John Carter


2012年4月15日(日)「ジョン・カーター」

JOHN CARTER・2011・米・2時間12分

日本語字幕:手書き風書体下、森本 務/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)(IMAX版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/johncarter/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

現地ではバルスームと呼ばれる火星は、サブ・サン(ドミニク・ウェスト)に率いられた赤色人のゾダンガ国と、ヘリウム大国が1000年の戦いを続け、死につつあった。そこへ女神に仕えるというマタイ・シャン(マーク・ストロング)と2人のサーン族の男たちが現れ、第9の光の武器をサブ・サンに授ける。これがあれば無敵だと。一方、1881年の地球、アメリカのニューヨークからジョン・カーター(テイラー・キッチュ)がいとこのエドガー・ライス・バローズ(ダリル・サバラ)に「すぐに来てくれ」と電報を打つ。ところが、バローズが屋敷に着くとカーターはすでに亡くなっており、弁護士から日記を渡される。そこには、1868年、カーターがある洞窟で遺跡のようなものを発見、謎の男が現れて闘いとなり、彼を倒してメダリオンを手に入れると、火星へと瞬間移動してしまったと書かれていた。

72点

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 うーむ、伝わってこない。すごいSFX、壮大な物語、おそらく大予算で、ドラマもいくつも仕込まれていながら、なぜか感動が薄い。一本調子で長いこともあって、途中何回か気を失いかけた。3D効果も今1つ。必要あったんだろうか。短いカット、浅いフォーカス、真横のショットは3Dには向かない。ただ絵はすごいので劇場で、できるだけ大スクリーンで見たい。

 原作は「スターウォーズ」(Star Wars・1977・米)の参考にされたというが、むしろこれを見るとかなり「スターウォーズ」からの引用を感じる。新しい物語であるはずなのに、すでに見てしまったかのような印象。クリーチャーや飛行メカなどがほとんど、見たようなデザインばかりのせいかもしれない。スピーダー・バイクのようなシーンもあるし、SWのクリーチャーっぽいサーク族のソラはC3P0っぽいポジションで、ジャバ・ザ・ハットの宮殿近くにいたカエルっぽい火星の犬ウーラはR2D2っぽいポジションのようにも思える。火星は戦国時代だし。ちょっとしたレトロフューチャー。

 そして、ヒーロー、ヒロインに若さがあまり感じられず(設定でもあるのだろうが)、これから壮大なスペース・オペラが始まるのに、なんだかもうこれでお終いという感じ。成長の余地がないというか。まあ子供が産まれて次の世代ということもあるだろうけれど……。

 やはりある意味、お話の構造は西部劇そのもの。(地球からの)流れ者が町にやって来て、トラブルを解決し、去って行くと。もちろんその間には美女との恋があって、捕まって、脱出して、仲間ができて……。しかも、冒頭からの回想は1868年で、西部劇ど真ん中。南北戦争が終わり、元南軍兵士で捉えられたジョン・カーターは、元北軍で騎兵隊の隊長から騎兵隊に入るように誘われる。ここで使われているのはコルト・ドラグーンのようだったが…… そしてライフルというかカービンはスペンサー・カービン。あれ、シャープスか? 火星でもサーク族がスナイパー・ライフルのような武器を使用。

 ジョン・カーターはカナダ生れのテイラー・キッチュ。ほぼ同時公開で「バトルシップ」(Battleship・2012・米)に出ている。まあ、どちらも……。新作が2本控えているが、どうなんだろう。1981年生れというから31歳。年齢の割に若さが感じられない雰囲気。

 ヒロイン、火星のプリンセス、デジャー・ソリスはリン・コリンズ。ジム・キャリーのダークな映画「ナンバー23」(The Number 23・2007・米/独)に出ていた。その前には、アル・パチーノの「ヴェニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米/伊ほか)で美女のポーシャを演じていた。ただ1979年生れで、33歳ともなると、すっかり大人の女性という感じで、プリンセスというのはちょっと無理があるかなと。

 緑色人サーク族の皇帝、タルス・タルカスはウィレム・デフォー。さすがクセ者役者、こういう役でも違和感がない。モーション・キャプチャーで役を演じたらしい。ミュージカル・アクションの「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)の悪役レイヴェンは強烈だったし、ヴェトナム戦争映画「プラトーン」(Platoon・1986・英/米)も強烈だった。さらに「処刑人」(The Boondock Saints・1999・加/米)の女装捜査官は圧巻だったし、吸血鬼映画「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(Shadow of the Vampire・2000・英/米ほか)も衝撃的だった。最近ではSFヴァンパイア映画「デイブレイカー」(Daybreakers・2009・豪/米)や、オーストラリアの大自然ハードボイルド「ハンター」(The Hunter・2011・豪)に出ている。

 その娘のソラはサマンサ・モートン。ケイト・ブランシェットのハマり役の続編「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏/独)でスコットランド王女メアリーを演じていた人。じわじわと怖いミステリー「Jの悲劇」(Enduring Love・2004・英)ではダニエル・クレイグの芸術家の恋人役を演じていた。トム・クルーズのSF「ママイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)では予知能力者の1人を演じていた。まさかの配役。

 サーン族のマタイ・シャンはマーク・ストロング。まう今や悪役といえばこの人という感じになってしまった。痛快アクション「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)や大ヒット作「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独/英)なんかはハマり過ぎ。もうこの人が出ると悪役としか思えない。

 他にもヘリウムの国王に実話の復讐劇「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)のキーラン・ハインズ、その右腕カントス・カンに「バイオハザード」(Resident Evil・2002・英/独/仏)のジェームズ・ピュアホイ、ゾダンガの皇帝サブ・サンに「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)のドミニク・サンが出ている。

 原作は「ターザン」シリーズや「金星」シリーズ、「ペルシダー」シリーズなどでしられるエドガー・ライス・バローズの「火星のプリンセス」。ボクも高校のころ夢中になって読んだ。ハマる作品。

 脚本は、監督も兼ねたアンドリュー・スタントン、マーク・アンドリュース、マイケル・シェイボンの3人。マーク・アンドリュースは脚本よりストリーボード・アーティストとしての仕事の方が多い人で、劇場長編映画の脚本は本作が初。「メリダと恐ろしの森」(Brave・2012・米)では監督を務めているらしい。マイケル・シェイボンは2001年に「カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険」でピューリッツァ賞を受賞した人。脚本としては「スパイダーマン2」(Spider-Man 2・2004・米)の原案を担当。そんなわけで、脚本に慣れていたのはアンドリュー・スタントンだけだったようだ。

 そのアンドリュー・スタントンはピクサー・アニメの大ヒット作「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)から多くの脚本を手がけていて、「バグズ・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)や「ファインディング・ニモ」(Finding Nimo・2003・豪/米)では監督もやっている。アニメでは絶対的ヒットメーカーだが、単独監督の「ウォーリー」(WALL・E・2008・米)は、少し落ちたかも、そして実写……勝手が違うのか……。次作はアニメらしい。

 公開3日目の3D上映初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。30分くらい前に着いて、下でコーヒーを飲んでから15分前くらいにロビーに上がってトイレへ。10分前くらいに開場となって場内へ。入口で渡された3Dメガネが変わっていて、ちょっと軽くなったかも。でも眼鏡を掛けたら暗いのは変わらない。しかも、ときどきメガネの横が赤く光って驚かされる。

 ほとんど中高年で、やはり「火星のブリンセス」を読んだ世代か。女性は2〜3割くらい。ただ下はジジに連れられた小学生くらいの男の子もいた。607席に3割ほどの入り。これはすぐ小さな劇場に落とされるかも。うむむ……。

 ほぼ暗くなって始まった予告で気になったのは……とにかくタイトルと公開日が最後に出るだけなので覚えられない。もっと早く出せ。何のための予告なのか……「幸せの教室」はアクションも事件もないようだが、面白そうな雰囲気が一杯。見たらハッピーになれそうな予感が。

 3Dメガネを掛けるように指示があって……キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ハルク、ブラック・ウィドー、ホーヘクアイ、ソーそして司令官のニック・フューリーが登場する「アベンジャーズ」は、立体感もそこそこあった。とにかく絵がスゴイ。空飛ぶ空母かあ。8/17公開。

 スクリーンが左右に広がってピクサーの「メリダとおそろしの森」は日本語の予告。暗い絵なので、場内に明りがあって3Dだと暗くて見にくい。色がきれいで、立体感も良く出ていた。ただ、予告編の短いカットつなぎは3D上映には向かない。目が回る。「トイ・ストーリー」と「カールじいさんの空飛ぶ家」の2編の短編が付くらしい。7/21公開。


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