The Lincolin Lawyer


2012年7月14日(土)「リンカーン弁護士」

THE LINCOLIN LAWYER・2011・米・1時間59分(IMDbでは118分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、杉田朋子/シネスコ・サイズ(デジタル、By Red One、with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://tll-eiga.com/news/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

大型高級車リンカーンに、お抱え運転手アール(ローレンス・メイソン)という組み合せで、スーツに身を固めさっそうと法廷に現れる売り出し中の弁護士ミック・ハラー(マシュー・マコノヒー)。ある日、保釈保証業のヴァル(ジョン・レグイザモ)がもうけ話を持ち込んでくる。不動産会社の御曹司ルイス・ルーレ(ライアン・フィリップ)が、若い娼婦に自宅で暴力を振るい、瀕死の重傷を負わせて逮捕されたというのだ。ルイスは拘置所からミックを呼び出し、涙ながらに自分は無実で、女にハメられたと主張する。ミックはうまく立ち回り、ルーレ家のファミリー弁護士ドブス(ボブ・ガントン)に取り入り、事件を担当させてもらえることになる。さっそく調査員のフランク(ウィリアム・H・メイシー)に捜査を開始させると、確かに事件には怪しいところがあることが判明する。

73点

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 ミスディレクションというか、人は他人の外見に騙されやすく、また自分を売り込もうとするヤツはそれを利用して外見からアピールすると。そこがひとつ衝撃的で、その弁護士が扱う事件がまた衝撃的。容疑者はお金持ちの息子で、気弱そうで、必死のようすで無実で罠にはめられたと訴えてくる。しかし事件の真相はそれらとは別なところにあり、そこがこの映画のミソ。「無実が見抜けない怖さ」と「純粋な悪の怖さ」。これはかなり怖い。

 映画は、お金持ち相手の、金儲けしか頭にないようなスカした弁護士の、チャラい処世術を描いたものから、一転、猟奇殺人事件と、過ちを正し正義を行おうとする弁護士の戦いの物語となる。そこがおもしろく、ハラハラドキドキ。一体どう展開していくのか、まったく読めない。ボクは最初ですっかり騙された。こんな状況になったら、一体どうやって抜け出せばいいのか。主人公は凄い手を考えつく。

 良く練られた脚本で、冒頭に現れる横暴な、暴力団のようなバイカー集団が、良いスパイスとなってラストにピリリと効いてくるあたりも心憎い演出。一見いがみ合っているような刑事をわざわざ裁判に呼んだりして、それがうまく展開にかかわってきて、最後のジグソーのピースがぴたりとはまる。後口はさわやかだ。

 ただ、よく「父の言葉」というフレーズが良く出ていた割には、その「父の言葉」がなんだかわからず、父親がどん人だったのかも説明がなく、そこは気になった。吹替版とかならもっとわかったのかも知れないが。

 ナイフがひとつの重要なアイテムになっているが、銃はさらに重要。なんと犯行に使われた銃種まで判明する。.22口径のコルト・ウッズマン。豪華なケース入りで、父の依頼人がくれたという設定。そしてラストに主人公が身を守る銃はS&Wのステンレス・オートマチック、たぶんM3906。

 ミックはマシュー・マコノヒー。たしか注目されたのも法定ものの「評決のとき」(A Time to Kill・1996・米)。SFファンタジーの「コンタクト」(Contact・1997・米)や、実話に基づいた20年代のギャング・アクション「ニュートン・ボーイズ」(The Newtion Boys・1998・米)が続いたが、ちょっと間をおいて、SFドラゴン・アクション「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・英ほか)でイメージ・チェンジ。そしてまた間を置いて痛快アクション「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英/西ほか)でさわやかイメージでカムバック。しかし、また間を置いて本作という、ずいぶん飛び飛びの活躍という印象。

 あまり活躍しないが、主人公の別れた妻で刑事のマギーはマリサ・トメイ。とにかく良かったのは、号泣ラブ・ストーリー「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)。あれで、すっかり惚れてしまった。「いとこのビニー」(My Cousin Vinny・1992・米)でアカデミー助演女優賞を受賞しているが、その後あまりメジャー作品での活躍がなく、「レスラー」(The Wrestler・2008・米/仏)で再びアカデミー助演女優賞候補になっている。もっとメジャー作品でも活躍して欲しいなあ。

 調査員のフランクはウィリアム・H・メイシー。この人がやるんだから、もっと活躍するかと思ったら……。何と言ってもこの人なら衝撃ミステリー「ファーゴ」(Fargo・1996・米/英)だろう。そしてSFファンタジー「カラー・オブ・ハート」(Pleasantville・1998・米)の優しいお父さん、超大作シリーズ「ジュラシック・パークIII」(Jurassic Park III・2001・米)など、大作からアート系まで良く出ている。最近は日本劇場未公開作が多かったが、「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」でマシュー・マコノヒーと共演している。

 若い依頼人ルイスはライアン・フィリップ。海難事故を描いた「白い嵐」(White Squall・1996・米)で注目され、話題のホラー「ラストサマー」(I Know What You Did Last Summer・1997・米)にも出演。またアカデミー受賞作品「クラッシュ」(Crash・2004・米/独)に若い警官役で出ている。ただ最近はあまり作品に恵まれなかったようで、久々の日本劇場公開作。

 ほかにも有名俳優が多数出ており、対する検事に「ステルス」(Stealth・2005・米)のジョシュ・ルーカス、保釈保証業のヴァルに「スポーン」(Spawn・1997・米)のジョン・レグイザモ、4年前の事件で有罪になった囚人に「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)のマイケル・ペーナニャ、ルイスの母にイーストウッドのパートナー、「タイタニック」(Titanic・1997・米)のフランシス・フィッシャー、一家のファミリー弁護士に「24 TWENTY FOUR」シリーズの大統領補佐官ボブ・ガントン、犬猿の仲の刑事に「ドライヴ」(Drive・2011・米)ブライアン・クランストン、女性刑事ソベルに人気TVドラマ「BONESボーンズ−骨は語る−」(2005〜2011・米)のミカエラ・コンリンという具合。

 原作はマイクル・コナリー(マイケル・コネリー)の同名小説。日本では古沢嘉通訳で講談社文庫から出ている。ジャーナリストから作家になったそうで、イーストウッド監督・主演で映画化もされた「ブラッド・ワーク」(Blood Work・2002・米)も書いている。

 脚本はジョン・ロマーノ。TVの脚本から、「ディボース・ショウ」(Intolerable Cruelty・2003・米)の原案やリチャード・ギアの「最後の初恋」(Nights in Rodanthe・2008・米/豪)の脚本を書いているので、そっち系の人かと思いきや、本作のようなサスペンスを書くとは。

 監督はブラッド・ファーマン。劇場長編映画の監督デビューはジョン・レグイザモの「ハード・クライム(未)」(The Take・2007・米)だそうで、だからジョン・レグイザモが本作に出ているのか。それをマシュー・マコノヒーが高く評価して、本作に抜擢されたらしい。すでに2本が製作を開始している。今後が楽しみ。ただ、マシュー・マコノヒーがS&Wオートを撃った直後、ハンマーがダウンになっていたけど……。
 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。15分前に開場となって、場内へ。観客層は中高年というか40代以上、もしくは高齢者が中心の感じ。男女比は6対4くらいで男性の方が多かった。関係者が4人くらい、のぞきに来た。最終的には157席に50人くらいの入り。もっと入っても良いと思うが、あまり宣伝していないし、面白いのに地味といえば地味かも。

 気になった予告編は……「夢売るふたり」は阿部サダヲと松たか子が共演する詐欺師映画らしいが、どうだろう。なんか予告は暗い雰囲気が。阿部サダヲなのに?

 上下マスクの「ひみつのアッコちゃん」は新予告に。子供向きなのか、大人向きなのか。アニメ・ファンは来るんだろうなあ……。見たいけど、ちょっと恥ずかしい。

 上下マスク、リーアム・ニーソンのサバイバル映画「THE GREY凍える太陽」はアラスカの山中に飛行機が墜落するらしいです。監督がジョー・カーナハンなので、期待できるかもしれません。

 とにかく遅れてくるヤツが多いし、遅れて来て予告編が始まっているのに、堂々とケータイを点ける。まぶしいって! 終わるとすぐ点けるし。そんなに忙しいなら来るな。これは老若男女を問わない。ケータイは懐中電灯じゃない。外でやれ。


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