・タワー」というビルは、多くのセレブが住む超高級マンション。最大の売りは、ホテル並みのサービスを提供する優秀なスタッフたち。彼らをまとめるマネージャーのジョシュ・コヴァックス(ベン・スティラー)は、次々と問題を解決し、入居者のわがままな要求にも応え、スタッフと入居者の両方から信頼されている。そんなある日、ペントハウスの住人、アーサー・ショウ(アラン・アルダ)が証券詐欺の容疑でFBIに逮捕される。なんとジョシュはスタッフ全員の年金をショウに預けていたのだった。それも消えてしまったと聞かされたジョシュは、ショウが保釈されたと聞くや、フロント係のチャーリー(ケイシー・アフレック)、エレベーター係のエンリケ(マイケル・ペーニャ)とともにショウのペントハウスに乗り込み、部屋に展示してあったかつてスティーヴ・マックィーンの愛車だったというフェラーリのすべてのウィンドーを叩き割る。これにより、3人はクビになってしまう。しかしFBI捜査官のクレア(ティア・レオーニ)から、3カ月ほど前に銀行から引き出された2,000万ドルの行方がわからないという話を聞いたジョシュは、ペントハウス内に隠されているに違いないとにらみ、それを奪うことを計画する。

80点

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 笑った。しかも痛快。久しぶりに何も考えず、ただ楽しむことができた。たぶんデート・ムービーにピッタリ。最近嫌なことが続いてという人にもオススメ。シネスコなので、できれば劇場で見たい。

 ただ、ちょっと身につまされるところもあって、こころの底から楽しめない部分もあったが、それは個人的な問題。それがないなら、とにかく楽しいピカレスク・ムービー。といっても出てくるのはほとんど良い人ばかりで、悪人は2人だけ。そして1番悪いヤツからごっそりお宝をいただく話。思わず応援したくなる。その辺のさじ加減もうまい。

 最近こういう映画は少なかったのではないだろうか。似ているとすれば「オーシャンズ11」(Ocean's Eleven・2001・米)か。ベン・スティラーなので、ドタバタを想像してしまうが、決してそうではなくて、コメディなのだが大げさなところはできるだけ抑えて、「七人の侍」(1954・日)のように、メンバー選び(かなり期待外れ結果になるのだが、それが笑わせる)から始まって、計画の立案、実行……といくわけだが、通常と違うのは、立案の最中からどんどん想定外のことが起こって、まったく成功しそうもなく思えること。実行の日も早められることになり、当日でさえも思いも掛けないことが起こる。それを最後にすべてまとめて見せる。チェスをモチーフにした展開。スゴイ。ラスト、出演者が「ハレルヤ!」と叫ぶが、まさに観客まで一緒になって叫びたいくらい。

 うまく、良いキャラと悪いキャラを、リアルにいそうな感じに描いているところも良い。そこが成功の秘訣の1つのポイントだろう。ステレオタイプの良い人や、ステレオタイプの悪役ではない。しかし、明らかに良い人とわかり、明らかに悪い人とわかる。完全にリアルにすれば、人には良い面も悪い面もあるのが普通で、完全に憎みきれなかったりもする。すると、かわいそうに見えてきて、芯がブレる。

 ジョシュ・コヴァックスを演じたのはベン・スティラー。この人はコメディアン出身で、脚本も書くし、演技もするし監督もするが、ドタバタ(スラップスティック)でないコメディ、シチュエーション・コメディの方が生きる気がする。変なカッコや変な顔、愚かな行動で笑わせようとするのは日本ではあまり受けないと思う。酷いものもあるが、最近で言えば「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米/英)や「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)などは良かったのではないだろうか。本作では人の良さも良くでていたし、普通の人を演じていたのが良かった。

 ジョシュの近所の幼なじみ、小悪党のスライドを演じたのはエディ・マーフィ。なんと本作ではプロデューサーも務めている。それなのに自分が出すぎていないところが良い。本作でも往年のマシンガン・トークは炸裂。最近はショッキングな「ドリームガールズ」(Dreamgirl・2006・米)以降、良い作品がない感じ。「ショウタイム」(Showtime・2002・米/豪)はそこそこ面白かったのに。本作は久々のヒットでは? 持っていた銃は、たぶんステンレスのS&WのM60。

 ダメダメなフロントマン、チャーリー役はケイシー・アフレック。とにかく「ジェシー・ジェームズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward・2007・米/加)の裏切り者ロバート・フォード役が強烈で、さらに「キラー・インサイド・ミー」(The Killer Inside Me・2010・米/スウェーデン/英/加)の異常殺人者も強烈だったので、暗いイメージしかなかったのだが、本作でコメディもいけることがわかった。さすが役者。

 タワーの住人、アーサー・ショウ役はアラン・アルダ。イメージは議員とか上流階級の人で、この人も役者の他に監督や脚本もやる。最近では「アビエイター」(The Aviator・2004・米/独)で上院議員を演じていた。

 タワーの住人だが投資に失敗して強制退去させられるフィッツビュー役はマシュー・ブロデリック。若い頃の二枚目の雰囲気はあるが、しばらく見なかったらさすがに老けて、何より太った感じ。残念。SFアクションの「ウォー・ゲーム」(WarGames・1983・米)とかコメディの「フェリスはある朝突然に」(Ferris Bueller's Day Off・1986・米)、南北戦争映画の「グローリー」(Glory・1989・米)、怖いコメディ「ドン・サバティーニ」(The Freshman・1990・米)なんかが記憶に残っているが、そのあとはしばらく間をおいて「GODZILLAゴジラ」(Godzilla・1998・米/日)に出たあと見なくなった。最後に見たのは「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)か。もっと出ても良いのでは。

 FBIの女性特別捜査官クレアはティア・レオーニ。マイレル・ベイのアクション「バッド・ボーイズ」(Bad Boys・1995・米)で色っぽいヒロインを演じて注目され、ちょっと残念だったいん石SF「ディープ・インパクト」(Deep Impact・1998・米)や人生やり直し映画「天使のくれた時間」(The Family Man・2000・米)、恐竜映画「ジュラシック・パークIII」(Jurassic Park III・2001・米)を経て、最近では復讐コメディ「ディック&ジェーン復讐は最高!」(Fun with Dick and Jane・2005・米)に出ていた。本作では、ちょっとジョシュと恋になりそうなのに、一歩踏み込みが足りない感じ。使っていた銃はグロック。

 エレベーター係のエンリケはマイケル・ペーニャ。感動群像劇「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)で注目され、アクション大作「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)でもFBI特別捜査官役で光っていた。最近は「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(Battle Los Angeles・2011・米)に出ていた。

 なかなか巧妙な脚本はデッド・グリフィンとジェフ・ナサンソン。デッド・グリフィンは人肉食い映画「ラビナス」(Ravenous・1999・チェコ/英/米)、リメイク1作目「オーシャンズ11」……それで本作が似ているのか……そしてつい最近アクション・コメディの「キス&キル」(Killers・2010・米)を書いている。古い方が面白いような感じ。ジェフ・ナサンソンは「スピード2」(Speed 2: Cruise Control・1997・米)や「ラッシュアワー2」(Rush Hour 2・2001・米/香)、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(Catch Me If You Can・2002・米/加)など残念な作品を書いているが、2004年には結構イケてた「ターミナル」(The Terminal・2004・米)を書いている。ただ最近作は残念な「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the CrystalSkull・2008・米)のストーリーを担当したというからなあ……。

 監督はアクション・コメディ「ラッシュアワー」(Rush Hour・1998・米)でブレイクしたブレット・ラトナー。現在はプロデューサーとしても活躍しているが、監督作品としては「天使のくれた時間」やシリーズ第2作目の「レッド・ドラゴン」(Red Dragon・2002・米/独)、そしてシリーズ最終章「X-MEN:ファイナルディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)を手掛け、アクションでは定評がある。プロデューサーとしては話題になったTVドラマ「プリズン・ブレイク」(Prison Break・2005〜2009・米)があるが、シーズン2以降はどうなんだろう。

 映画のエンディングで、ベン・スティーラーがニヤリと笑って、再びタイトルが大きく出て、終わり。痛快だ。

 ちなみに、原題にあるHEISTとは辞書で調べたら「強盗」とあった。なるほどタワー強盗ということか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、35分前くらいに着いたら、すでに開場していた。観客層は中高年というか、高齢者寄り。男女比はほぼ半々くらい。最終的には395席に7割くらいの入りは、あまり宣伝していない割には上々ではないだろうか。

 TOHOニュースというのがあって、文字だけだがティムール・ベクマンベトフ監督のマジメかジョークか「エイブラハム・リンカーン:ヴァンパイア・ハンター」、リドリー・スコットの「エイリアン」プリクエル「プロメテウス」、今度は息子が絡んでくるという「ダイ・ハード5」=A Good Day to Die Hard、スピルバーグがロボットの反乱を描く「ロボカリプス」などのほか、動画付きで上下マスク「スノー・ホワイト」がリストアップされた。アクション満載で、おもしろそう。6/15公開。

 「アメージング・スパイダーマン」は有名俳優も出て、有名監督、大予算で作られたものを、ほとんど無名の俳優たちでリメイクして……次があるんだろうか?

 ヴェルナー・ヘルツォークの監督の「世界最古の洞窟壁画3D忘れられた夢の記憶」はドキュメンタリーのようだが、3Dって? 3/3、3週間限定公開。

 「ヒューゴの不思議な発明」は新予告に。ビスタなんだ。早く見たい。3/1公開。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「バトルシップ」の予告。派手なんだけれど、監督がピーター・バーグというのはどうなのか。低予算のアクション「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)は良かったけれど、残念なSFアクション「ハンコック」(Hancock・2008・米)を撮っているからなあ……。でも予告は大画面もあって大迫力。4/13公開。


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