We Bought a Zoo


2012年6月10日(日)「幸せへのキセキ」

WE BOUGHT A ZOO・2012・米・2時間04分

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(Arri、Super 35、OTTO)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG指定)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/sk/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

ベンジャミン・ミー(マット・デイモン)は6ヶ月前に妻を亡くし、反抗期の14歳の長男ディラン(コリン・フォード)と7歳の娘ロージ(マギー・エリザベス・ジョーンズ)を抱え奮闘していた。そんな時ディランは母を失ったショックから学校で4回目の問題を起こし、退学処分を受ける。ベンジャミン自身も、何を見ても妻を思い出し、何も出来なくなり、新聞の仕事も自分から辞めてしまう。このままでは心機一転を目指し、父の遺産で郊外の広い土地付きの家を買うことにする。ところが、その家には前のオーナーの遺言により2年前に閉園した付属のローズモア動物園も経営することという条件が付いていた。ベンジャミンは悩んだ揚げ句、購入を決心する。ところが、動物園は傷み放題、病気の動物もいて、開園するには相当な出資が必要で、しかも農務省の許可も得なければならない。いつしか資金は底をついてしまう。

78点

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 実話なのでとんでもない事件は起きないが、適度なユーモアと、リアリティのある家族関係と、ファンタジー的な従業員たちとの関係など、うまくドラマを盛り込んで、感動の物語を構築している。安心して見られるし、後味もとても良く、明るい気持ちで劇場を後にできる。家族で見たり、デートで見たりするには最適ではないだろうか。2回ほど泣きそうになってしまったが、そこがちょっとデートでは恥ずかしいかも。

 とにかく娘のロージーを演じたマギー・エリザベス・ジョーンズがキュート。危うい父と息子の関係も、経営者としての父と従業員との関係も、緊張を和らげる存在となっている。そして、主人公となるベンジャミンの人柄も、すぐに人と喧嘩するようなタイプではなく、ナチュラルで「良い人」なので、観客もみんな応援したくなる。そのへんのさじ加減がうまい。たまにキレて樽を蹴飛ばしたりするのだが、すぐに倒れた樽を治して、見ていた従業員たちに大丈夫と合図する。そういう人。従業員も良い人たちばかり。むやみに給料を払えとか、雇用を確保しろと迫らない。動物が好きだから残っている。1人、経理系の女性が中傷を始めるが、結局ベンジャミンに追い出されそうになっても残っている(たぶん)。

 小さなエピソードに作り方もうまい。たとえば娘に「ちゃんとパパができているかな?」と聞くと、「ハンサムだし、他のパパより毛があるから合格よ」と答え笑わせてくれる。また息子に「うまく人とコミュニケーションが取れない」だから「女の子とどう話していいかも、わからない。大事なことを聞き逃したようだけれど、恥ずかしくて訊けない」と言われると「20秒だけ勇気を持とう。たった20秒だけ恥をかくことだ」とアドバイスする。実は、それは昔、兄からアドバイスされたことなのだが。これは実際に使えるなあと。

 それでいて、安直な答は出していない。息子と父親は完全にわかりあえたわけではない。一歩が踏み出せただけ。しかし、若干甘い感じはするものの、解決して行けるだろうという希望がある。特に、ラスト、父が心の傷を乗り越えて、母と出会った店へ子供たちを連れて行って、出会ったときの話をするのは素晴らしい。日本人的にはできないと思うが、こういうふうに話せたら何と素敵なことだろう。隠すことなんてないはずなのだから。

 共通の敵の設定もうまい。農務省の検査官はまるで漫画のようなイヤらしい男だが、ちょっとしか出てこないので、ここまでエキセントリックにしないと伝わりにくいからだろう。共通の敵がいることで従業員と経営者は団結できる。これをクリアすると資金難に見舞われ、それもクリアすると今度は100年に1度と言う大雨にやられる。なのに、単なるお涙頂戴の暗い話にならない。そこがまた素晴らしい。

 日本語タイトルはわざとキセキなどカタカナを使っているが、「奇跡」と「軌跡」を掛けたものなのだろう。

 ベンジャミン・ミー役のマット・デイモン。ガンガン作品に出ているが、最近で良かったのは、コーエン兄弟のリメイク西部劇「トゥルー・グリッド」(True Grid・2010・米)とSFロマンティック・スリラー「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)か。良い人そうな雰囲気が本作でも効いている。

 長男ディランはコリン・フォード。どこかで見た顔だと思ったら、SFサスペンスの「PUSH光と闇の能力者」(Push・2009・米/加)で主人公の子供時代を演じていたらしい。TVでは「CSI:マイアミ」や「スーパーナチュラル」にも出ている。

 かわいい長女ロージはマギー・エリザベス・ジョーンズ。この子のかわいさが、厳しい状況でも救いをもたらしてくれる。2003年生れというから今年9歳。4歳から芸能活動をやっているという。2010年からTVに出ており、映画は本作の前にリメイク版の「フットルース(未)」(Footloose・2011・米)に出て、本作は2本目らしい。今後もしばらくはこの雰囲気で活躍してくれるだろう。

 従業員のリーダー、ケリーはスカーレット・ヨハンソン。まあ、なんときれいな人でしょう。でも、ライアン・レイノルズと離婚したんだとか。最近はメジャー作品が少なく、本作の前だと「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)くらいか。アート系では「それでも恋するバルセロナ」(Vicky Cristina Barcelona・2008・西/米)や「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl・2008・英/米)に出ている。

 従業員の中で最年少のレストラン担当、リリーはエル・ファニング。あのダコタ・ファニングの妹。つい最近J・J・エイブラムスの「SUPER 8/スーパーエイト」(Super 8・2011・米)に出ていた。姉妹そろって美しく、女優というわけか。

 ベンジャミンの兄ダンカンはトーマス・ヘイデン・チャーチ。「スパイダーマン3」(Spider-Man 3・2007・米)でサンドマンを演じていた人。つい最近だと、残念な「ジョン・カーター」(John Carter・2011・米)に出ていた。「スパイダーマン3」のセコイ感じと、本作の人の良さそうな感じ。違う人のようだ。

 原作は、本作の主人公、ベンジャミン・ミーの同名本。実際奥さんがガンでなくなり、イギリスの郊外にある動物園を買ったらしい。

 脚本は監督のキャメロン・クロウとアライン・ブロッシュ・マッケンナの2人。アラインは大ヒットした「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)や、見ていないが「幸せになるための27のドレス」(27 Dresses・2008・米)や「恋とニュースの作り方」(Morning Glory・2010・米)を書いている女性ライター。ロマンチック・コメディ系が得意ということか。

 監督はキャメロン・クロウ。脚本家から監督になった人で、脚本デビュー作は「初体験/リッジモント・ハイ」(Fast Times at Ridgemont High・1982・米)。トム・クルーズの「ザ・エージェント」(Jerry Maguire・1996・米)や「あの頃ペニー・レインと」(Almost Famous・2000・米)、再びトム・クルーズと組んでスペイン映画のリメイク「バニラ・スカイ」(Vanilla Sky・2001・米/西)、「エリザベスタウン」(Elizabethtown・2005・米)を監督、脚本。意外と間を開ける人のようで、本作は久しぶりの作品。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待って、20分前くらいにロビーへ。トイレなどへ行ったりして待っていると10分前くらいに開場。若い人から中高年まで割と幅広く、女性は若い人が多かった感じ。男女比は4.5対5.5くらいでやや女性が多かった。最終的には157席に8割くらいの入り。まあ箱が小さいから……。

 気になった予告編は……「一枚のめぐり逢い」は「きみに読む物語」(The Notebook・2004・米)的なラブ・ストーリーらしい。なんと6/16公開。近ッ!

 上下マスク「プロメテウス」は長いバージョンでの予告。とにかく凄い絵の連続。圧倒される。第1作の監督だけに、期待していいだろう。シャーリーズ・セロンが怖そう。アンドロイドらしい人もいるし。いやあ、楽しみ。8/24公開。

 しかし、遅れて着て、座るや否やケータイをチェックするか。まぶしいって。じゃま。マナーCMなんか、まったく役に立っていない。


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