Trespass


2012年6月24日(日)「ブレイクアウト」

TRESPASS・2011・米・1時間31分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(レンズ、Hawk Scope、Arri)/ドルビー・デジタル

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://breakout-movie.com/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

ダイヤモンドの仲介業者のカイル・ミラー(ニコラス・ケイジ)は、ポルシェを乗り回し、森の奥の豪邸に、美しい妻サラ(ニコール・キッドマン)と、高校生の一人娘エイヴリー(リアナ・リベラト)と住んでいる。しかし最近はダイヤの取り扱い件数が減り、妻とも疎遠になりがち、娘は反抗期で手に負えない状態で、家族崩壊の危機にあった。そんなとき、警官を装った4人組の強盗が押し入ってくる。壁の隠し金庫に入れているダイヤを渡せと要求されるが、カイルはきっぱりと断る。

73点

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 IMDbでは5.2点という低評価。でもほとんどずっとハラハラドキドキで引き込まれた。このへんはうまい。ほとんど1シチュエーションで、登場人物もわずか。まるで舞台のような構成ながら、緊張感を保ったままクライマックスへと至る。

 ただ、裏切りやウソ、虚飾、仮面夫婦、不貞、親子の断絶、麻薬、暴力……ネガティブな事柄がこれでもかと盛り込まれていて、うんざりするような気分になる。それらのいくつかは本当ではないらしく、誤解はとけるものの、この結末は……。バッド・エンディングではないが、どう考えても、このあと家族が幸せに暮らせるとは思えない。大金持ちから、一文無しに真っ逆さま。このギャップに耐えられるだろうか。仮に夫の保険金が出たとしても、妻と娘はいままでのようには暮らして行けないだろう。暮らして行けるだけでもありがたいことだが。

 この種の映画で大事なのは、悪役。どれだけ怖くて、リアリティがあるか。本作は最初、ちょっと半端な感じがするのだが、徐々に犯人像がわかってくると怖くなってくる。異常な感じ。

 ちょっと残念だったのは、字幕からだけの理解ながら、はたして夫は本当に家族のことを考えていたのかどうかという点。詳しく書くと楽しみが薄れてしまうので書けないが、映画は夫の口から語らせるだけで、本当かどうかは描いていない。同様に、妻は不貞を働いていたのか、十分思わせぶりだが、はっきりとはわからない。原語とか吹替版ならその辺のニュアンスがわかるのだろうか。不良そうな娘が一番まともというか、普通か? それが狙い? それともセレブはみんなこんなもんだという、やっかみ的表現?

 そして、警備会社がいい加減すぎ。アメリカの警備会社ってこんな感じなのだろうか。日本の場合は、間違いでも警報を鳴らすと、自動的に数分で警察のパトカーがやって来てしまう。もう鳴らした人は平謝りするしかない。警備会社へ電話を入れてももう手遅れ。それだからこそお金を払う価値があるわけだし、安心できる。それに対して、この警備会社の酷いこと。これは映画の設定だからだと思うが、たいていのハリウッド映画で警備会社はあまり頼りにならない。

 それと、ハリウッド映画に限らず、多くの映画で共通だが、銃で足とか撃たれているのにみなかすり傷程度のダメージで、そのあと格闘したりしていること。もっと七転八倒したり、顔色が悪くなったり、動けなくなったり、重傷なのではないだろうか。しかも本作では手をつぶされ、しまいには腹まで撃たれているのに……。

 面白かったのは、主人公のダイヤ専門かが言うセリフで、ダイヤはすべてレーザーで刻印が入れてあり、そのまま取引するとすぐに誰のところのものかバレるから、カットし直さなければならないというもの。それを計算に入れると、そのままでは高く売れないぞと。そうなんだ。そりゃそうだよと納得。

 登場した銃は、強盗たちがUSP、グロックのシルバー・スライド、ストックなしのオート・ショットガン、P229を使う。

 カイルはニコラス・ケイジ。とにかく良く映画に出ている。経済的に厳しいという噂も出たから仕事を精力的にやっているのかも。そのほとんどがいわゆるB級だが、ときどき拾い物がある。ボク的には「NEXT-ネクスト-」(Next・2007・米)、「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)が面白かった。「ノウイング」(Knowing・2009・米/英/豪)は次席というところか。つい最近「ハングリー・ラビット」(Seeking Justice・2011・米)に出ていたばかり。公開を控えている作品は、噂の範囲まで含めると10本ほどもある。出過ぎじゃないの?

 妻のサラはニコール・キッドマン。どうも最近芳しくない感じ。「奥様は魔女」(Bewithed・2005・米)あたりから良い作品に恵まれていない。とくに酷かったのはハリウッド大作の「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(The Golden Compass・2007・米/英)だろう。ボク的には「オーストラリア」(Australia・2008・豪/米/英)も良かったが、批評家の評価はイマイチだったらしい。そんなこんなで、いよいよB級へ流れて来たか。

 一人娘エイヴリーはリアナ・リベラト。TVの「コールド・ケース」や「CSI:マイアミ」、「ドクター・ハウス」などに出ていて、映画は本作の他に2本出ているが、いずれも日本劇場未公開。本作が日本でのスクリーン・デビュー作になる。それでも公開が控えている作品が3本あり、人気が出てくるかも。

 強盗のリーダーはオーストラリア出身のベン・メンデルスソーン。「オーストラリア」でニコール・キッドマンと共演し、「ノウイング」でニコラス・ケイジと共演している。近作はジェイソン・ステイサムの「キラー・エリート」(Killer Elite・2011・米/豪)。

 その弟はカム・ジガンデイ。恋愛吸血鬼映画「トワイライト〜初恋〜」(Twilight・2008・米)に出ていた人で、そのあとクリスティーナ・アギレラのミュージカル「バーレスク」(Burlesque・2010・米)やSF吸血鬼アクション「プリースト」(Priest・2011・米)に出ている。

 お目付け役の大男はダッシュ・ミホク。ミリタリー・ミステリーの「閉ざされた森」(Basic・2003・米/独)に出ていて、アクションの「パニッシャー:ウォー・ゾーン」(Punisher: War Zone・2008・米/加/独)以降はTVが多くなった感じ。悪役もイケるが、コミカルな役もイケる。もっと活躍しても良い人だと思うが。

 脚本はカール・ガイジュセクー。公式サイトではジェイソン・ステイサムの「メカニック」(The Mechanic・2011・米)やリーアム・ニーソンの「アンノウン」(Unknown・2011・英/独ほか)の脚本を手掛けたとあるが、IMDbには記載はない。手掛けたが、クレジットされなかったのかもしれない。そうだとすれば、アクションが得意な人かもしれない。すでに新作が2本控えている。

 監督はジョエル・シューマカー。ハリウッドでは衣装デザインからキャリアをスタートさせ、監督デビュー作は「縮みゆく女」(The Incredible Shrinking Woman・1981・米)。その後ティーン・バンパイアの「ロストボーイ」(The Lost Boys・1987・米)や臨死体験の恐怖を描いた「フラットライナーズ」(Flatliners・1990・米)を手掛け、トップ監督に名を連ねるようになる。しかし近年はミュージカルの「オペラ座の怪人」(The Phantom of the Opera・2004・英/米)以降パッとせず、年を取っちゃったせいかなあと思っていたら、まだまだアクションもイケるらしい。異常犯罪を描いた「8mm」(8MM・1999・米/独)でニコラス・ケイジと仕事をしている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分前くらいに着いて、コーヒーを飲みながら待っていると15分前くらいに開場。ほぼ中高年で、最初は男性が15人くらいの、女性が2人。ぽつぽつと人が増えて行き、最終的には149席の9割くらいが埋まった。これはちょっと意外。

 気になった予告編は……場内が明るいまま、なんだか暴力と汚い言葉満載という感じの「闇金ウシジマくん」は漫画が原作らしい。TVもやっていたようで、再放送があるんだとか。8/25公開。

 上下マスクの「放課後ミッドナイターズ」は新予告に。骸骨たちとダンスを踊るミュージカル・パターン。かなり面白そうだが、アニメ・ファンが大勢来て、混みあって、異様な雰囲気になるような気がして、いまいち踏み出せない。うむむ。8/25公開。

 半暗になってからの「鍵泥棒のメソッド」は売れない貧乏役者と、記憶喪失の殺し屋がぶつかって中身が入れ替わってしまうという、コメディに良くあるパターン、はたしてそれを覆してくれる面白さなのか? 9/15公開。

 とにかく、予告が始まったら早く暗くして欲しいのと、場内でケータイを付けるなと。ジジイも平気でケータイを操作している。まぶしいって! 外でやれ。


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