Killer Elite


2012年5月12日(土)「キラー・エリート」

KILLER ELITE・2011・米/豪・1時間57分

日本語字幕:丸ゴシック体下、種市譲二/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.killer-elite.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

1980年、ダニー(ジェイソン・ステイサム)は相棒のハンター(ロバート・デ・ニーロ)とともに、メキシコで厳重な警備に守られたベンツを襲撃。ダニーはベンツの男を射殺するが、同乗していた幼い少年を撃つ事ができず、護衛たちの逆襲を受け危ういところをハンターに助けられ、どうにか現場を脱出する。限界を感じたダニーは引退を宣言、オーストラリアに戻り、ひっそりと暮らしていたが、ある日、一枚の写真が届く。そこには捕らわれの身となったハンターが写っていた。600万ドルの仕事に失敗し逃亡を図ったため、オマーンでクライアントの長老に捕まったという。ダニーがハンターに代わってその仕事をやり遂げなければ、ハンターを殺すという。しかたなくダニーはその仕事を受けるが……。

74点

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 実に怖いアクション映画。実話にインスピレーションを得て作られたらしく、余計に怖い。こういう世界があるんだ……。ほどよいスピード感と、手際の良いプロの仕事がリアルさを加えている。一歩の間違えば、普通のB級アクションになるところ、リアルで血なまぐさいヤバイ世界観をも描き込んだスパイ・アクション風に仕上がっている。素晴らしい演出力。

 ストーリー自体は複雑じゃない。オマーンで長老一族の息子たちを殺したイギリス特殊部隊のSASのメンバーへの復讐、それをプロが強制されて代行する。仕掛ける側もプロ、待ち受ける側もプロ。プロ対プロの戦い。最初は何が起こっているかわからなかった待ち受け側も、情報収集を行い次第に状況を把握し、そして形勢の逆転を図る。この辺が面白い。実話のスパイ・アクション「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)に通ずる部分がある。

 そして、通常はオマーン側が悪役で、イギリス側が良い役となるところ、残酷なまでにクールなSASの男スパイクを登場させることによって、観客が殺し屋側のダニーを応援しやすくしている。それでいて、想定外の出来事により予期しない展開を見せつつ、ちゃんとイギリス側を立てて、復讐は割に合わないという結論と、ダニーと彼女、そしてハンターたちの観客がこうあって欲しいと望む結末を納得できる形で描いて見せる。

 たぶん説得力があったのは、SASや殺し屋たちがプロっぽく見えたこと。本当にリアルなのかは別として、らしく見えたし、こんな事件もありそう。殺し屋たちは若干おおげさな雰囲気もあったが、SAS側は特にリアルだった。

 ダニーを演じたのはジェイソン・ステイサム。最近映画に出まくり。だいたいどれもハズレはない。ほんといい味を持っている魅力的な人。最近出ていたのはリメイクの「メカニック」(The Mechanic・2011・米)、暴力刑事を演じた「ブリッツ」(Blitz・2011・英/仏/米)など。このあとシルヴェスター・スタローンの「エクスペンダブルズ2」に出るらしい。イギリスのロンドン生まれなので、この物語のこの役は複雑な心境だったのではないだろうか。使っていた銃はベレッタM92SB、途中ぶっといサイレンサーも使う。そしてP226。

 ハンターはロバート・デ・ニーロ。なかなか良い役で、マイレル・マンの「ヒート」(Heat・1995・米)を彷彿とさせる射撃っぷり。「グッド・シェパード」(The Good Sheperd・2006・米)では監督もやっていたが、その後は小さい作品が多い印象。1943年生れだからもう70歳で、この動きはスゴイ。コメディも悪役も、ファンタジーでもアクションでも何でもOKの大ベテラン。使っていた銃はM4カービンの前身のモデル、ガリル、グロック、ガバメントなど。

 SASの恐ろしい男スパイクはクライヴ・オーウェン。「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)の殺し屋役からハリウッドに進出し、悪役も良い人役も演じるが、悪役はなかなか怖い。本作の雰囲気はちょっと「ザ・バンク 堕ちた巨像」(The International・2009・米/独/英)にも似ている感じ。使っていた銃は、SASの制式装備だったブローニング・ハイパワー(映画では近代版のMk IIIだったが)。ハンマーが起きていないことが何回かあった。

 ダニーの幼なじみの美女、アンは本当にオーストラリア出身のイヴォンヌ・ストラホフスキー。人気TVドラマ「CHUCK/チャック」でCIAのサラ・ウォーカーを演じ、現在5シーズン目。

 ダニーの協力者で元SASのデイビスはドミニク・パーセル。ヒゲを伸ばして、オールバックにしているので実に怪しげだが、「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)や「ブレイド3」(Blade 3・2004・米)で悪役を演じていた人。人気TVドラマの「プリズン・ブレイク」では主人公の兄を演じていた。雰囲気が全く違うところがスゴイ。

 インスピレーションを得た本は本元SASで、冒険家のラヌルフ・ファインズの“The Feather Man”(「キラー・エリート」ハヤカワ文庫)。脚本はオーストラリア出身のマット・シェリング。本作の監督の友人で、2人で温めてきた企画らしい。コピーライター出身で、これが脚本家デビュー作。

 監督はゲイリー・マッケンドリー。コマーシャルの監督から短編で注目を集め、本作で劇場長編作品監督デビューを飾った。今後も注目したい。

 ほかに登場した銃器は、FAL、MP5、AK47、AKMSU、H&K P7、S&W M627など。ほとんどの射撃がダブル・タップになっているなど、プロっぽかった。ただオートマチックのスライドの引き方が良くなかったり、ハンマーが倒れたりしているところもあったが、これはしっかりした専門家を付ければ解決する問題だろう。

 なんでも劇中語られる「ボストン・ブレーキ」というのは有名な暗殺の手段で、ダイアナ妃の暗殺で使われたという説もあるのだとか。マイクロチップを使って車のハンドルとブレーキを制御するものらしい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待っていると12〜13分前に開場。中高年がメインで、若い人は少なかった。女性は1/5ほど。最終的に253席に8割くらいの入りは良い方なのでは。

 気になった予告編は……とにかく明るくて暗いシーンがよく見えない。確かに遅れてくるヤツは多いけれど、それは遅れてくるヤツの問題で、暗くても場内に入ったら動かずに1分ほど目をばちばちさせていればすぐに慣れて見えるようになるはず。昔はそんなの常識だったのに、今は遅れて来て平気で携帯をライト代わりに使って席探すからなあ。

 ……で、「MIB3」は新予告に。ちょっと内容がわかるようになってきた。5/25公開。

 アニメの「劇場版TIGER & BUNNY -The Beginning-」は、昔流行ったバディものの刑事ドラマっぽい雰囲気があって、ロボット系でもあるようで、面白そうだが、アニメ系の人が一杯くるんだろうなあ……。9/22公開。

 人体解剖模型の3D-CGアニメ「放課後ミッドナイターズ」は、1年くらい前に正体不明でティーザーというか不気味な予告をやっていた時の方が、絵のレベルが高かった。とても残念な印象。動きは良いんだけどなあ。ああいう仕掛けをやるのなら、本編はそれを超えないと……。残念。8/25公開。

 CGと実写によるアニメの予告というやり過ぎ感のある予告は「009 RE: CYBORG」。予告は別として本編は面白そうだが、やっぱりアニメ系の人が……。10/27公開。

 ほぼ暗くなってからアニメ「コードギアス 亡国のアキト」はいわゆるアニメという感じの作品。これはアニメ系の人の人に任せていいか。8/4公開。

 上下マスク「アメイジング・スパイダーマン」は新予告に。かなり内容がわかるようになってきた。意外とこれは面白いのかも。最初のティーザーはビルの間をターザンのように移動するだけで酷かったが。6/30公開。

 ニコラス・ケイジの新作「ハングリー・ラビット」は代理殺人ミステリーらしく、アクションもあって、なかなか面白そう。6/16公開。


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