The Girl with the Dragon Tatoo


2012年2月11日(土)「ドラゴン・タトゥーの女」

THE GIRL WITH THE DRAGON TATOO・2011・米/スウェーデン/英/独・2時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.dragontattoo.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

スウェーデンの雑誌「ミレニアム」の正義の記者ミカエル・ブルムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、大実業家ハンス=エリック・ヴェンネルストレム(ウルフ・フリベリ)の武器密売の記事により名誉棄損で訴えられ、敗訴。辞職するかという事態に追い込まれ、雑誌も存続が危うい状態になってしまう。そんなところへ弁護士のディルク・フルーデ(スティーヴン・バーコフ)から仕事の依頼が来る。スウェーデン最大の企業グループの会長ヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)が直接会って仕事を依頼したいというのだ。引き受けてくれれば、ヴェンネルストレムをつぶす証拠を渡すという。そこで、ストックホルムから列車で4時間も離れたところにある一族が住むという島へ行くと、40年前に迷宮入りした一族の娘ハリエットの殺人事件の謎を解いてくれという。

72点

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 IMDbでは8.1という考えられない高得点。これはオリジナル版を見ていない人の評価ではないのか。ボクはスウェーデンのオリジナル版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデン/デンマーク/独/ノルウェー)(IMDbでは7.8点)のほうがずっと優れていると思う。ハリウッド版が良いと思ったのは、有名俳優が出ているところと、絵と、音のみ。事件のおどろおどろしさ、異常さ、怖さ、そしてストーリーのわかりやすさ、展開の驚き……どれをとってもオリジナルのスウェーデン版が上だと思う。

 だいたい、なぜリメイクしたのか。一般のアメリカ人は字幕版の映画を見ないからか。舞台をアメリカとかに置き換え、登場人物もトムとかピーターとかにするならまだ理解できるが、舞台はスウェーデンだし、キャラクターの名前もオリジナル版のままだ。それでみなスウェーデン以外の俳優たちが、流ちょうな英語で何食わぬ顔でスウェーデンの物語を演じている。ステラン・スカルスガルドはスウェーデン生れだが……。だったらオリジナル版を英語吹替にすれば良いのに。2年しか経ってないし。

 あえて見どころを上げれば、本作で初めてヒロインを演じることになったリスベットを演じたルーニー・マーラーが全裸で際どい演技をしていて(モザイクが入るが)、金持ちそうな女に変装して普通の女らしい格好をすると、めちゃくちゃ美人なことだけ。

 これを見て、スウェーデンのオリジナル版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」がいかにスゴイ映画か良くわかった。もう一度見直してみたいと思った。実は、オリジナル版は劇場で見ていない。公開された劇場が嫌だったのだ。それで、DVDで家のTVで見たのだが、その衝撃の大きさといったら、もう……。TVでこの衝撃だから、劇場で見たらどうなっていたことか。オリジナル版のファンの人にとっては、本作は冒涜にも近いことではないだろうか。どうか、せめて「2」と「3」は作らないで欲しい。

 ミカエルを演じたダニエル・クレイグは「007」以外にもたくさん出演していて、最近だと「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米)に出ていた。やっぱりアクション系が多い。年を取ったらアクションは難しくなるので、どんどんやっておいた方が良いと思う。個人的には新007シリーズは、ダニエル・クレイグに関係なく007っぽい感じがしないので好きになれない。普通のスパイ映画ではないかと。

 オリジナル版ではハリウッド・デビューすることになるノオミ・ラパスが演じてすごかったリスベット役は、映画ではほとんど新人に近いルーニー・マーラー。アメリカ生れで、TVのほかには話題となった「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Network・2010・米)の主人公の本恋人役や、見た人は少ないだろうリメイク版の「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street・2010・米)に出ていたらしい。美人なのに全裸で体当たり演技。彼女にとってはビッグ・チャンスだろう。パンクの格好をするとまるで印象が変わる。ただノオミ・ラパスにはかなわない。

 ヘンリック・ヴァンゲルを演じたのはクリストファー・プラマー。すでに80歳を過ぎていると言うのに最近映画に出まくり。「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)で注目されて、半世紀も最前線で活躍し続けているのだからスゴイ。最近出ていたのはSFヴァンパイア・アクション「プリースト」(Priest・2011・米)や見ていないが「人生はビギナーズ」(Beginners・2010・米)。すばらしい。

 弁護士のディルク・フルーデはスティーヴン・バーコフ。「007/オクトパシー」(Octopussy・1983・英/米)や「ビバリーヒルズ・コップ」(Beverly Hills Cop・1984・米)、「ランボー/怒りの脱出」(Rambo: First Blood Part II・1985・米)と立て続けに出演し、悪役として強い印象を残した。イギリス生れだが、ロシア人役が多い。最近ではジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーが共演した「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏)にロシアン・マフィア役で出ていた。本作でもさすがの貫録。

 一族の1人、マルティン・ヴァンゲルを演じたのはステラン・スカルスガルド。スウェーデン生れで、「存在の絶えられない軽さ」(The Unbrearable Lightness of Being・1988・米)あたりからハリウッド作品で出るようになり、「レッド・オクトーバーを追え!」(The Hunt for Red October・1990・米)などの大作にも出演。最近では「マンマ・ミーア!」(Mamma Mia!・2008・米/英/独)で歌を披露、そのあと残念な「天使と悪魔」(Angels & Damons・2009・米)や「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)に出ている。

 脚本はほぼオリジナル通りだが、製作総指揮も兼ねるスティーヴン・ザイリアン。「コードネームはファルコン」(The Falcon and the Snowman・1985・英/米)や「レナードの朝」(Awakenings・1990・米)を書いた人で、「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)や「ハンニバル」(Hannibal・2001・英/米)も書いている。「オール・ザ・キングスメン」(All the King's Men・2006・独/米)では監督も務め、最近だと「マネーボール」(Moneyball・2011・米)を書いている。

 撮影は「ファイト・クラブ」(Fight Club・1999・米/独)でデヴィッド・フィンチャーと仕事をし、「K-19」(K-19: The Wisowmaker・2002・英/独/米/加)も撮っているジェフ・クローネンウェス。最近同じデヴィッド・フィンチャー作品で「ソーシャル・ネットワーク」でオスカーにノミネートされている。

 監督はデヴィッド・フィンチャー。ILMの効果マンからCMの世界に入り、そして監督へ転身。ヒッチコックのように自在なカメラワークが得意。しかもSFXを駆使している。「セブン」(Se7en・1995・米)や「ファイト・クラブ」、「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)など話題作を続々と手掛け、「ベンジャミ・ンバトン数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)と「ソーシャル・ネットワーク」で続けてオスカー数部門で対象となっている。

 銃器はモーゼル系のボルト・アクション・ライフルと、キッチンの引き出しにP226かP228。ミカエルが取り出しリスベットが使おうとする。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて、30分ほど前に到着。ロビーは混みあっていて、なかなか座れない。10分前くらいに開場して場内へ。早速、中でメールしているヤツ。ロビーでやれ。ケータイは入口で電源切らせればいいのに。そして終わったら場内ですぐケータイをチェックするヤツ。じゃま。外へ出てからやれ。1〜2分早くチェックして何の意味がある。

 観客層は20代くらいから中高年まで幅広く、男女比はほぼ半々。最終的には607席の6割くらいが埋まった。まあ、こんな感じか。

 気になった予告編は……「スーパー・チューズデー正義を売った日」はアメリカ大統領選挙を描いたドラマで、何と監督は出演もしているジョージ・クルーニーなんだとか。気になる。3/31公開。

 上下マスク「マーガレット・サッチャー鉄の女の涙」はメリル・ストリープが特殊メイクで本人にかなりに似ているが、映画になるほどのドラマがあったのだろうか。ヘレン・ミレンがそっくりで驚いた「クィーン」(The Queen・2006・英/仏/伊)の匂いがしないでもない。3/16公開。

 上下マスク「戦火の馬」は長いバージョンでの予告。3/2公開。それにしてもタイトルが出るのが遅い。上下マスク「Timeタイム」も、上下マスク「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」も同様。タイトルを早く出せ。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「バイオハザードVリトリビューション」の予告。ソニーのCMかと思ったら映画の予告編。ほとんど戦争だ。やっぱり3Dか。アリスのハンドガンはカスタムだったような。9/14公開。


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