Uchuu Kyoudai


2012年5月5日(土)「宇宙兄弟」

2012・東宝/講談社/電通/トライストーン・エンタテイメント/TOKYO FM/毎日新聞社/日本出版販売/YAHOO! JAPAN/ファミマ・ドット・コム・2時間09分

日本語字幕:丸ゴシック体下/ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://www.spacebrothers-movie.com/index.html
(全国の劇場リストもあり)

2006年7月9日の夜、南波六太(なんばむった、小栗旬)と南波日々人(なんばひびと、岡田将生)の兄弟は、ひときわ明るく輝いてジグザグに飛び月へと消えるUFOを目撃する。そして共に宇宙飛行士になって宇宙を目指そうと約束する。2025年、アメリカNASAで月面での長期滞在実験をするため宇宙船アルテミスの打ち上げが決定。その乗組員の1人に、世界最年少の宇宙飛行士で、日本人の日々人がいた。同じ頃、コンセプト・カー・デザイナーの六太は上司とのトラブルで会社をクビになる。そして、そこへJAXA(宇宙航空研究開発機構)から5年ぶりに行われた宇宙飛行士採用試験の書類審査合格の通知が届く。それは弟が兄に約束を果たしてもらうため勝手に申し込んでいたものだった。六太は心を決め、本気で宇宙飛行士採用試験に挑むことにする。

73点

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 よくできた物語。兄と弟の関係を実にさわやかに描き、気持ちが良い。明らかなコメディの「テロマエ・ロマエ」より笑えたし、楽しめた。実に休日というか祭日向きの。こどもの日向きの映画ではないだろうか。子供は宇宙を目指したくなるかも知れないし、大人も、アポロ11号の月面着陸を見た時の興奮を懐かしく思い出すかも知れない。デート・ムービーとしても、見たあと話が弾むはず。

 兄は弟の手本であり、目標でありながら、いつしか弟への劣等感になり、それでもふてくされて生きていない。よく見学に来ていた兄弟のことを知っているJAXAの人たちもその辺のことを知っており、暖かいまなざしを向けている。

 原作を読んでいないのだが、兄弟の両親は存在感が薄く(母役の森下愛子には驚かされたが)、笑いのために出てくる感じで、アクセント程度。本来なら兄弟のことを知り尽くし、差が開いてしまったことに心を痛めていたり、宇宙へ行くことに不安を感じていたりするはずが、その辺はバッサリと省かれている。

 興味深いのは、会社の面接もそうだが、宇宙飛行士採用試験の意味のなさそうな質問、課題、非人間性といったものがじっくりと描かれていること。実際、現実社会でもそれにどんな意味があるのか、ただのいじめではないのかと思う質問やテストは良くある。だから食い足りなく感じたのは、最終試験で非人間的な課題を与えておきながら、その後をフォローしていないこと。受検者同士どう関係を修復したのか、また管理側と受験者との関係は悪くなっていないのか、など気になる。

 同様に、クライマックスの危機からの脱出をごくさらりとひと言で片づけてしまっているが、あそこまで引っ張って描いたのなら、ちゃんと解決も描かないと非常にバランスが悪い。

 また、宇宙というか月の表現があまり科学的でないところも気になった。本当に合っているのか。あえて雰囲気先行で無視したのか。科学的リアリティの必要ない作品という判断か。月は重力が地球の1/6(もっと強いという説もあるが)。YouTubewでもスローモーションのように動く映像や、大きな石を軽くけっている映像を簡単に見ることができる。なのに、負傷した相棒を担ぐ感じは実に重そうだし、砂はさらさらと落ちるし……地球が巨大に見えるし……これだって、比較的最近JAXAが高解像度映像を公開していて、こんなに大きく見えないことは多くの人が知っている。

 主役の南波六太役は小栗旬。TVドラマ「GTO」(1998)のレギュラーを経て、同じくTVドラマ「花より男子」(2005)でブレイク。映画「クローズZERO」(2007・日)や「TAJOMARU」(2009・日)で存在感を見せた。「シュアリー・サムデイ」(2010・日)では監督にもチャレンジし、最近はTVドラマの映画化「荒川アンダーザブリッジTHE MOVIE」(2011・日)にカッパの村長役で出ていた。

 弟の南波日々人役は岡田将生。TVドラマ「花ざかりの君たちへ イケメン♂パラダイス」(2007)で小栗旬と共演。その後「告白」(2010・日)や「重力ピエロ」(2009・日)、「プリンセストヨトミ」(2011・日)など話題作に続けて出演。NHKの大河ドラマ「平清盛」(2012)ではナレーションを務めている。

 宇宙飛行士候補、関西人の古谷やすし役は東京生れの濱田岳。TVドラマ「3年B組金八先生(第7シリーズ)」(2004〜2005)から注目を浴びるようになったそうで、映画では奇異な役を演じた「鴨川ホルモー」(2009・日)や心優しきシリアル・キラーを演じた「ゴールデンスランバー」(2009・日)が良かった。独特の味とリズムを持っている。最近は「ロボジー」(2011・日)に出ていた。

 ひねくれた感じが抜群だったのは、溝口大和役の新井浩文。「告白」で岡田将生と共演しており、「一命」(2011・日)でも嫌らしい役をやっていた。嫌らしさの出し方が実にうまい。見ていないが、つい最近「ライアーゲーム -再生-」(2012・日)に出ていたらしい。

 本物の宇宙飛行士としては、バズ・オルドリンと野口聡一が本人役で出演している。

 原作は「モーニング」(講談社)連載の同名漫画で、作者は小山宙哉。4月1日からは読売テレビ・日本テレビ系で、毎週日曜朝7時TVアニメが放送中。

 脚本は監督もやる大森美香。TVドラマ「カバチタレ!」(2001)ですでに「モーニング」(講談社)連載の漫画を脚本化している。NHKの朝の連ドラ「風のハルカ」(2005)も手掛けるなど活躍。映画では「デトロイト・メタル・シティ」(2008・日)や「カイジ 人生逆転ゲーム」(2009・日)を書いている。このあと「映画ひみつのアッコちゃん」(2012・日)も書いているらしい。

 監督は森義隆。公式サイトによると、TVの「世界ウルルン滞在記」や「ガイアの夜明け」などのドキュメンタリーに関わり、劇場用長編映画デビュー作の「ひゃくはち」(2008・日)が高く評価され、各賞を受賞。原作者からのラブ・コールで本作へとつながったらしい。次の作品もヒットさせたら本物ということになるだろうか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。実は見る予定はなかったのだが、GWは新作公開が少なく、ポイントがあったのでそれを使用。GWでなのか、心配していた舞台挨拶はなかったが、金曜の時点でほとんどの席が売りきれ。こんな事はなかなか無い。GWだからって誰もが行楽って訳ではないと思う。公開本数が少ないGW、逆にチャンスなのではないだろうか。

 12〜13分前くらいに開場。こどもの日だからか、小学生低学年くらいから、上は中年くらいまで。メインは10代で、小学生から高校生くらい。男女比は4対6くらいで女性が多かった。イケメン2人が主役だからなあ。最終的には301席、ほぼすべてが埋まった。これは最近珍しいこと。ちょっと前はTVのドラマの延長が多かったけれど、最近は漫画原作か……。

 隣に汗臭い女が座って、すぐにメール・チェック。臭い上に、まぶしい液晶で、マナーも悪くてイヤだなあと思っていたら、ラストもエンド・クレジットなるや否やケータイを開いてメール・チェック。どうして外へ出るまで待てない? わずか2〜3分まっても何の支障もないと思うが。バカなのか? その上、2〜3席離れたところにおしゃべりな夫婦。予告が始まっているのにぺちゃくちゃ。本編が始まってもまだしゃべってた。うるさい。

 気になった予告編は、CM前にスペインのダーク・ミステリー「ブラック・ブレッド」の予告。面白そうなのだが、劇場が……。おしいなあ。6月公開。

 アメリカの観光CMが素晴らしいクォリティで驚いた。美しい映像。見入ってしまった。もう1回見たい。

 上下マスクの「ひみつのアッコちゃん」は面白そうな雰囲気。大人でも楽しめるのかも。でも、見るのには勇気がいるなあ。9/1公開。

 上下マスク「シグナル 月曜日のルカ」は内容が良くわからないが、なにやらミステリーっぽい雰囲気。映画館が舞台で、「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな内容か? 6/9公開。


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