Sherlock Holmes: A Game of Shadows


2012年3月11日(日)「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」

SHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS・2011・米・2時間08分

日本語字幕:手書き風書体下、アンゼたかし/ビスタ・サイズ(マスク、Super 35、by Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版、デジタル上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/sherlockholmes2/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

19世紀末、ヨーロッパではアナキストによると思われる爆弾テロが横行し、戦争が起こりそうな雰囲気が蔓延していた。そんな中、怪しい茶色の紙包みを抱えるアイリーン(レイチェル・マクアダムス)を中国人に変装したシャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)が追跡していた。そして彼女からその紙包みを奪うと処理してしまう。実は紙包みは爆弾で、ある人物を爆殺しようとしていたのだった。ミッションに失敗し重要な手紙も奪われたアイリーンは、依頼主である天才犯罪者のジェームズ・モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)から抹殺されてしまう。数日後、明日に自身の結婚式を控えた医師のジョン・ワトソン(ジュード・ロウ)が呼ばれてシャーロック・ホームズの家を訪れる。いま世界各地で起きている大事件はすべてモリアーティ教授につながるという。そして監視されているので、最後の冒険として手伝ってくれないかというのだった。

74点

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 IMDbでは驚異の7.7という高得点。確かに冒険に次ぐ冒険で、息つくヒマもないほど。ガイ・リッチー節は絶好調で、観客を映画の世界へ取り込んで、たっぷりと2時間の間楽しませてくれる。劇場を出たら夫婦の声が聞こえてきた。夫「面白かったねえ」、妻「うん、面白かった」。たぶんこのように楽しんだ人が多かったと思う。

 カラーの彩度を落としセピア調でまとめた画、時代を感じさせる服装、自動馬車、世紀末の時代背景(舞台設定)、そして世界各地を股にかける壮大な物語展開、女装や変装、シニカルな笑い、そして強烈なバイオレンスから来る独特の「ガイ・リッチー毒」のようなものにやられる。

 もはやこれは謎解きの推理小説としての「シャーロック・ホームズ」ではなく、冒険活劇……それも冒頭の導入部、爆破テロから始まって主人公の登場、そして危機的状況でのイギリス人っぽいジョーク、そして4人の敵を倒して去って行く感じは……007、そう、まるでジェームズ・ボンド、スパイ映画そのものではないか。「ホームズ、シャーロック・ホームズ」って言うかと思ったほど。

 ただし、アクションが主体なのは良いと思うけれど、あまりに片寄過ぎて、ストーリーがわかりにくい上に、ドラマが無くなってしまっている。なぜとか描かれず、人物は実は誰でも良いような設定で、感情が伝わってこない。だから、面白いけれど見終わっても何も残らない。遊園地でジェットコースターに乗っていたようなもの、というと言い過ぎだろうか。

 特に素晴らしかったのは、林というか森の中をホームズたちが逃げるシーンで、追うドイツ軍がマシンガンや大砲をぶっ放してくるねのだが、超スローになって、そばを砲弾や銃弾が飛んで行くのが見えるところ。ちょっと「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)のブレット・タイム風。そのスローも可変スピードで、いきなり通常スピードに戻ったり、素晴らしい表現。まあこの辺も「ガイ・リッチー節」なんだろうけど。

 冒頭、ホームズが男から取り上げ、中折れさせて弾を抜いて返す銃はグリップがバーズ・ヘッドのウェブリー・リボルバー。ワトソンはヒップ・ホルスターにアイボリー・グリップの3インチくらいのダブル・アクション・リボルバーを装備。そしてホームズとワトソンは、後半ではドイツの武器工場でモーゼル・ミリタリー・ピストル(C96)を使う。イギリス軍はマルティーニ・ヘンリー・ライフル。600mから狙撃する、三脚、サイレンサーまで備えたケース入れの豪華なスナイパー・ライフルは、マルティーニ・ヘンリーをカスタムしたもののようだった。ドイツ軍(オーストリア軍?わかりにくい)はちょっとマンリッヒャーやカルカノ・ライフルのようなシルエットのモーゼル・ゲヴェール1888。そしてイギリス軍が列車で使うのがマキシム・マシンガン、ドイツ軍はなぜか手回しのガトリングガン。ほかにブレン・マシンガンのようなシルエットのサブマシンガンのようなものも出ていたようだが、よくわからなかった。

 武器係は、タミエン・ミッシェルとかなんとかあったと思うのだが、IMDbによるとキー・アーマラーは前作や「キャプテン・アメリカ」(Captain America: The First Avenger・2011・米)や「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)を手掛けたニック・ジェフリーズ、セット・マラーが「キャプテン・アメリカ」も手掛けたサイモン・ネヴィルとあった。

 ホームズは、前作どおり、格闘になる直前に頭の中でシミュレーションする。相手がこう打ってきて、こう避けて、反撃して……これがスローモーションで描かれ、シャドー・ゲームだと。相手の手を読むのはチェスにつながり、後半でもモリアティとのチェス戦が登場する。なるほど、そういうことか。

 シャーロック・ホームズは前作に引き続きロバート・ダウニー・Jr。一時、薬物でダメになったが、見事に復活。最近は柔らかいコメディ「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)から、SFヒーローもの「アイアンマン」(Iron Man・2008・米)、シリアス・ドラマ「路上のソリスト」(The Solist・2009・英/米/仏)など、なんでも演じている。

 ワトソンはジュード・ロウ。だいぶ頭が薄くなってきた感じだが、まあ良く映画に出ている。最近だけでも怖いSF「レポゼッション・メン」(Repo Men・2010・米/加)、ウイルス感染を描いた「コンテイジョン」(Contagion・2011・米/アラブ首長国連邦)、そしてついこの前アカデミー賞候補にもなった傑作ファンタジー「ヒューゴの不思議な発明」(Hugo・2011・米)に出ていた。

 モリアーティ教授はジャレッド・ハリス。ブラッド・ピットのラブ・ファンタジー「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)でボートの船長をやっていた人。つい最近ホラーの「ザ・ウォード/監禁病棟」(The Ward・2010・米)に出ていたようだが、マイクロ劇場での公開だったので見ていない。ジョン・カーペンターだったのに。

 事件の鍵を握るジプシーの女シムはノオミ・ラパス。ハリウッドでそのままリメイクされたオリジナル版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデン/デンマークほか)で主人公の手伝いをするリスベスを演じた人。「エイリアン」(Alien・1979・米/英)の前日譚「プロメテウス」に出ているらしい。楽しみ。本作はあまり存在感がないが……。

 脚本はマイケル・マローニーとキーラン・マローニーの夫婦。日本公開されている作品は本作のみの模様。夫のキーランは役者もやっていて、主にTVで「ナッシュ・ブリッジス」や「NCIS」などに出ている。

 監督はガイ・リッチー。二枚目の監督だが外見に似合わずバイオレンス作品が多い。本シリーズは、それでも抑え気味のほう。向いていたということだろうか。あのアメリカのTVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」を映画化するという話があるらしいが、どうなんだろう。

 古い手書きの書類というか本のような雰囲気のクレジットは、オープニングがプロローグ・フィルム、エンディングが、ちゃんと読み取れなかったがフューンライブ・スタジオとか何とか。ただIMDbによると、メイン・タイトルのエグゼクティブ・プロデューサーは、あのカイル・クーパーだとか。

 ラスト、めずらしいくTHE ENDと出るのだが、そのうしろに?が付いていた。ってことは、ウケたら第3作も作るってこと? ボク的にはあっても良いと思うけど。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席自由で、45分前くらいに着いたら、まだ劇場入口には誰も並んでいなかった。窓口には10人くらいの列。20分ほど早く、系列の劇場で同じ作品の日本語吹替版が上映されるのでそれか。40分前くらいに窓口が開いて、30分前くらいに開場となった。この時点でオヤジ2人に夫婦1組。遅れてくるヤツが多くてハッキリとはわからなかったが、最終的には1,064席に70〜80人ほど。ほとんど中高年で、若い人は2割いたかどうか。男女比はほぼ半々くらい。

 CM・予告は場内がほとんど明るいままで上映。暗いシーンになると良くわからない。しかも、デジタル館ではないし、古いのでスクリーンも最新館のように明るくない。古い劇場は暗くしないと。それに本編でも。最新のデジタル上映館と比べると暗く、解像度も低い感じ。かえってTVのCMのほうがダイナミックレンジも広く解像度が高いような印象。これでいいのだろうか。さらに、上映中ちょっと寒いって、どうよ。暖かい必要はないけど、肌寒いって……。エコなのかなあ。

 カーテンが上にあがって、毎度意味不明なマヨネーズのCMに続いて、気になった予告編は…… 「ビースト・ストーカー」はニコラス・ツェー、久々のアクション。いろんなところで賞を受賞していて、ものすごいアクション。車の転覆なんて俳優が本当に中にいるよう。フロント・ガラスも俳優がいるのに粉々になって吹き飛んでるし、CGか? とても見たいが、劇場があそことは……なぜ? 2008年の作品だし……残念。4/7公開。

 上下マスクの「G.I.ジョー」は、あの残念だった作品の続編らしいが、予告のメインはイ・ビョンホン。前作と変えるなら良いかも。どうだろう。ただ画質は良くなかった。8月公開。

 上下マスクの「バトルシップ」は特別映像の公開。いん石が飛んで来て、日本の大仏や香港に落ちて、宇宙船があらわれて、レーダーが使えないと。で、浅野忠信が「良い手がある」とか言って、君がキャプテンにとなって、敵が見えないとか言って……ただ、絵の感じがほとんど「トランスフォーマー」というのが不安材料。まさかCGだけのおふざけ映画じゃないだろうな。画質がイマイチ。4/13公開。

 スクリーンが左右に広がって、海賊版のCMのあと本編へ。


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