Poo-reun so-geum


2012年3月17日(土)「青い塩」

BLUE SALT・2011・韓・2時間02分

日本語字幕:丸ゴシック体下、根岸理恵/シネスコ・サイズ(マスク、Arri)/ドルビー・デジタル

(韓15指定)

公式サイト
http://www.aoi-shio.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

かつて大きなヤクザ組織を取り仕切っていたユン・ドゥホン(ソン・ガンホ)は、ヤクザの世界から引退し、調理師免許を取ってレストランを開くため、プサンの料理教室に通い始めた。そこに若い女性のセビン(シン・セギョン)も来て、やがて2人は話をするようになり親しくなって行くが、実はセビンは裏世界の便利屋で、ある組織の依頼によりドゥホンを監視し、写真を取って毎日の行動を報告していたのだ。そんな時、以前ドゥホンが所属したていたハンガン組の親分が何者かの車ではねられ、重体となる。遺言にドゥホンの名前があったことから、組の幹部たちは納得できず、まとまりをうしなってしまう。そしてドゥホンを監視させていた幹部から、ドゥホン暗殺の指令が下る。

74点

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 激しいアクションとラブ・ロマンス。笑わせる要素とヴァイオレンス。韓国映画の得意分野だが、バランスが難しい。成功すれば大傑作になるが、失敗すると駄作になってしまう。たとえばTVドラマで言うと、「アイリス」(Iris・2009・韓)はOKだったが、続編の「アテナ」(Athena・2010・韓)は残念なものになったように。恋愛ものの要素をメインにしてしまうと、ほとんどアクションとしてのストーリーが成立しなくなってしまう。本作は、微妙なバランスだが、アクションにシフトしたことによって、どうにか映画として破綻せずにまとまっている。

 ちょっとご都合主義な所はあるが、キッチリとヤクザの世界を描き、アクションも本格派。銃種も今らしいもので、キャラクターに合わせてちゃんと選ばれているようで、その点でも好感が持てる。結構大きな音がするサウンド・サプレッサー(サイレンサー)、レーザー・サイト、M24、塩の弾丸、ハンド・ローディング……。

 とにかく、何よりヒロインのシン・セギョンが素晴らしい。かわいらしいし、美人。しかもあえて突っ張った感じを出すために尖った濃いめの化粧をしているのが合っている。薄化粧のシーンもあるのだが、それだと割と普通の美人なのに、濃いめにするとかなり魅力的になる。ちょっと「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデンほか)が入っている気がしないでもない。そして、名優ソン・ガンホの、ヤクザなんだけれど良い人ぶりが実に良い。

 しかも、ラストがいい。予想どおりのというか、こうあって欲しいという方向での結末。あえての定石、王道の決着。これは大人のファンタジーなのだから、正しい選択だと思う。ハリウッドもこちら系だが、照れずに正面切ってこうする力。これは逆に難しいと思う。しかも韓国映画だってひねった終わり方もほかでやっているわけで…… 日本だったら間違いなくひねった結末、むしろバッド・エンディングにする気がする。後味が悪くて、久しぶりに見た人なんか、やっぱり映画見るのは止めようと思ってしまう。ファンタジーくらい楽しみたい。

 足を洗ったヤクザ、ユン・ドゥホンはソン・ガンホ。コメディからシリアスまでこなせる名優。韓国映画が多く公開されるようになった初めの方の「クワイエット・ファミリー」(Choyonghan kajok・1998・韓)、大ヒットした「シュリ」(Swiri・1999・韓)、「JSA」(J.S.A.: Joint Security Area・2000・韓)、怖い復讐劇「親切なクムジャさん」(Chinjeolhan geumjassi・2005・韓)、モンスター・ムービー「グエムル-漢江の怪物-」(Gwoemul・2006・韓)、韓国ウェスタン「グッド・バッド・ウィアード」(Joheunnom nabbeunnom isanghannom・2008・韓)……実に多彩。二枚目じゃないが独特の魅力がある。

 今回最大の収穫はヒロインのシン・セギョン。1990年生れということは22歳。9歳でモデルとしてデビュー、子役になり、その後学業に専念。2009年に復帰したと。まあ、とにかく役にはまっていた。かわいくて、美人で言うことなし。あとは今後も良い作品に恵まれれば、大ブレイクだろう。はたして……。使っていた銃はなぜかサイレンサーをつけたワルサーP38。暗殺のため密輸したスナイパー・ライフルM24も使う。これにはハリスの二脚と大型のナイト・ビジョン付きスコープ、そしてレーザー・サイトまで。プロはあまりレーザーは使わないと思うけれど、映画的には派手めで好まれるのだろう。ストックを斬ったり削ったりして自分に合わせる。ほかに、競技用のライフルも持っていた。

 ヤクザたちはサイレンサーをつけたグロック、M92。ほかにSTIっぽい1911オートにサイレンサーを付けたもの、ルガーのセキュリティ・シックスらしいリボルバーなどが登場。

 塩(グム)が重要なアイテムとなっていて、セビンの好きな料理は塩辛く、ラストは塩田で対決が繰り広げられ、塩の弾丸も使われる。そして、人生には大事な3つのグムがあると、セビンは言う。1つは黄金(ファングム)、1つは塩(ソグム)、そして……3つめはそのとき語られないが、あとでドゥホンが3つめは今(チグム)だと言う。うむむ。思わず結婚式のスピーチの「大切な3つの袋」を思い出してしまった。

 巧妙な脚本と監督はイ・ヒョンスン。ハリウッドでキアヌー・リーヴスとサンドラ・ブロックでリメイクされた「イルマーレ」(時越愛・2001・韓)の監督だ。その作品では脚本は書いていないのだが、本作では脚本も書いている。また、アドベンチャー・ロマン「燃ゆる月」(The Legend of Gingko・2000・韓)では俳優として出演もしている。マルチな才能を持った人のようだ。

 公開初日の初回、銀座の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて、30分前暗いに到着。入口の前に列を作らず3〜4人がたまっていた。20分ちょっと前くらいに開場となり、場内へ。この時点で7〜8人。その後ぽつぽつと増えて行って、中高がメインだったが、白髪が目立っていた。若い人は数人で、しかもほぼ女性。やはり韓流ファンということでか、最終的に男女比はオバサンが増えて3対7くらいで女性の方が多くなった。350席に2割くらいの入り。これはちょっと少ないのでは。もっと入っていい映画。

 関係者らしい一団が10人くらい後ろに鈴なり。しかも本編上映ギリギリまで場内にいて、それから出て行くので、気になってしようがない。ドアから外の光が入ってくる。迷惑だなあ。

 前の方がやや暗くなって始まった予告編で気になったのは……「臨場」はテレビ朝日系のTVドラマの映画化。「CSI」とかの臭いがぷんぷんするが、写真のみの予告って。内野聖陽が暗い雰囲気。6/30公開。

 「外事警察」はヤバイ雰囲気が漂いまくりだが、NHKのTVドラマの映画化。「公安が生んだ魔物」か。渡部篤郎が思いっ切り暗い雰囲気。6/2公開。

 「HOME」は座敷わらしというより家族再生ドラマのような雰囲気で、どうなんだろう。座敷わらしがメインなら良いのに。4/28公開。「僕達急行」はなんだかとても画が古くさい感じ。とても最近の作品とは思えない感じ。3/24公開。

苦役列車」は森山未来と前田敦子が出るそうで、最近よくTVに出ている西村賢太の芥川賞受賞小説の映画化。予告を見てもどこが良いのかよくわからないが、7/14公開。非常にわかりやすく印象に残ったのは、アニメの「虹色ほたる」。ノスタルジーいっぱいの田舎での夏休み。何より良かったのは、タイトルと5/19公開の文字が最初からずっと右上に出ていたこと。正しい予告編だと思う。

 上下マスクの「捜査官X」はなかなかタイトルが出ないが、新予告。金城武とドニー・イェンという魅力的な顔合わせ。これは面白そう。4/21公開。

 スクリーンが上下に少し広がり、さらに左右に広がってシネスコ・サイズになって本編の上映。ここでドアを開けるなって。


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