The Double


2012年2月26日(日)「顔のないスパイ」

THE DOUBLE・2011・米・1時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、種市譲二/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定)

公式サイト
http://w-spy.net/
(全国の劇場リストもあり)

メキシコとアメリカの国境で男が殺害される。6ヶ月後、ワシントンDCでFBIがマークしていたダーデン上院議員(エド・ケリー)が何者かにナイフで喉を裂かれて死亡する。現場にCIA長官のトム・ハイランド(マーティン・シーン)が現れ、捜査権を奪ってしまうと、ポール・シェファーソン(リチャード・ギア)の家に現れ、旧ソ連の暗殺者カシウスが復活したと告げる。ポールはかつてCIAでカシウスを追いつめた伝説のエイジェントだったのだ。そしてFBIと共同捜査をするため、FBIの若手エイジェント、ベン・ギアリー(トファー・グレイス)と組むように命じられる。そして、ロシアの暗殺者ブルータス(ステファン・モイヤー)と刑務所で会って手がかりを得るように言われる。ブルータスはポールが撃って、死んだはずだったが、実は生きていたのだった。

75点

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 IMDbでは5.8点の低評価。でもボクは面白かった。リアルなスパイ物語。ラストはリアルではなくファンタジーだろうけれど、実話の「フェア・ゲーム」(Fair Game・2010・米/アラブ首長国連邦)なども考えると、テロ、CIA、FBIの物語は恐ろしい。そしてリチャード・ギアがなかなか怖い。

 映画が始まって早いうちに、カシウスの正体が明かされる。だから物語としては、そのカシウスに若い捜査官やその家族が殺されるかどうかのスリラーになるのかと思いきや、そんな安直な展開ではなかった。どんでん返しのどんでん返し。よくできた物語。しかも、最後の方で冒頭の訳がわからないシーンがわかるという仕掛けも。

 裏の裏をかくスパイの物語に、観客も取り込まれてしまう。恐ろしくて汚い世界。そしてプロの世界。ちょっと出来過ぎの感もあるが。そこが気になると楽しめないだろう。

 容赦なく人を殺すスパイを演じたのはリチャード・ギア。二枚目だけに感情を抑えた表情は怖い。意外なミステリーの傑作「アメリカン・ジゴロ」(American Gigolo・1980・米)や、身分違いの恋「愛と青春の旅立ち」(An Officer and a Gentleman・1982・米)、ジュリア・ロバーツをスターにのし上げた「プリティ・ウーマン」(Pretty Woman・1990・米)などでヒットを飛ばしてきたが、最近は良い作品とそうでもない作品が交互にある感じ。最近良かったのは戦場記者を描いた「ハンティング・パーティ」(The Hunting Party・2007・米ほか)と、思いっ切り暗いが「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)だろうか。

 相手役の若いFBI特別捜査官ベン・ギアリーはトファー・グレイス。「スパイダーマン3」(Spider-Man 3・2007・米)で悪役を演じ、SFアクション「プレデターズ」(Predators・2010・米)で医師を演じていた。本作はピタッとはまっていた感じで、今後の活躍に期待というところか。

 CIA長官のトム・ハイランドはマーティン・シーン。何といっても「地獄の黙示録」(Apocalypse Now・1979・米)のウィラード大尉役が強烈だった。長男のエミリオ・エステヴェス、次男のチャーリー・シーンも俳優として活躍している。大ベテランだが、最近見たのはスコセッシが香港映画の「インファナル・アフェア」(無間道・2002・香)をリメイクした「ディパーテッド」(The Departed・2006・米/香)くらい。悪役が多く、本作は珍しい。

 脚本は、監督のマイケル・ブラントとプロデューサーのデレク・ハースが担当。2人はほとんどコンビで活躍しているようで、公式サイトによると、大学で出会って意気投合したらしい。デビュー作はシリーズ第2作の「ワイルド・スピードX2」(2 Fast 2 Furious・2003・米/独)。まあ、それほどとは思わなかったが、次のリメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)は良かった。といっても、これはオリジナルが良かったのだろうけど。その後、アンジェリーナ・ジョリーのありえないアクション「ウォンテッド」(Wanted・2008・米/独)と続き……オリジナルとしては本作が一番良いのではないだろうか。

 ロシアの暗殺者が脱走する時に奪う銃はグロックのG19か。リチャード・ギアが使っていたのはベレッタのM92FS。娼婦に突きつける時、そのあと撃たないのにちゃんとハンマーも起きていた。ここで緊張感が生まれた。ほかに一瞬だったが、チーフのデホーンド・ハンマーのようなものも出ていたと思う。FBIはP226で、FBIのSWATはM4カービンを装備。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。ギリギリに到着したためハッキリとは確認できなかったが、観客のほとんどは中高年で、男女比はほぼ半々くらい。また228席に8割くらいの入り。

 気になった予告編は……上下マスク「キラー・エリート」はジェイソン・ステイサム主演で、クライブ・オーウェンとロバート・デ・ニーロが出るんだとか。ペキンパーの同名作品のリメイクなんだろうか。とにかくアクション満載。5/12公開。

 上下マスク「ドライヴ」は、なんだかライアン・オニールの「ザ・ドライバー」のような設定だが、どうなんだろう。面白そうな感じはした。3/31公開。

 上下マスク「テイク・シェルター」は、陰気な顔の男が恐ろし夢を見て家族を守るためにシェルターを作るホラーらしい。ノアの箱船のような話の気もするが、スリラーではなく、あえてサイコ・スリラーというのがちょっと気になる。3/24公開。


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