Hugo


2012年3月4日(日)「ヒューゴの不思議な発明」

HUGO・2011・米・2時間06分

日本語字幕:丸ゴシック体下、桜井裕子/ビスタ・サイズ(デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.hugo-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

フランス、パリの駅にある時計室で1人で暮らしている少年、ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)は、父親が職場の博物館の屋根裏で発見した形見の機械人形の修理を試みており、駅内にあるおもちゃ屋に使えそうな部品のあるネズミのおもちゃを見つけ、無断でいただこうとして、捕まってしまう。店主の老人ジョルジュ(ベン・キングスレー)は、ヒューゴが持っているものをすべて取り上げ、店の手伝いをして償いをしろと命じる。そして、機械人形を直すための父のノートまでも取り上げられる。するとノートを見たジョルジュの表情が変わり、これは燃やしてしまうという。驚いた少年はノートを取り返すためジョルジュの後を追い、娘のイザベル(クロエ・グレース・モリッツ)と出会う。彼女は冒険が待っていそうだから、手伝うという。

85点

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 映画の愛情に溢れた映画。心温まるファンタジー。タイトルはちょっと変で、ホントは「ヒューゴが持っている不思議な発明品」の方が正確だと思うが。少年の純真なひた向きさ、少女の優しいまなざし、老人の悲しみ……悪人のいない大冒険談。よくできたお話。両目から涙があふれてしまった。ただ、フランスが舞台の映画で、フランス人が多く出ているのにすべて英語で展開するのだが。

 しかも、久しぶりに3D上映らしい立体効果のある映画。これは立体で見た方が、映画の世界に入り込めると思う。まあ正直「アバター」(Avatar・2009・米/英)以来という感じ。ほとんどの映画は3D上映にふさわしくない。世界観、表現、設定、適切な画面構成と撮影……いろんなものが3D上映に向いている。ただの金もうけ主義で3Dを汚して、その価値や評判を落としていただけ、というと言い過ぎだろうか。

 とは言いつつ、映画創成期の作品も一杯ちりばめられている。サイレントで、当然モノクロで2Dもいいところだが、人口着色されていたりして、当時それをリアルタイムで見て衝撃を受けた観客たちの感動のようなものを、3Dで現代の観客たちがある種、共感できるようになっている。その作品は、映画史で必ず出てくるような有名なものばかり。D・W・グリフィスの「イントレランス」(Intolerance・1916・米)、「大列車強盗」(The Great Train Robbery・1903・米)、リュミエールの「列車の到着」(L'Arrivee d'un train a la Ciotat・1895・仏)、「工場の出口」(La sortie des usines Lumiere・1895・仏)、エジソン社の「抱擁」(The Kiss・1896・米)、「ロビン・フッド」(Robin Hood・1922・米)、ウイリアム・S・ハート、ダグラス・フェアバンクス、バスター・キートン、チャーリー・チャップリン、ハロルド・ロイド、たくさんのクラシック映画のポスター、そして当時の温室のようなガラス張りの撮影スタジオと、撮影の裏側……ニューヨーク大講師も務めたスコセッシらしさ全開。

 もちろん、メインでフィーチャーされているのはジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」(Le voyage dans la lune・1902・仏)。手品師だったというメリエスらしい編集技術を使ったトリックやフォース・パースペクティヴは、現在の視点では稚拙かもしれないが、なにより個の手法の先駆者であり、当時は驚きを持って受け入れられたのだから、批判はふさわしくない。むしろ敬意を表すべきだというのがこの映画のスタンス。夢を形にしたと。

 ヒューゴ少年はエイサ・バターフィールド。見ていないが「リトル・ランボー」(Sonof Rasmbow・2007・仏/英/独)に小さな役で出ていたそうで、最近「ウルフマン」(The Wolfman・2010・米)や、見ていないが「ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ」(Nanny McPhee and the Big Bang・2010・英/仏/米)に出ていたらしい。しかし印象に残るのは本作が初めて。大抜擢だろうが、見る目はあったと。1997年、イギリス生れ。

 ジョルジュ老人はベン・キングスレー。「ガンジー」(Gandhi・1982・英/印)でアカデミー主演男優賞受賞の大ベテラン俳優。本作では世をすねたガンコ老人の雰囲気が良く出ていて素晴らしかった。ホント憎らしくなるほど。最近スコセッシの「シャッター・アイランド」(Shutter Island・2010・米)に出ていた。ボク的にはスリラーの「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)とかミステリーの「ラッキーナンバー7」(Lucky Number Slevin・2006・独/米)の悪役が良かった。古いところでは「死と処女(おとめ)」(Death and the Maiden・1995・英/米/仏)も良かったが。

 イザベルはクロエ・グレース・モリッツ。痛快アクション「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)でブレイク、スウェーデン映画のリメイク・ホラー「モールス」(Let Me In・2010・英/米)は暗い役だったが。本作はピッタリな感じ。今後、どんな役を演じるのか楽しみ。

 ヒューゴの父役はジュード・ロウ。最近は「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独/英)シリーズが好調。しかし衝撃度では「レポゼッション・メン」(Repo Men・2010・米/加)が上だった。好きな作品では「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2001・英/米ほか)、「A.I.」(A.I.・2001・米)、「コールドマウンテン」(Cold Mountain・2003・米/英ほか)あたりだろうか。

 足の不自由な鉄道公安官はサシャ・バロン・コーエン。ティム・バートンの「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street・2007・米/英)に出ていた人。駅構内の書店のおやじさんムッシュ・ラビスはクリストファー・リー。なんたってハマー・プロの「吸血鬼ドラキュラ」(Dracula・1958・英)ドラキュラ役がピッタリで、最後に見たのは残念なファンタジー「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass・2007・米/英)だったか。駅構内の花屋さんのリゼットはエミリー・モーティマー。大きな役はブルース・ウィリスのファンタジー「キッド」(The Kid・2000・米)からで、最近はスコセッシの「シャッター・アイランド」に出ていた。

 原作はブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」。脚本はジョン・ローガン。最近大活躍で、シェイクスピアの翻案「英雄の証明」(Coriolanus・2011・英)とアニメ西部劇「ランゴ」(Rango・2011・米)を書いている。ちょっと前には「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)やスコセッシの「アビエイター」(The Aviator・2004・米/独)、「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」も書いている。さらに遡ると、「グラディエーター」(Gladiator・2000・米/英)も書いている実力派。

 監督はマーティン・スコセッシ。ニューヨーク大で映画を教え、オリアヴァー・ストーンやスパイク・リーが教え子だったのは有名。監督作品には名作が何本も並ぶが、傑作「タクシー・ドライバー」(Taxi Driver・1976・米)、巻き込まれコメディの傑作「アフター・アワーズ」(After Hours・1985・米)などニューヨークを舞台にしたバイオレンス系の作品が多いが、本作はまったく異なる3D上映を意識したファンタジー。こういう作品もいけるところが大監督だ。

 公開4日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、ムビチケでPCから座席予約して、30分前くらいに着いたら窓口に20人くらいの行列。エスカレーターは動いていなかったが、エレベーターは動いていたようで、人が行ったので自分も行く。Vitで発券し、3Dメガネをもらって場内へ。5〜10分くらいで窓口も開いたらしく、続々と入ってくる。

 スクリーンはビスタで開いており、下は小学生くらいの女の子からいたが、だいたいは20代後半くらいから中高年。男女は半々くらいで、老がやや多め。最終的には395席に7〜7.5割くらいの入り。これは劇場で、3D上映で見た方が良いと思う。

 気になった予告編は……文字とナレーションのみの「ハリウッド・トピック」では、リドリー・スコット監督の「プロメテウス」、ティムール・ベクマンベトフ監督の「エイブラハム・リンカーン:ヴァンパイアメハンター」、「ダイ・ハード5」、スティーヴン・スピルバーグ監督の「ロボポカリプス」、アン・リー監督の「ライフ・オブ・パイ」、唯一動画付きの「スノー・ホワイト」。どれも見たい。

 上下マスク「バトルシップ」はいよいよ1ヶ月後の公開。予告編では面白そうだが、1つの心配事は、監督が「ハンコック」(Hancock・2008・米)の人だということ。あのレベルではとても……。映像が「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)っぽいのも気になる。空っぽでなきゃいいけど。4/13(金!)公開。

 3Dメガネを掛けるように指示が出てから、ピクサー・アニメの「メリダとおそろしの森」。もともと3D-CGなので立体感は十分。大人向けの、ちょっとダークな物語らしい。7/21公開。

 上下マスク「アメイジング・スパイダーマン」は、ちょっと立体感があるが、なぜ作るのか理解できない。同じじゃん。6/30公開。

 「MIB3」は予告を見る限り、シリーズの味を生かした期待通りのものになるらしい。立体感もなかなか。5/25公開。上下マスク「タイタニック」はもともと3D上映に向いていたネタのようで、3Dでは撮影していないはずだが、立体感(奥行き感)たっぷり。これは見直しても良いかもしれない。4/6、全世界同時公開。それに対して立体感が希薄なのは「スター・ウォーズ エピソード1」。CGパートはもっと立体的にできるだろうに、なぜこの程度? 一番派手なところを見せなきゃいけないのでは? 3/16公開。



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