Total Recall


2012年8月11日(土)「トータル・リコール」

TOTAL RECALL・2012・米/加・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(デジタル、Shot on Red)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.totalrecall.jp/
(情報少。全国の劇場リストはあり)

21世紀末、地球は汚染されブリテン連邦(UFB)と、その地球の裏側にあたるコロニーしか居住可能な地域はなかった。労働者階級のワーカーズが暮らすのはコロニーで、フォールと呼ばれる巨大な装置で、毎日、地球を横断して通勤していた。美しい妻ローリー(ケイト・ベッキンセール)とともにコロニーに住む工場労働者のダグラス・クエイド(コリン・ファレル)は、毎日ロボット警官のシンセティック隊に追われる悪夢に悩まされていた。そして、ある日、昇進の夢も断たれ、毎日同じことの繰返しに嫌気が差し、脳に直接働きかけて希望する記憶に書き換えてくれるというリコール社を訪れる。ところが、そこへ警官隊が現れ銃撃戦となるが、クエイドは勝手に体が動き、反射的に警官隊を皆殺しにしてしまう。家へ逃げ帰ったクエイドに、今度は妻のローリーが襲いかかってくる。からくも逃げたクエイドの前に、いつも悪夢で一緒に逃げている女が現れ、エアカーに乗れと言う。

73点

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 すごいジェットコースター・ムービー。息つくひまもないほど、一気に最後まで引っ張って行かれる。SFっぽい世界観と、素晴らしいアクションの数々。ほとんど何も考えずに楽しめる映画。

 ただ、SFとしての世界観はどこかで見たようなものばかり。そこが、どうなのか。そしてアーノルド・シュワルツェネッガーが主演した1990年版とはだいぶ印象が異なるが、同じ原作でこの違いはどうなのか。そのへんで評価が分かれるかもしれない。

 漢字が溢れ、いつも雨が降っているようなごみごみした町並みは、ほとんど「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)のまま。透明ビニールのレインコートも、傘もそんなん感じ。たぶん監督は「ブレードランナー」のファンなのだろう。建物が上下に連なる感じは「フィフス・エレメント」(The Fifth Element・1997・仏)のようでもあった。

 エア・カーが走る空中の専用道路のカーチェイスは、ほとんど「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)。シンセティック隊のロボットはほとんど「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米/独)。エレベーターが縦横無尽に動くのは「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory・2005・米/英)のようだった。2人で逃げるのは「アイランド」(The Island・2005・米)か。

 ということになると、このSFの見どころは何なのかということになるのだが、アクションのキレ、テンポの良さは抜群だった気がする。つまりまとめて見せる力か。どこかで見たビジュアルなので、安心感もあり、ちゃんとSFとして楽しむことができると。これでいいのかという面もあるが……。監督は映画マニアなのかもしれない。「7年目の殺意」って。「……、ナウっ!!」って叫ぶのは「24TWENTY FOUR」のジャック・バウアーでしょ。

 人物設定は、黄金の三角関係。しかも通常パターンの逆。男1人に女1人。通常はロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」(Les aventuriers・1967・仏/伊)のように男2人に女1人だが。いずれにしても、この微妙な関係がドラマを生むわけだが、なぜか本作ではほとんど掘り下げない。たぶん監督の妻であるケイト・ベッキンセールをそういうドロドロに巻き込まれさせたくなかったのだろう。妻という設定なのに色っぽいところもない。ただひたすら敵役のケイト・ベッキンセールはカッコいい。

 CMでは「記憶を買う話」と言っているが、実際にそこに重点は置かれておらず、逃走劇がメインになっている。もっと、本当の記憶と植え付けられた記憶とのせめぎ合いや、それによるトリックというかどんでん返しとかがあっても良かった気がする。

 前作で顔の中から顔が現れるというビックリ・シーンがあったが、本作ではそれを首に付けるリングによるホログラムか何かの装置にレベルアップさせている。それを逆手に取ったりもするが、いまひとつ扱いが浅い。

 主人公ダグラスが使う銃はS&WのM&P、彼を助けるメリーナはサイ・ホルスターにベレッタ90TWO、いつわりの妻ローリーはマテバを発展されたチアッパ(キアッパ)のライノ・リボルバー。警官隊はクリス・ヴェクターSMG、たぶんスクリーン初登場。後方への反動をボルトの上下動で消すはずが、重力反転区域でダグラスが撃つと反動で後退していたけど……。レジスタンスはG36C、リコール社の職員が使っているのがP226、航空機にはチェイン・ガン、ナイフはスパイダルコ?

 主演はコリン・ファレル。私生活では色々問題を起こしている人らしいが、2000年〜2005年くらいまでは話題作、泰作などが多かったが、後半になってB級が増えてきた感じ。本作は久々の大作だろう。それこそ「マイノリティ・リポート」に出ているので、ビジュアルの共通性など感じていたのではないだろうか。最近出ていたのはリメイク・ホラーの「フライトナイト/恐怖の夜」(Fright Night・2011・米)で、しかも悪役。それでも公開が控えている作品は5本もある。「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)や「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米/独ほか)でアクションもいけることは証明済み。

 悪役でもカッコ良く決まっていたのが、監督の妻ケイト・ベッキンセール。ヒット作「アンダーワールド」(Underworld・2003・英/独ほか)で監督と出会い、本作もそのイメージのまま、クールで腕の立つ処刑人役。意外とラブ・ストーリーの「セレンディビティ」(Serendipity・2001・米)やホラーの「モーテル」(Vacancy・2007・米)が良かったりする。この前に出ていたのは「バイオ」っぽくなってきた「アンダーワールド覚醒」(Underworld: Awakening・2012・米)。

 もう1人の美女メリーナはジェシカ・ビール。「ブレイド3」(Blade 3・2004・米)や「ステルス」(Stealth・2005・米)でアクションもしっかりこなしている。そしてリメイク・ホラーの主演で名を知られた割には「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)や「NEXT-ネクスト-」(Next・2007・米)が良かったりする。ドラマができるのは当たり前。ちゃんとアクションがこなせるかの方がプラスになるのではないだろうか。アクションが出来ない人は意外と多い。

 ほんの顔見せという感じで登場するレジスタンスのリーダー、マサイアスはビル・ナイ。「アンダーワールド」シリーズにもずっと出ている。友情出演みたいな感じだろうか。コミカルな役から怖い役まで何でもこなす。「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」(Piratesof the Caribbean: Dead Man's Chest・2006・米)ではデイビー・ジョーンズを演じている。

 脚本はカート・ウィマーとマーク・ボンバックの2人。カート・ウィマーは監督もやっていて、衝撃SFアクション「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)、残念なSFアクション「ウルトラヴァイオレット」(Ultraviolet・2006・米)などを手掛けている。脚本では痛快ピカレスク「トーマス・クラウン・アフェアー」(The Thomas Crown Affair・1999・米)、CIAの裏側を描く「リクルート」(The Recruit・2003・米)やミステリー・アクション「フェイク・シティある男のルール」(Street Kings・2008・米)、90%くらいだった「完全なる報復」(Law Abiding Citizen・2009・米)、ジェットコースター・アクションの「ソルト」(Salt・2010・米)などを書いている。基本、連続アクションの人なのだろう。

 マーク・ボンバックはホラーの「アダム-神の使い悪魔の子-」(Godsend・2004・米/加)、痛快アクションの「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)、感動したミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)、リメイクSFアクション「ウィッチマウンテン/地図から消された山」(Race to Witch Mountain・2009・米)、実際の事故を描いた「アンストッパブル」(Unstoppable・2010・米)などを書いている。基本、この人はミステリー系アクションが得意なようだ。

 監督はレン・ワイズマン。「アンダーワールド」シリーズをすべて書いていて、1と2を監督。その手腕が認められて大作シリーズの4本目「ダイ・ハード4.0」の監督も任されている。リメイク版の新しいTVドラマ「ハワイ5-0」(2010・米)のパイロット版と製作総指揮をやっているらしい。その前は小道具係だったようだ。素晴らしい出世。アクションの演出に冴えを見せる。スピード感、カッコ良さ、ハラハラ、ドキドキ、見せ方がうまい。今回は特にケイト・ベッキンセールが床を滑って行ってコリン・ファレルに襲いかかるところや、重力反転区域でのアクションがカッコ良かった。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに着いた。持ち込み禁止なので入口付近でコーヒーを飲み、頃合いを見計らってロビーに行くと10分前くらいに開場となって場内へ。観客層はほとんど中高年の男性。若い人と女性は少なかった。最終的には607席にたぶん5割くらいの入り。上映が始まると暗くてわからない。

 いつもながら遅れて入ってくる人が多い。予告が始まって場内が半暗になっているから、堂々とケータイを懐中電灯代わりに照らして入ってくる若い女。人の迷惑なんて全く考えていない。

 下品なマナー広告と意味不明なドレッシングのCMに続いて始まった予告で気になったのは……上下マスクの「黄金を抱いて翔べ」は新予告に。ただ短過ぎてよくわからなかった。11/3公開。

 驚いたのは上下マスクの「ゴーストライダー2」。あれって受けなかったのでは? そして評論家の評価も芳しくなかったのでは? またニコラス・ケイジで? 燃えているガイコツが走り回るSFXは確かに凄い。そこが見どころか? 2013/2/1公開。

 「アベンジャーズ」はもう何回も見たので、飽きてきた。だんだん凄くないのではないかという気さえしてきた。同じパターンで繰り返すのは、逆効果では?

 上下マスクの「THE GREY凍える太陽」も同じパターンだが、露出が少ないので飽きはないが、ひょっとしてこれしか内容がないのではという疑いも生じる。どうだろう。8/18公開。

 スクリーンが左右に広がって「007/スカイフォール」。あのテーマ曲は薄く入っていた程度。PPK/S新型とか言っていた。どうしても「007」というと期待してしまう。カッコ良さそう。オリンピックにも出ていたし。12/1公開。

 「バイオハザードVリトリビューション」は新予告で、シネスコはすごい迫力。昔の仲間とか言って死んだはずのキャラも出てくるのだが、ジルがまったく似ていない人みたいで……残念。航空機はオスプレー? 9/14公開。

 左右マスクの「モンスター・ホテル」はCGアニメで、どうやら子供向けのよう。9/29公開。


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