Seeking Justice


2012年6月17日(日)「ハングリー・ラビット」

SEEKING JUSTICE・2011・米・1時間46分(IMDbでは105分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(with Panavision、デジタル、HDTV)/ドルビー・デジタル

(米R指定)

公式サイト
http://hungry-rabbit.com/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

ニューオーリンズの高校の国語教師ウィル(ニコラス・ケイジ)の、チェロ奏者の妻ローラ(ジャニュアリー・ジョーンズ)は、ある日婦女暴行常習者によって乱暴され、重傷を負う。病院に駆けつけたウィルに声を掛けてきたのは、サイモンと名乗る男(ガイ・ピアース)で、犯人はわかっていて、居場所もわかるという。正式な捜査と裁判を待っていたら1年以上掛かると。そして、後で簡単な仕事をやってくれれば、犯人を始末してやるという。ウィルは悩むが、OKしてしまう。すぐに犯人は射殺され、証拠の写真と妻の盗まれたネックレスが届く。警察は犯人が自殺と発表し、事件は解決する。半年後、サイモンからケータイに電話があり、ある性犯罪者の男の尾行を命じられる。ウィルがそれを実行すると、さらに、その男を自殺に見せかけて墜落死させるように命じられる。

73点

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 いわゆるB級なんだろうが、楽しめる。ずっと不安な感じが漂い、怖くて、ドキドキでヒヤヒヤ。観客が事件に巻き込まれたような感覚になる。さあ、どうする。前半は主人公が煮え切らない感じでイライラさせられるが、ことが動き出すと一気に引き込まれる。そして、考えさせられる。もし自分がこういう状況に追い込まれたとき、どのような選択をするか。映画の中でも「Choose」という言葉が際立たせてある。ただIMDbでは6.1と低評価。ボクはもっと良かったと思う。

 ただ、ラストにスパイスを利かせたかったのだろうが、最後の最後の結末は当然という感じで、多くの観客はむしろ、これをどうかいくぐるのか知りたいと思っただろう。組織の大きさがわからないものの、警察内にも学校内にもメンバーがいるくらいだから、大きいと考える方が自然なのに。とても個人で対処できる相手ではない。それをどうするか。個人の問題だけは解決する。そこが弱いというか、惜しい。むしろ事件の解決だけで終わり、スパイスは無かった方が良かったのでは。おかげでこの問題が目立つ結果に。

 実際、アメリカでは自分の身は自分で守るという考えが強いだろうから、こういう自衛組織はあってもおかしくないという感じ。ガーディアン・エンジェルの過激版。世界的にもグリーンピースやシーシェパードなどという団体がトラブルを起こしてニュースに出ているが、これをさらに過激にすれば本作のようになるかも知れない。そういう恐怖。ちょっとファンタジーの部分では日本の「必殺仕掛人」とか「必殺仕置人」という感じもあるかも。ヒッチコックの「見知らぬ乗客」(Strangers on a Train・1951・米)も交換殺人で、謎の男が実行するのに対して主人公が実行できなくてという話だった。

 1つ疑問なのは、組織には腕のいいプロの殺し屋らしい男たち(鍵のかかった家に苦もなく侵入できる追手)がいるのに、なぜヘマをやりかねないシロートたちに無理矢理、むずかしい仕事をやらせるのか、ということ。こうしないとウィルが簡単に逃げてしまえるからだろうが、この矛盾は辛い。追求すると映画自体が成立しないことになってしまうし……。

 主演のニコラス・ケイジは最近この手のB級映画がやたらと多いし、良く出ている。「魔法使いの弟子」(The Sorcerer's Apprentice・2010・米)は酷かったが(それでもIMDbでは6.1点)、「キック・アス」(Kick -Ass・2010・英/米)は抜群に良かった。近日「ブレイクアウト」が公開予定で、現在公開を待っている作品がアナウンスされただけのものも含めると9本以上。働くなあ。

 美人の奥さんはジャニュアリー・ジョーンズ。最近「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men:First Class・2011・米)のフロストや「アンノウン」(Unknown・2011・英/独ほか)に出ていたが、悪役がちょっと多いか。

 スキンヘッドの怪しい男はガイ・ピアース。売れすぎた反動からか、B級やアート系が多くなった気がする。最近でいうと「ザ・ロード」(The Road・2009・米)はめちゃくちゃ暗く、「英国王のスピーチ」(The King's Speech・2010・英)は話題になったものの、ホラーの「ダーク・フェアリー」(Don't Be Afraid of the Dark・2010・米/豪/メキシコ)は残念な結果に。でも今夏公開予定の超大作「プロメテウス」に出ているという。

 主人公の高校の同僚教師ジミーはハロルド・ペリノー。人気TVドラマ「LOST」(04〜07・米)のマイケルを演じていた人。

 最初の殺しで使われる銃はP230系ステンレス。レンジにはグロックもあるが、妻が護身用に買うのがS&Wのセンチニアル系ステンレス・リボルバー。そしてP229のシルバー、M92のシルバー、などが登場。だいたいシルバー系の銃が多いのは、監督の好みだろうか。「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgement Day・1991・米/仏)の義理の父役サンダー・バークレー演じる刑事がクロス・ドローでホルスターを腰に吊っていたのはちょっとどうなのか。そして、妻がエスカレーターの上から下にいたヤツをP230かP232で撃つが、あんなにうまく当てられるかどうか。

 原案は、脚本も兼ねたロバート・タネンと、トッド・ヒッキーの2人。ロバート・タネンは日本未公開の「Even Money」(2006・米/独)の脚本を手掛けたあと本作へ。トッド・ヒッキーは撮影監督で、原案は始めて。うむむ。

 監督はロジャー・ドナルドソン。メル・ギブソンの帆船アクション「バウンティ/愛と反乱の航海」(The Bounty・1984・英/米)や、ケヴィン・コスナーのリメイク「追いつめられて」(No Way Out・1987・米)、トム・クルーズのバーテンダー映画「カクテル」(Cocktail・1988・米)、エロティックSFホラー・シリーズの第1作「スピーシーズ/種の起源」(Species・1995・米)、IMDbの評価は低いようだが火山パニックでは一番面白かったピアース・ブロスナンの「ダンテズ・ピーク」(Dante's Peak・1997・米)、キューバ危機を描いた「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)、感動の実話アンソニー・ホプキンスの「世界最速のインディアン」(The World's Fastest Indian・2005・ニュージーランド/米ほか)、謎に包まれた銀行破りの実話ジェイソン・ステイサムの「バンク・ジョブ」(The Bank Job・2008・英/米)など、とにかく話題作やスター作品が多い。また実話系も多い。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定。金曜に確保しておいて30分くらい前に付いたが、1Fの入口付近にインターネット予約の発券機が数台あって、ビルに入るところから混む。さらにエレベーターが小さくてここでも混む。意外とロビー(チケット売り場)は混んでいない。なおかつ、座るところが極端に少ないので、立って待つしかない。どうなんだろう。

 10分ほど前に開場となって、上へ上がるエスカレーターに。すでにCMが始まっていたが、これが酷いピンボケ。どうもだれも映写室からチェックしていないらしい。ボクはてっきり今どきの映写式はレーザーなどを使って自動ピント合わせしているのかと思ったが、そうではなかったらしい。気持ち悪くなるようなピンボケはずっと続き、結局予告もピンボケ、字幕も読めないくらい。これはお金を払ってCMを出している会社は訴えてもいいのではないだろうか。スクリーンが左右に広がって海賊版防止CMになってやっとピンが来た。よかった……このまま本編へ行くのかと思った。カップホルダーはびちょびちょだし、床にドリンクがこぼれていてベトベトだったし、劇場はもっとちゃんとチェックをした方が良いと思うなあ。ヒドイ。呆れた。

 観客層は若い人から中高年まで、比較的幅広い。男女比はほぼ半々くらいで、最終的には228席に6割くらいの入り。まあまあなのではないだうか。

 ピント、ボケボケの字幕も読めない予告で気になったのは……またまたリュック・ベッソンのアクション「コロンビアーナ」は殺し屋として育てられた美女というアクションにありがちなもの。ただ、主演がゾーイ・サルタナで、アクションも本格的でカッコいいようなので、見ても良いかも。9/1公開。

 アニメ「コードギアス亡国のアキト」はこれまたアクション満載で、ファン待望だろう。混みそうだ。ただボクのように初めて見てみようかというような者、オヤジには近寄りがたいものがある。

 上下マスクの「ブレイクアウト」はまさかのニコラス・ケイドとニコール・キッドマンの顔合わせ。裕福な家庭が強盗に襲われ、仮面夫婦の実態が暴れて行くらしい。面白そう。ジョエル・シューマーカー監督なのに、なんだかB級の扱いだが……予告も遅い。6/23公開。


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