Larry Crowne


2012年5月12日(土)「幸せの教室」

LARRY CROWNE・2011・米・1時間39分(IMDbでは98分)

日本語字幕:手書き書体風下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG13指定)

公式サイト
http://disney-studio.jp/movies/shiawase/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

離婚したばかりのラリー・クラウン(トム・ハンクス)はUマートで働くやり手の販売員。しかし、突然リストラのため、大学を卒業していないことを理由にこれ以上の昇進は望めないからと解雇を宣告される。子供はいなかったが家のローンもあり、再就職口を探すが50代の男にはなかなか見つからない。そこで、スキルを身に付けるため、コミュニティ・カレッジに入りスピーチと経済のクラスを受講することにする。しかし学生部長が「人生が変わる」と勧めてくれたスピーチのクラスは不人気で、開講ギリギリの人数。しかも講師は離婚の危機でアルコールに逃避し、やる気を失った女教授のテイノー(ジュリア・ロバーツ)だった。

73点

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 悲惨な話だが、明るく前向きに描いた楽しい映画。IMDbでは5.9点という評価ながら、笑えるし優しい気持ちになれる。ただ、問題はほとんど解決していないし、現実はこんなに甘くないということはある。それでも、見ている時はそう感じさせないところが良い。そして、こういう展開だって、前向きに取り組めばあるかもしれないと思わせてくれるところが良い。不景気な時にはこんな話が見たい。デートにも最適では?

 舞台となるのはアメリカのコミュニティ・カレッジで、日本の市民大学とは違う。2年制の大学で、地域の人たちに専門知識や技術を教えるものらしい。公立は学費も安いのだとか。通常は学士号は取れないようだ。

 学生となる主人公のラリー・クラウンも酷い状況だし、教える側の女教授のテイノーも酷い状況。かつての大卒の上司も結局はクビになってピザの配達をやることになる。なのに暗い話にはならない。それは多分にラリー・クラウンの明るい性格によるのだろう。さらに同じ大学に通う同級生、天真爛漫な感じの美少女タリアや、愉快な隣人ラマーといった脇役が楽しさをうまく醸し出している。この辺もうまい。

 痛快だったのは、ラリーがスマート・フォンを教室で使っていて、教授から「これはスマート・フォンと言うらしいが、使っているのはスマートじゃないようだな」といって取り上げるところ。確かにそのとおりだ。劇場内で点灯させるヤツらも同じ。スマートじゃない。外でやれ。

 そして、タリアが新しくお尻のちょっと上にタトゥーを入れるのだが、本人はかっこいいと思って入れた日本語が漢字の「醤油」。ラリーがそれを中国語だ(?!)と指摘し、ソイ・ソースの事だと言う。そして、後日、日本食を食べる時、「醤油」を発見して同じ文字でショックを受けるのが笑える。安直なブームをたしなめるというかいましめているのだが、中国語って……。

 トム・ハンクスは製作・脚本・監督・主演の4役。最近は製作が多いようで、「かいじゅうたちのいるところ」(Where the Wild Things Are・2009・米/豪/独)はイマイチ。「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Exyreamly Loud & Incredibly Close・2011・米)にも出ていたが、似たような印象。日本語タイトルも似ているけど。「天使と悪魔」(Angels & Demons・2009・米/伊)もイマイチな感じで、良かった最後は「ターミナル」(The Terminal・2004・米)かなあ。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(Charlie Wilson's War・2007・米/独)でジュリア・ロバーツと共演している。製作総指揮を務めたTVの大河ドラマみたいな「ザ・パシフィック」(The Pacific・2010・米)は地獄のような太平洋戦線が描かれていて、すごかった。

 テイノー役はジュリア・ロバーツ。こちらも大ベテランだが、最近はパッとしない感じ。「バレンタインデー」(Valentine's Day・2010・米)や「食べて、祈って、恋をして」(Eat Pray Love・2010・米)はいまひとつ。スパイ映画「デュプリシティ〜スパイは、スパイに嘘をつく〜」(Duplicity・2009・米/独)はまあまあ良かった感じだが、さすがにだんだんねじれた役になってきたのかも。年齢相応ということもあり、もう天真爛漫な役は難しいか。

 テイノーのダメ夫役はブライアン・クランストン。TVで活躍していたが「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)あたりから映画にも良く出るようになって、最近では壮絶アクションの「ドライヴ」(Drive・2011・米)で自動車修理工場のオヤジを演じていた。そしていまひとつだったSF「ジョン・カーター」(John Carter・2011・米)ではアメリカ陸軍の将校で、カーターを騎兵隊のメンバーとして採用しようとする男を演じていた。

 同級生の美女、タリアはググ・バサ=ロー。イギリス出身で、どこかで見たなあと思ったら、イギリスBBCのTVミステリー・ドラマ「ボーンキッカーズ 考古学調査班」(Bonekickers・2008・英)に出ていた人。もっと映画に出て欲しい。

 隣の陽気なオヤジ、ラマーはセドリック・ジ・エンターテイナー。音楽業界の恐ろしい裏側を描いたジョン・トラボルタの「Be Cool/ビー・クール」(Be Cool・2005・米)や、リアルなポリス・アクション「フェイクシティ ある男のルール」(Street Kings・2008・米)に出ていて、他にアニメの「マダガスカル」(Madagascar・2005・米)などの吹替が結構多い。

 脚本はトム・ハンクスの他にニア・ヴァルダロス。ニア・ヴァルダロスは女優で、脚本も手掛ける人。トム・ハンクスが製作を務めた「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」(My Big Fat Greek Wedding・2002・米/加)で脚本と主演を務めブレイク、「コニー&カーラ」(Connie and Carla・2004・米)でも主演と脚本を担当。一貫してコメディ路線ということのようだ。

 ちなみにタイトルのCROWNEは王冠のCROWNに近いが、道化のCLOWNとは1字違い。日本語だと3つとも一緒になる。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。1本目が終わってすぐ移動。10分前くらいに開場になって入場すると右隣の席のオヤジが、今吸ってきたばかりらしくタバコの強烈な臭いがぷんぷん。まだ煙が体にまとわりついていたのではないだろうか。吸わないこちらにはとてつもなく臭い。さらに左隣のおやじは靴を脱ぎ出すし、マナーとかエチケットとかじゃなく、日本の民度が低いということか。ケータイを点けて入ってくるヤツもいるし、奥の席なのに遅れてくるし……。

 若い人から中高年まで幅広く、男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多かった。最終的には81席に9割くらいの入り。埋まり具合は良いが、81席の超ミニサイズだからなあ。

 気になった予告編は……上下マスク「メリダとおそろしの森」は新予告。ちょっと内容がわかるものになってきた。風景などは写真のというか実写のようで、キャラクターがいわゆる人形のよう。まったく違和感はなく、動きも自然で、楽しそうな予感。7/21公開。

 上下マスクの「崖っぷちの男」は、サム・ワーシントン主演で、自殺願望の男がビルの植手時間を稼ぐ間に、相棒が強奪か何かする話らしい。面白そう。7/7公開。

 スクリーンが上下に狭まってシネスコになって本編へ。スプリット・スクリーンでUマートと主人公を写し出して始まり。


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