Les contes de la nuit


2012年7月1日(日)「夜のとばりの物語」

LES CONTES DE LA NUIT・2011・仏・1時間24分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松岡葉子/ビスタ・サイズ(1.78、デジタル)/ドルビー・デジタル

(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.ghibli-museum.jp/yorutoba/
(全国の劇場リストもあり)

ビルの谷間にある小さな映画館で、夜のとばりが降りると、若い男女とベテラン映写技師が、コンピューターの力を借り、オリジナルの物語を作って自らふん装をし影絵として演じていた。語られる物語は、「狼男」「ティ・ジャンと瓜ふたつ姫」「黄金の都と選ばれし者」「タムタム少年」「嘘をつかなかった若者」「鹿になった娘と建築家の息子」の6つ。

72点

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 素晴らしい絵。鮮やかな色彩と見事な色使い、そして力強いコントラスト。それだけで感動的。基本は影絵のようで、人物などは2Dの黒、シルエットなのだが、右手や首が曲がるときにカクカクした感じはみじんもなく、実にスムーズに曲がり、足はちゃんと地につき、呼吸によって胸が膨らむ感じまで再現され、3Dのように見える。人からオオカミへの変身も実にスムーズだ。しかも下から支えている様子はなく、上から吊っているようでもない。デジタルで作っているのだろうか。だとしたら、絵の美しさ意外にあまり2Dの影絵にこだわる必要はないように思えるが……。

 物語としては、フランスの小さな劇場の中で、若い男女と、初老のベテラン映写技師1人の3人が、物語を作って自ら演じる形式を取っている。全6話の構成。しかし最終話だけ終わると劇場へ戻らず、いきなり終わってしまう。これは全体構成として不自然ではないだろうか。1話終わるごとに劇場の周りのビルの窓の明りが少なくなってくるのに、やっぱり最後はビルの明りが全部消えて、劇場も明りを消して「おしまい」というところまでやってくれないと、劇場に設定した意味がないのでは。いかにも短編の話をまとめて、劇場用に再編集しました、みたいな印象を受けてしまう。客もいないし……。実際、TV用のシリーズ中の5本に、新作1本を加えて、3Dに変換して(?)劇場公開したものらしい。

 しかも、物語の基本は「おとぎ話」。ありえない設定、かなり無理な展開というか強引な展開、そしてあまりに残酷な仕打ち、というものがいっぱい。「おとぎ話」は実話に基づいているという話もあるし。寝物語として耳から聞く分にはあまり矛盾を感じないが、映像として見せられるとそこが気になってしまう。やはりナレーションとかでうまくごまかしてくれないと……ファンタジーとして割り切れるかどうか。割り切れれば面白くて楽しめると思う。そういう話なので、字幕では深い理解ができないかも。本作に関して、深く理解するという点では日本語吹替版の方がいいかも。さらに言えば、3Dも影絵式のレイヤーを重ねたアニメなので効果的かもしれない。

 感覚的には「アラビアンナイト」というか「千夜一夜物語」、はたまた「百物語」という雰囲気。いろんな不思議な話が集められていて、まったく飽きさせない。全体としては90分にも満たないのに、6話もあるので、むしろ長く感じた。2時間くらいあったような印象。

 脚本・監督はフランス生れの影絵アニメ作家、ミッシェル・オスロ。短編からTVアニメを手掛けるようになり、「キリクと魔女」(Kirikou et la sorciere・1998・仏ほか)で劇場版長編アニメ・デビューを飾り高い評価を得た。その後「プリンス&プレンセス」(Princes et princesses・2000・仏)や「アズールとアスマール」(Azur et Asmar・2006・仏ほか)も高評価。なんと1943年生れの69歳。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。映画の日だったので、1,000円という格安料金。まあ正直、だから見ることにしたわけだが……。ただし3D上映のみ通常料金なので、開始時間が遅くなるが、2D上映を選択。3Dのほうが良かったということはほとんどないので、開始時間以外問題なし。

 ものすごく混んでいるかと思ったら、いつもの土日とたいして変わらなかった。みんな前売り券を買っているのだろうか。観客層は若い人が多く、ファミリー層もちらほら、中高年は1/5くらいか。男女比は3対7くらいで圧倒的に女性が多かった。最終的には138席がほぼすべて埋まった。小さい劇場なので、映画の日なら当然か。

 まあ、ケータイを点けるヤツが相変わらず多い。ロビーで電源を着るようにアナウンスした方が良いのでは。各自のマナーに期待していたら、絶対に無くならない。

 気になった予告編は……「白雪姫と鏡の女王」はジュリア・ロバーツ版。シャーリーズ・セロン版がちょっと残念だったので、こちらに期待したい。どうやらコメディのようで、監督がターセム・シンなので、絵と衣装がスゴイ。期待。9/14公開。


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