Abduction


2012年6月2日(土)「ミッシングID」

ABDUCTION・2011・米・1時間46分

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://missing-id.gaga.ne.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

高校のレスリング部に所属するネイサン・ハーパー(テイラー・ロートナー)は、プール付きの大きな家に住み、何1つ不自由なく育っていたが、過去に暴力事件を起こしたため、精神科医のベネット先生(シガニー・ウィーヴァー)のセラピーを受けていた。ある日、社会科の授業で、10ページのリポートを出すことになり、ひそかに思いを寄せる近所の幼なじみのカレン(リリー・コリンズ)とペアを組む。そして児童誘拐事件を調べていくうちに、誘拐された児童の写真と、成長したときの想像CG画像を掲載するサイトで自分そっくり写真を見つけ、自分の過去を調べ始める。実は、そのサイトはある組織が仕掛けたもので、すぐにロンドンにいるボス(ミカエル・ニクヴィスト)に連絡が行き、問合せのメールから住所を知られてしまう。そして、ネイサンが母親のマーラ(マリア・ベロ)に問いただしたその日、謎の男たちの襲撃を受ける。

73点

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 IMDbでは4.6点という超低評価。だけどボクは面白かった。ほとんどどこかで聞いたような、よくある話になっているが、それでもハラハラドキドキうまいこと最後まで見せる。仕掛けとしては意表を付く展開になるはずだが、ほとんど安心して見られる痛快活劇。最後も甘い終わりで、ハッピーで明るい気持ちに。アクションと高校生の恋、デート・ムービーとしては最適ではないだろうか。

 アクション映画の名シーンというか、名仕掛けをちゃんと取り込んで、見どころ満載。高校生の男女が主役でも、周りを有名俳優たちが固め、2人を盛り上げている。ありえない話だが、それが気にならなければ楽しめるはず。気になると……。

 まず両親がスパイ。これはコメディなんかによくある設定。「スパイキッズ」(Spy Kids・2001・米)はその最たるもの。両親や身内でなくても、身近な人がスパイというのは良くある。TVドラマの「CHUCKチャック」(2007〜2010・米)も似たようなもの。近所に美女の幼なじみが住んでいて、恋が始まって……青春ものの定番。さらに悪党に追われ、執拗な追跡を巧みにかわしながら逃げる。これはアクションの定番。そして007さながらに列車のコンパートメントの中での格闘。いろいろなところの監視カメラと、顔認識ソフト、携帯電話などを駆使しての追跡。これはTVドラマの「CSI」や「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)だろう。さらにはスタジアムでの取引。狙撃……「パニック・イン・スタジアム」(Two-Minute Warning・1976・米)も思い出される。そして、途中でわかってしまうが、指示していたCIAが悪者という「ボーン・アイデンティティ」(The bourne Identity・2002・米/独/チェコ)のような仕掛け。新しいのは冒頭の、社会科の課題をやることで両親が本当の親ではないと知るところか。

 1つ怖いのは、パソコンに付いているカメラを第3者に操作されて、こちらの映像が筒抜けになってしまうこと。ボクはカメラにシールを貼って塞いでいるが、「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でもチラッと描かれていたように、このカメラが誰かに使われてしまうのはあるんじゃないだろうか。

 ネイサンはテイラー・ロートナー。TVに出ていて、シリーズを追うごとに残念になっていく1本目「トワイライト〜初恋〜」(Twilight・2008・米)の狼族のジェイコブ役から劇場長編映画に出るように。このシリーズがなぜこんなにも続いているのかボクには理解できない。それで、出演者たちは皆ボクにとっては印象が悪い。テイラー・ロートナーも良くなかったので、本作の冒頭のバカな高校生ぶりは本当に腹が立った。しかし物語が動き出してからは、結構、応援する立場で見ることができた。やっぱり良い作品に恵まれないと、カッコ良くて演技力があっても浮かび上がることはできないということだろう。ちょっと今後が心配だ。使っていたノートPCは銀のMacBook Pro。

 幼なじみのカレンはリリー・コリンズ。濃い眉毛が印象的な美人で、なんと、あのミュージシャンのフィル・コリンズの娘なんだとか。5歳からアメリカで暮らしており、現在は大学生で、モデル、ライター、司会もやったりするらしい。サンドラ・ブロックの「しあわせの隠れ場所」(The Blind Side・2009・米)で劇場長編映画デビュー。ヴァンパイアSF西部劇「プリースト」(Priest・2011・米)ではさらわれた美少女を演じていたが、出番が少なく印象に残らなかった。本作ではなかなかの活躍ぶりで、このあとジュリア・ロバーツ版の「白雪姫」に白雪姫役で出ているらしい。ほかにも公開を控えている新作がプリ・プロ段階のものも含めて4本もある。今後が楽しみ。使っていたノートPCは黒のMacBook Pro。

 2人以外はだいたい顔見世的なちょい役だが、豪華。父は「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(Harry Potter and the Chamber of Secrets・2002・)シリーズのルシウス・マルフォイ役のジェイソン・アイザック。厳しい感じが抜群。母は、本作にちょっと似ている「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(A History of Violence・2005・米/独)のマリア・ベロ。襲撃に最初は怯えるが、スイッチが入ると猛然と戦うところが素晴らしかった。精神科医のベネット先生は「アバター」(Avatar・2009・米/英)のシガニー・ウィーヴァー。良い役だ。悪のボスは「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」(Mission: Impossible - Ghost Protocol・2011・米)でもテロリストだったミカエル・ニクヴィスト……という具合。

 脚本はミュージシャンでもあるショーン・クリステンセン。劇場長編映画の脚本は初めてらしい。ボクは悪くはないと思うけれど、全体として評価があまり良くなかったので、勝負は次だろうか。

 監督はジョン・シングルトン。「ボーイズン・ザ・フッド」(Boyz n the Hood・1991・米)の監督・脚本で劇場長編映画デビュー。アカデミー賞最年少監督賞候補になり、なおかつ初のアフリカ系アメリカ人監督候補にもなり、大注目された人。監督作品ではリメイクの「シャフト」(Shaft・2000・独/米)、人気シリーズ第2弾「ワイルド・スピードX2」(2 Fast 2 Furious・2003・米/独)、バイオレンス・アクションの「フォー・ブラザーズ/狼たちの誓い」(Four Brothers・2005・米)など。ちょっといまひとつな感じはあるが……。

 銃は、両親を殺すハゲ男が持っているのがルガーMkIIのヘビー・バレルのロング・バレル。サウンド・サプレッサーという設定になっていたようだが。応戦する父はワルサーP99シルバー・スライドのサウンド・サプレッサー付き。ちなみに黒服の怪しい男たちがペリカン・ケースで持ち込んだ機器のうちノートPCはDELL。さらに病院まで追いかけてくる男はルガー・レッドホーク。バージニアの父とおぼしき男の部屋の引き出しにあるのはP228。アムトラックの中で格闘となるとき殺し屋の男が持っているのはサウンド・サプレッサー付きUSP。CIAにハンバーガーをおごってもらっているときに襲ってくる男たちは、ポンプ・ショットガンとMP7、UMPを装備。スコープとサウンド・サプレッサーを付けたスナイパー・ライフルはEBR。CIAのSWATチームはM4カービン。アーマラーはウォルトなんとかとあったと思うが、読めなかった。IMDbには表記なし。

 珍しくフィルムはコダックではなくフジのみ。若干だが、斜体の掛かった文字はジャギーが見られ、気になった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。入口付近でコーヒーを飲んでからロビーへ行って、トイレなど準備していると15分前くらいに開場。だいたい若い人から中高年まで、結構幅広い客層。ただメインはやっぱり中高年。男女比は半々くらい。ジジイでも携帯のチャイムを場内で鳴らすとはねえ。最終的には、232席に3割ほどの入り。主役クラスが有名じゃないので、しようがないところだろう。

 下品なマナー広告の後、意味不明なマヨネーズのCMを経て、カッコいいアメリカ観光局のCMがあって……気になった予告編は、上下マスクの「リンカーン 秘密の書」は、ティム・バートンがプロデュースするティムール・ベクマンベトフ監督の3Dアクション。予告はものすごいアクション。おもしろそう。11/1公開。

 上下マスク「THE GRAY凍える太陽」リーアム・ニーソンの主演ながら、よくある旅客機墜落サバイバル物語。いまさらという感じだが、プロデューサーがリドリー・スコットとトニー・スコットの兄弟というのが気になる。しかも監督はジョー・カーナハン。墜落するのはマイナス20℃のアラスカ。面白いかも。8/18公開。

 上下マスクの「ダークナイト・ライジング」は新予告。ちょっと具体的になってきた。凄いアクション、凄い絵。とにかく予告だけで驚かされる。早く見たい。7/28公開。


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