Man on a Ledge


2012年7月7日(土)「崖っぷちの男」

MAN ON A LEDGE・2012・米・1時間42分

日本語字幕:手描き風書体下、林 完治/ビスタ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG-13指定)

公式サイト
http://disney-studio.jp/movies/gakeppuchi/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ニューヨークのルーズヴェルト・ホテルにウォーカーと名乗る男が現れ、21階の部屋を取るとその窓の外へと出る。通行人がそれに気付き大騒ぎになり、NYPDの刑事ジャック・ドハティ(エド・バーンズ)がやってくると、男は交渉人のリディア・マーサー刑事(エレザベス・バンクス)を指名する。6ヶ月前、シンシン刑務所に収監されていたニック・キャシンディ(サム・ワーシントン)は父親が亡くなったため一時的に外出を認められ、葬式に出席していたが、弟のジョーイ(ジェイミー・ベル)の車を盗んで脱獄していた。事件の日、ルーズヴェルト・ホテルの親会社で、斜向かいにある不動産業者の勝ち組イングランダー社では、社長のデイヴィッド(エド・ハリス)が新しいビルの建設計画の発表会を行っていた。窓の外の男はニックで、1年前に交渉を失敗して若い警官を死なせてしまっていたリディアに、自分は元警官で、イングランダー社のモナーク・ダイヤモンドは盗んでいないと主張する。

73点

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 どこかの紹介文を読んだら「交渉人」(The Negotiator・1998・米)のような印象で、真似をしたB級かなと思ったが、実際には、それにプラスαしてひねり、厳重な警備の金庫から特大ダイヤモンドを盗み出す話をもう1つの柱として合わせたものだった。つまり話が2つ同時進行する。そして、どちらもそこそこ本格的に仕上げ、キチッと融合させた快作だった。後味はとても良い。スッキリといい気分。

 ただ、イケないのは、ハリウッドのパターンを安直に取り入れすぎていること。まるで量産した安いアクションもののような気のする部分がある。つまりあまり自由にさせてもらえない新人監督が、売れるアクション映画のパターンをプロデューサーから保険として入れさせられたような印象もある。たとえば交渉人の女刑事はタフな感じを出そうとしたのか、昼間なのに寝ているところを電話で起こされ、不機嫌な感じで現場へやって来る。時間がないのに、まずコーヒーを飲ませてくれ、とか。逆にわざとらしすぎて、笑ってしまうところだった。

 もう1人の女性、弟の恋人で一緒にダイヤモンド強奪を実行するアンジーも、そういうことを出きるタフな女性だという雰囲気を出すために、現場で人の家に侵入した話とかバカな会話をする。おかげで逆にバカにしか見えなくなってしまう。うがち過ぎだろうか。ハッキリ言えば、ボクはそれが無かった方が良かった。いっそ逆のパターン、オシャレ好きで、現場でも化粧したりとか……これじゃコメディになってしまうか。とにかく何か、違うパターンで見せて欲しかった。

 それ以外は、なかなか良くできた話で、悪役のエド・ハリスが徹底して憎たらしくて良かった。できれば、エド・バーンズにもっと活躍して欲しかった。これじゃ出ている意味がほとんどない。誰でも良いではないか。

 銃は葬式の時ニックが警備員から盗むのがグロック。1発撃つと、なかなかの轟音が響き渡る。NYPDのSWAT(ESU)はEOTechを付けたM4カービンとMP5を装備。デイヴィッドが隠している「高そうなナイス・ガン」がP232ステンレス。それを弟のジョーイとその恋人に奪われる。

 ニック役のサム・ワーシントンは最近出まくり。そのせいか日本では小劇場での公開が多く、意外に良かった「ペイド・バック」(The Debt・2010・米)は日本劇場未公開となってしまっている。大作の「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)は残念だった。良かったのは「ターミネーター4」(Term inator Salvation・2009・米/独ほか)と「アバター」(Avatar・2009・米/英)か。「アバター2」に期待したい。

 弟ジョーイはジェイミー・ベル。男性ダンサーを演じた「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英/仏)でブレイク。異色ホラーの「デス・フロント」(Deatheatch・2002・英/独)や超大作「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)は良かったが、それ以外はパッとしなかった感じ。今後どうなるのか。公開を控えている作品は4本ほどあるようだが。

 女交渉人リディア刑事はエレザベス・バンクス。「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)シリーズや「シービスケット」(Seabiscuit・2003・米)に出ていた人で、その頃はバンバン出ていたが、最近は日本では劇場未公開ばかりが続いていた。かろうじて「スリーテイズ」(The Next Three Days・2010・米/仏)でラッセル・クロウの誤認逮捕される妻を演じていたくらい。

 そして、悪役と言えばエド・ハリス。ねちっとしたイヤらしさは抜群のうまさ。大作にも良く出ていたのに、最近はアート系と言うかB級というか、小さな作品が多い感じ。日本では劇場未公開だけれど、自ら監督・脚本・製作・主演した西部劇「アパルーサの決闘」(Appaloosa・2008・米)はなかなか面白かった。

 NYPDの刑事ジャックはエド・バーンズ。最近あまり見かけないが、スピルバーグの戦争映画「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)やロバート・デ・ニーロの「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米/独)などに出ていた人。自ら監督や脚本も手掛ける人だが最近はあまりやっていない模様。もっと活躍しても良い人だと思う。

 もと同僚の刑事マイクはアンソニー・マッキー。見ていないがエミネムのラッパー映画「8 Mile」(8 Mile・2002・米/独)で劇場映画にデビューした人。その後イーストウッドの感動女性ボクサー映画「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Doller Baby・2004・米)にも出ている。最近はSFラブ・ストーリー「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)やSFロボット・アクションの「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)に出ていた。

 ホテルのボーイはウィリアム・サドラー。人気アクション・シリーズ第2作の「ダイ・ハード2」(Die Hard 2・1990・米)に敵のリーダーの1人で出ていた人。どちらかといえば悪役が多いが、キアヌ・リーヴスのSFコメディ「ビルとテッドの地獄旅行」(Bill & Ted's Bogus Journey・1991・米)で死に神をコミカルに演じ、そこから役柄が広がった感じ。最近はTVが多かったようで、本作は久々のスクリーン作品。最後に劇場で見たのは後味最悪の残念なホラー「ミスト」(The Mist・2007・米)だったろうか。

 TV局のリポーターはキーラ・セジウィック。ケヴィン・ベーコンの奥さんで、人気TV刑事ドラマの「クローザー」(2005〜2011・米)で主役のブレンダを演じていた人。映画では最近だとジェラルド・バトラーの「GAMER」(Gamer・2009・米)に出ていた。

 脚本はパブロ・F・フェンヤヴェシュ。ベネズエラ出身の人で、これまではTVで活躍していたが、本作で劇場長編映画デビューとなったらしい。今後が楽しみかも。

 監督はアスガー・レス。ドキュメント畑出身の人。2006年にデンマーク・アメリカ合作のドキュメンタリー“Ghosts of Cite Soleil”の共同監督と脚本を手掛け、それが高く評価されて本作へとつながったらしい。評価はこの後どうかというところか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席自由で、45分前くらいに着いたらオヤジが1人。17〜18分くらい前に開場になった時点で、男2人、女1人。全中高年。最終的に1,064席に40〜50人くらいの入り。これには驚いた。少な!

 しかし、これは当然だったかも知れない。というのも、驚いたことに、新作なのに画質が悪い。TVのCMの画質の方がデジタルということもあるのだろうが、シズル感があってクリア。この劇場ではまるで昔の映画を見ているようだった。映写機のランプの色温度が低いのか、白が白ではなく黄色っぽいのだ。しかも解像度が低い。本作はフィルム撮影だが、TVや他館の予告では顔の毛穴までわかるような解像度の高さ。それがこの劇場だとかなりレベル・ダウンしている印象。スクリーン・サイズは大きいんだけど……。同じ料金を払うなら、やっぱり新しい劇場で見た方が良いということか。

 スクリーンも古いのか、反射率が良くないようで、映写機の明るさもあってか、明るいままでの予告はほとんど暗部が見えない。これで予告の意味があるのか。最新の設備でも明るいまま上映すると厳しいというのに、ここの古い設備で真似して明るいまま予告編を上映するなんて。

 気になった予告編は……アニメ「魔法少女リリカルなのは」、音は大きいのだが、何を言っているのかちゃんと聞き取れなかった。録音が良くないのか、劇場の再生設備が良くないのか。早口で1本調子ということもあるのかもしれないが。7/14公開。

 上下マスク「ホビット 思いがけない冒険」は暗いシーンが多く良く見えなかった。12/14公開。上下マスク「007 スカイフォール」も同じ。よく見えない。ストレスがたまった。それに、あのテーマ曲を使わないなんて。12/1公開。

 9/14公開の「白雪姫と鏡の女王」は、ジュリア・ロバーツが出てこなければ古い映画かと間違うほど。上下マスクの「プロメテウス」もせっかくの凄い絵がほとんど暗いため良く見えなかった。だんだん腹が立ってきた。8/24公開。

 「アベンジャーズ」は新予告に。前のものよりは各キャラクターの説明が多くなった感じ。8/17公開。

 「The Lady アウンサンスーチー 引き裂かれた愛」もたぶん新予告に。見たいが、どうもアート系の小劇場での公開。うむむ。予告だけで泣けそうな雰囲気。7/21公開。見たいんだけどなあ……。まあリュック・ベッソンだけど。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから本編へ。


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