The Thing


2012年8月4日(土)「遊星からの物体Xファーストコンタクト」

THE THING・2011・米/加・1時間43分

日本語字幕:丸ゴシック体下、藤本 聡/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://buttai-x.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1982年、冬、南極。「遊星からの物体X」(The Thing・1982・米)が起きる3日前、ノルウェー観測隊は謎の信号を追って調査に出かけ、とんでもないものを発見する。アメリカの古生物学者ケイト・ロイド(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)はノルウェーのサンダー博士(ウルリク・トムセン)の要請で、助手のアダム(エリック・クリスチャン・オルセン)とともに3人で南極のノルウェー基地へ赴く。そこで待ちかまえていたものは、氷に埋もれた巨大な異星人の乗り物らしい構造体と、氷解の閉じ込められた異星人1体だった。ケイトは反対するが、新発見に興奮するサンダー博士は、各種検査に回す前に、細胞のサンプルが欲しいとドリルで氷に穴を開け肉片を採取する。と、その夜、中の生命体は甦り、いずこか絵姿を消してしまう。そして風吹が近づいており、無線が使えなくなる。全員で手分けして捜索すると、隊員の1人がモンスターに連れ去られる。しかたなくモンスターが隠れている建物ごと火炎放射器で焼き払うと、隊員とモンスターが合体したような死体が焼け跡から発見される。サンダー博士は解剖を主張、ケイトは再び反対するが……。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 悪くはないが、中途半端。前日談(譚)といいながら、内容はほとんど1982年版のリメイク、前作と同じ。だったら堂々とリメイクと謳うか、ちゃんと独自の展開とすればいいのに。事件の発端(というか、前作の発端となった全滅したノルウェーの観測基地での3日間のエピソード)を描きながら、同じ展開って。前作へのオマージュとか言うのなら、どっちつかずはないだろう。

 設定だけがプリクエルで、ノルウェー語が飛び交うが、起きていること、やっていることは全く同じ。しかも、正体の見極めが早過ぎ。ほとんど物証なしで、主人公のアメリカ人古生物学者が驚くべき想像力で断定したもの。前作を知っている人はそれで納得できても、初めて見る人はなぜ、血液を顕微鏡で見ただけでコピーするという判断ができるのか、さっぱり理解できなかった。前作はそこのところがちゃんと伝わってきた。無機質はコピーできないというのはわかったが。

 1982年版では、誰が乗っ取られているかわからないところでとてつもなくサスペンスが盛り上がったのだが、同じことをやっていて、工夫も足りないから、まったく盛り上がらない。ただ血液ではなく、別なもので見分けるというだけ。うむむ。逆に言えば、前作がいかに良くできていたか。変形したモンスターも、派手なだけで怖さも驚きも、おどろおどろしさもすべて前作が良い。ラストに巨大な宇宙船が出てきたのも衝撃だったが、1982年版でやられているからそれもできない。逆手にとって最初に見せているから、衝撃もなく盛り上がりが少ない。しかも有名俳優がかろうじて1人だと、見るべきものもない。

 アメリカの古生物学者ケイト・ロイドはメアリー・エリザベス・ウィンステッド。「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でブルース・ウィリスの娘を演じていた人。そしてちょっと前に「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英/加)にピンクの髪の彼女役で出ていた。

 ほかにはほとんど有名俳優はいない。ちょっとTVで見かけたとか言う人はいるが。それでもストーリーやビジュアルに工夫があるなどすれば、まったくかまわないのだが。

 モンスターのデザインもありきたり。1982年版のロブ・ボッティンをちっとも越えていない。公式サイトでは特殊メイク&クリーチャー・デザインとなっていたが特殊メイク・エフェクトはアレック・ギリスとトム・ウッドラフJr.。どうもデザインは手掛けていない感じ。アレック・ギリスは、最近だとSFXだけすごかったSF侵略もの「スカイライン-征服-」(Skyline・2010・米)のクリーチャー・デザイナーを務めている。トム・ウッドラフJr.はアレック・ギリスとの仕事が多いようで、同様に「スカイライン-征服-」でクリーチャー・デザイナーを務めている。

 ほとんどオリジナル版と同じ内容の脚本はエリック・ハイセラー。IMDbで5.1という低評価のマイケル・ベイ版リメイク「エルム街の悪夢」(A Nightmare on Elm Street・2010・米)や、「ファイナル・デッドブリッジ」(Final Destination 5・2011・米)を書いている。ホラー系が強いようだが、どれも評価が……。

 監督はマティウス・ヴァン・ヘイニンゲン。映画プロデューサーの父を持つそうで、CMの世界から、本作で劇場映画監督デビューを飾った。ほとんどリメイクに近いので何とも言えない。ただ1982年版を越えていないのは……。

 登場した銃は、アメリカ人パイロットの黒人助手が持っているのが、なぜか骨董品的なワルサーP38。ほかにベレッタM92F/FSも出ていたようだが、これは1985年に米軍正式だから1982年のこの物語に登場するのはいかがなものか。ラスト、ヘリから逃げた犬を狙撃しようとするスコープ付きライフルは、1982年版の冒頭につなげるため、H&KのHK33が使われている。

 公開初日、銀座の劇場はほとんどレイト・ショー、日に1回のみ上映の夜の回、ムビチケのインターネット予約で座席を確保しておいて、40分くらい前に着いてvitで発券。30分前に開場になってロビーへ。しかし前作が上映中で、ロビーで待機。この待っている間にケータイを切らせればいいのに。前作が終了後、場内清掃をしてから15分前くらいに入場。1982年版を劇場で見た人か、ほとんど中高年で、男女比は9対1くらい。若い人も1くらい。

 シネコンが増え出す前の劇場なので、座席は多くても設計が古い劇場。前の席にちょっと座高の高い人が座ると、じゃまで字幕が読めなくなる。せめて千鳥配置ならいいのだが、それもなし。ストレスがたまる。たまたま座高が低い人で助かったが……。最終的に666席に9割くらいの入り。どうしてレイト・ショーのような扱いなのか。だいたい六本木の劇場で見ようと思っていたのに、ギリギリになったら上映劇場から消えていた。なんてことだ。

 気になった予告編は……明るいまま始まったニュースでは、アン・リー監督の227日間虎と漂流した話「ライフ・オブ・パイ」はなかなか面白そう。ファンタジーらしい美しい絵作り。3Dをアン・リー監督はどう使うのか。まだ日本語のページはない模様。2013年公開。

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」は、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイという豪華な顔合わせ。アン・ハサウェイは「ダークナイト・ライジング」(The Dark Knight Rises・2012・米/英)に引き続き、いい作品に恵まれることになるのかも。12月公開。

 J・J・エイブラムスが「スター・トレック2」を手掛けることが決定したと。絵はなくJ・J・エイブラムスの話のみ。

 ここで半暗になってCMから本当の予告へ。草なぎ剛がヤクザを演じる上下マスク「任侠ヘルパー」ってTVでやってたやつでは。うむむ。11/17公開。

 上下マスクの「悪の教典」は伊藤「海猿」英明主演で、高校教師ハスミンがクラス40人、全員皆殺しにする話らしい。ショットガンをぶっ放していた。凄そう。11/10公開。

 上下マスク「ハンガー・ゲーム」は、新予告に。未来社会、国民から24人を選んでサバイバル・ゲームを行わせ、それを中継するという話らしい。それで妹が選ばれて、代わりに姉が参加することになると。9/28公開。

 上下マスク「ボーン・レガシー」も新予告に。とにかく凄いアクション。なにより主人公のジェレミー・レナーの銃の構え方が良い。おそらくトレーニングを受けたのだろう。本物っぽい。9/28公開。

 暗殺組織に命を狙われる36カ国で指名手配となった男と、CIAの若手エージェントが36時間、一緒に逃げるという上下マスクの「デンジャラス・ラン」はシリアス版「48時間」か。デンゼル・ワシントンは悪役より良い役の方があっていると思うけど、面白そう。相手役はライアン・レイノルズ。9/7公開。

 上下マスクの「プロメテウス」はもう絵の力が半端ではない。ただ、だだ、圧倒される。マイケル・ファスベンダーとシャーリーズ・セロンが凄そう。8/24公開。待ちきれない。

 そして自ら「日本よ、これが映画だ」としてハードルをあげた「アベンジャーズ」は新予告に。正直、たくさんの映画キャラクターの中で日本で人気があったのは「アイアンマン」だけという感じなので、勢ぞろいしたところで、という気がしないでもない。8/17公開。

 スクリーンが左右に広がって本編へ。床のガイドランプが消えないので気になる。うむー。古いユニバーサルのオープニングからのスタート。


1つ前へ一覧へ次へ