War Horse


2012年3月3日(土)「戦火の馬」

WAR HORSE・2011・米・2時間17分(IMDbでは147分)

日本語字幕:手書き風書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://disney-studio.jp/movies/warhorse/
(全国の劇場リストもあり)

イギリスの片田舎で1頭のサラブレッドが生まれる。アルバート少年はその馬に目を奪われ、そして目が合う。やがて子馬は売りに出され、地主のライオンズ(デヴィッド・シュリス)と競り合って小作人のアルバートの父テッド(ピーター・ミュラン)が競り落とす。母のローズ(エミリー・ワトソン)は、サラブレッドは農耕馬にならないと返すように主張するが、アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)は必ず調教するからと、1カ月の猶予を得る。アルバートは馬をジョーイと名付けると、かいがいしく世話をし、調教に成功する。しかし、そんなとき第一次世界大戦が勃発し、水害で畑をやられたテッドは、家と土地を守るためジョーイを軍に売ってしまう。

73点

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 感動的な作品。あやうく涙がこぼれそうになったが、どうも、作為というか、舞台の芝居のようなわざとらしさ、大げささがある。物語というべきか、おとぎ話というべきか。きっと、スピルバーグはこれをリアルな物語としてではなく、おとぎ話として描きたかったのだろう。いつか馬が話し出すのではないかと思うほど、ギリギリのところまで行く。だからか、ちょっと眠かった。

 そのおかげで、ノレない部分があり、気になる人は楽しめないかもしれない。ボクはちょっと気になった。スピルバーグっぽくない。いやスピルバーグが年老いて作風が変わったのか。最近、製作総指揮ばかりで監督をあまりやっていなかったせいかも。本作は「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)みたいな感じだったら良かったのに。

 もちろん、映像的には一面ススキの原のようなところで、いきなり兵が現れて乗馬するとか、それがドイツ軍に襲いかかるシーンなんか、「アラビアのロレンス」(Lawrence of Arabia・1962・英)を彷彿とさせて素晴らしい。馬も、実に美しく捉えられている。

 ただ、ドイツ軍も当たり前のように流ちょうに英語を話されると、ちょっと違うんじゃないのと思ってしまう。ドイツ訛りの英語なのかもしれないが、そんな手前勝手な。中間地帯で馬を敵対する両軍の兵士が協力して助けるためには、言葉が通じなければならないからか。アメリカの観客は気にしないのだろうが、かなり気になる。アメリカ人らしい力技。戦場で馬がまず狙われて倒れるのはリアルなのに。

 ドイツ兵が調達に農家にやって来るのは、あたかも黒澤明の「七人の侍」(1954・日)のよう。「また刈り入れのシーズになったら来る」なんて、野武士のセリフそのままではないか。「戦争はすべての人から奪う」とつけ足しているが、スピルバーグだったら絶対に意識していると思う。

 スティーヴン・スピルバーグが最近監督したものというと、残念な3D-CGアニメの「タンタンの冒険/ユニオン号の秘密」(The Adventures of Tintin・2011・米/ニュージーランド)、シリーズ最終の残念な作品「インディー・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull・2008・米)だもンなあ。良かったのはスパイ暗殺実話「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)までか。

 原作は1982年に発表されたイギリス、マイケル・モーパーゴの小説で、舞台化もされトニー賞に輝いているという。それを脚本化したのはリー・ホールとリチャード・カーティスの2人。 リー・ホールは、傑作「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英/仏)を書いた人。リチャード・カーティスはもともと大ヒットTVコメディ「Mr.ビーン」の脚本家で、「ノッティンクビルの恋人」(Notting Hill・1999・英/米)や「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones's Diary・2001・英/アイルランド/仏)、「ラブ・アクチュアリー」(Love Acturally・2003・英/米/仏)など一流のコメディ・テイストのラブ・ストーリーを得意としているよう。最近作は、監督も兼ねた「パイレーツ・ロック」(The Boat That Rocked・2009・英/独/仏)。ちゃんと面白いコメディを書ける人は、どんなドラマも書けるということか。ホラーと似た傾向があるようだ。

 農家にあるショットガンは水平二連のハンマー式。イギリス軍の武器はリー・エンフィールド・ライフルNo.1とウェブリー・リボルバー、ルイス・マシンガン。ドイツ軍はモーゼル・ゲベール1898、そしてハーネスとストックがセットになっているルガーP08砲兵モデル(20cm銃身)、マキシムMG08マシンガン。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。30分くらい前に付いたら、まだ開場しておらず、外で5分ほど待つ。12〜13分前に開場となり、場内へ。この時点で25〜26人。20代が4〜5人。中高がメインで白髪が目立つ。女性は2割ほど。最終的には607席に3割くらいの入り。戦争映画という印象が強いのでこうなのか、スピルバーグの前作3D-CGアニメが残念だったからか。大作にしては入りが少ない。

 主旨がわからない「主食軍団」のCMのあと、気になった予告編は……3D-CGアニメの上下マスク「メリダとおろしの森」は新予告。日本語吹替だったが、なかなか面白そう。7/21、3D公開。

 上下マスク「ジョン・カーター」は、「ターザン」のエトガー・ライス・バローズのSF「火星シリーズ」が原作だろうか。4/13、3D公開。

 まあ、どれもタイトル画出るのが遅いし、まだまだ入ってくるし。


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