THERMAE ROMAE


2012年4月28日(土)「テルマエ・ロマエ」

2012・フジテレビ/東宝/電通/エンターブレイン・1時間48分

日本語字幕:ゴシック体下/シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://www.thermae-romae.jp/index.html
(全国の劇場リストもあり)

西暦128年、古代ローマの浴場設計技師のルシウス(阿部 寛)は、新人の設計技師に押され人気が下がっていた。そして、浴場内でレスリングをしたり、売り子がいたりして、ちっともくつろげない現状を憂いていた。そんなある日、ルシウスは浴槽の底にあった穴から吸い込まれ、現代日本の銭湯にタイム・トラベルしてしまう。そこで、のれん、ペンキ絵、鏡、手おけ、フルーツ牛乳などを見て衝撃を受け、ローマへ戻った彼はそれを再現し、大好評を得る。

70点

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 うーむ……。たぶん、原作を知っている若い人にはウケるのではないだろうか。実際、隣に座っていた若い女性2人はかなり笑っていた。しかし、劇場全体では、笑っているのは一部のみ。それも、ぼちぼちといったところ。これはちょっと辛い。

 印象としては、TV世代の映画という感じ。映画としての文法より、TVの文法を優先したのではないかという気がする。右上に〈BILINGUAL〉と出たりするのだから。

 漫画では成立するし面白いが、それを実写にしても面白いとは限らない。成立しないことさえある。たとえアニメになって成立しても、実写で成立しないものもある。本作はアニメ化もされた大ヒット漫画が原作だが、それをほとんど知らないボクのような観客には、成立しなかった。アリ、ナシなら「ナシ」。

 CGを使ったビジュアル効果もたくさん使われているが、良いのはローマの町並みの再現だろう。ローマの浴場にも使っているかもしれない。それらは本当に素晴らしい。反面、浴槽の穴を抜けてタイム・トラベルするシーンはチープ。狙いかもしれないが、マンガチック。しかも実際の水の中で撮影しておらず、スローモーションと風を使ったドライ・フォー・ウェット撮影もバレバレ。

 ローマ人たちは普通に日本語で話しているが、もちろんアフレコで、それが役者の口の動きと合っていない。TVはともかく、映画は大きく映し出されるのでそれが目立ってしまう。日本にやって来ると、日本人は日本語だが、日本人にしか見えない役者がいきなりラテン語を話して字幕が付く。いくら濃い顔の役者を集めたとは言え、外国人に交じれば日本人にしか見えないのだから、この辺もピンと来ない。それに、最初の日本の銭湯に登場する老人を中心とした登場人物たちの演技が、いかんともしがたい。学芸会じゃないんだから……。唯一ローマ人っぽく見えたのは、ルシウスの友人のマルクスを演じた勝矢くらい。

 主演の阿部寛は、コミカルな役も演じられる二枚目だが、特に良かったのはTVの「トリック」(2000・日)シリーズだろう。上田次郎はハマり役だと思う。映画では「大帝の剣」(2006・日)が、これまたコメディだが、良かった。そして最近では「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」(2011・日)にも出ているが、やっぱりコメディ系の方がいい気はする。外見とのギャップが良いのだろうか。

 濃い顔の役者として市村正親、北村一輝、宍戸開が出ているが、日本人にしか見えない。全員外人さんで良かったのでは。ただマルクスの勝矢はハマっていた。Vシネマに良く出ているようで、映画では女座頭市の「ICHI」(2008・日)や「あしたのジョー」(2010・日)に出ているようだが、見ていないのでわからない。日本映画でも外人っぽいのだろうか。

 良かったのはプロ・デビューを目指す若手漫画家の山城真美を演じた上戸彩。ズーズー弁はまったく似あわないが、ちょっとだらしないような感じは意外に説得力があった。ただ、どうしてもCMの白戸家のイメージが強く、その延長のような気はした。映画の印象としては「あずみ」(2003・日)が強い。あとは映画に出ていたかという感じ。

 原作はヤマザキマリの同名漫画。「月刊コミックビーム」に不定期連載されたそうで、「マンガ大賞2010」と「第14回手塚治虫文化賞短編賞」を受賞。その売り上げはシリーズ累計500万部以上というからスゴイ。なんと夫がイタリア人。それでローマか。現在はシカゴ在住なんだとか。

 脚本は武藤将吾。TV版の「電車男」や「花ざかりの君たちへ」、「シバトラ」などフジテレビ系のドラマを手掛けている。映画は三池崇監督のバイオレンス「クローズZERO」(2007・日)、小栗旬が監督して話題になった「シュアリー・サムデイ」(2010・日)など。

 監督はフジテレビ社員の武内英樹。「ナースのお仕事2」(1997・日)や「電車男」(2005・日)、「のだめカンタービレ」(2006・日)などを手掛けている。ザ・テレビジョンドラマアカダミー賞の監督賞を4回受賞しているという。だからTVはお手のものなのだろう。

 実は、見る気はなかったのだが、他に見たい作品もなく新宿の劇場のポイントがあったのでポイントで金曜に予約。失敗してもあまり惜しくはない、かなと。

 舞台挨拶がなかったので、公開初日の初回、30分前くらいに着いてエントランスでコーヒーを飲んでからロビーに上がり、トイレに行って待っていると15分前くらいに開場。観客層はTV系らしく20代くらいから中高年まで幅広かったものの、中高が多かったのは意外。下は小学校高学年くらいの女子。男女比は3.5対6.5くらいで女性が多く、最終的には607席に6割くらいの入り。やっぱりTV系はお客が入るんだ。しかも、最近の興行成績ベスト10を見ると、ほとんど邦画という状態。そういう時代か。

 半暗で始まった予告で気になったのは……上下マスクの「ひみつのアッコちゃん」は新予告というか映像付き予告に。予告を見た限りはちゃんとしっかり映画として作っている雰囲気。大人が楽しめるものになっているような予感。どうだろう。9/1公開。

 上下マスクの「ヘルター・スケルター」は最初にタイトルが出てわかりやすく覚えやすく、良かったのだが、どうにもそそられるものが……7/14公開。

 上下マスク「ブレイブハーツ海猿」はジャンボ・ジェットの尾翼部が爆発するところから始まる刺激的なシリーズ最新作。これは見たい。7/13公開。

 まだ本編開始ギリギリになってケータイをチェックしてるヤツがいる。信じられない。場内に入る前にやれ。暗くなると液晶の明りがまぶしいほどで目立ってしようがない。悪いと思っている節がなく、堂々とやっている。マナーもへったくれもあったもんじゃない。呆れるしかない。


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