Prometheus


2012年8月25日(土)「プロメテウス」

PROMETHEUS・2012・米/英・1時間57分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(with Panavision、デジタル、Red、70mm IMAX 3Dは1.66、IMAXデジタル2.00、その他は2.35)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、英15指定、日PG12指定)(3D上映、IMAX版、日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.foxmovies.jp/prometheus/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

科学者のエリザベス・ショウ博士(ノミオ・ラパス)とチャーリー・ホロウェイ博士(ローガン・マーシャル=グリーン)は2089年、スコットランドのスカイ島で、これまで発見されたよりもさらに古い、3万5千年以上前の遺跡から、同じ図形が描かれた壁画を発見する。2093年12月21日、ウェイランド社の宇宙船プロメテウス号はアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)により管理され飛行を続けていたが、目的地が近づいたということで、17人の乗組員を冬眠カプセルから起こす。そしてブリーフィングがもたれ、ウェイランド社のメレディス・ヴィッカーズ(シャーリー・ズ・セロン)がプロジェクト・リーダーのエリザベス博士とチャーリー博士を紹介し、ミッションの説明が行われる。時代を経た数々の遺跡から発見された図形は、星座で、そこから来た我々がエンジニアと呼ぶ宇宙人が人類を作ったと。そして、その星座の中で、生命の生存に適した星がこの宇宙船の目的地だと。しかし、メレディスはもしエンジニアを発見してもコンタクトは禁じると命令する。やがてプロメテウス号はその惑星の大気圏に突入し、地上にピラミッドのような建造物を発見する。

83点

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 素晴らしい映像。絵の力強さと、リアリティ、臨場感は半端ない。まるで一緒に宇宙旅行して、事件を共有しているような感じ。3Dで見たが、できればもっと大きな劇場、ベストはIMAXの3Dで見たい映画。

 しかも「エイリアン」(Alien・1979・米/英)の原点をすべて取り込んで、プリクエルとしてちゃんと成立させているだけでなく、その中で起承転結を入れ、1つの独立した物語としても楽しめるようになっている。そして、「エイリアン」の基本であったところの、SFホラーに立ち返っている。第1作の公開当時は、SFよりもホラーの方が強調されていた。「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」確かそんなコピーだった。みんな怖いもの見たさに行っていた感じだった。

 それが「エイリアン2」(Aliens・1986・米/英)では戦争映画になり(めちゃくちゃ面白かったが)、「エイリアン3」(Alien3・1992・米)、「エイリアン4」(Alien: Resurrection・1997・米)とそれぞれのエイリアン感が描かれ、リプリーが主人公のヒーロー物と言う感じになって行った。

 たぶん第1作で受けた要素はすべて入れてあるのではないだろうか。金で雇われたちょっと危ない奴などの個性的なキャラクター、責任感の強い船長、人間そっくりのアンドロイド(しかも最後には壊される)、みんなでの食事、強い女性キャラクター、裏切り者、医療室、調査隊、変態、取れる頭、タイトルの見せ方……そして第1作の「エイリアン」につながる宇宙船やスペース・ジョッキーも描かれる。すべてはつながる。スペース・ジョッキーは胸が内側から破られていたんじゃなかったっけ?

 女性の主人公ノミオ・ラパスは、スウェーデン生れで、衝撃作「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(Man som hatar kvinnor・2009・スウェーデンほか)シリーズ3部作でヒロインのリスベットを演じた人。まあ、強烈なキャラクターがハマっていた。「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」(Sherlock Holmes: A Game of Shadows・2011・米)はあまり印象に残らず残念だったが、本作はさすがの生々しさ。戦いっぷりはリプリー並み。すでに新作が3本も控えている。

 アンドロイドのデヴィッドはマイケル・ファスベンダー。なんといっても「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)の映画に詳しいイギリス軍将校役が印象深かった。また人気シリーズの前日談となる「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)での若き日のマグニートーも良かった。たしかに、いずれも感情を押し殺した感じと、あまりにも整った二枚目顔は、確かにアンドロイドっぽい。本作はドンピシャのはまり役といっていいのではないだろうか。

 そしてまたインパクトがあったのが、ウェイランド社のメレディス・ヴィッカーズを演じたシャーリー・ズ・セロン。この怖さはハンパではなかった。美人だからこその冷徹な感じの怖さ。この人には感情がないのではないかと思ってしまうほど伝わってくる。悪役的存在感が見事。つい最近「スノーホワイト」(Snoew White and the Huntsman・2012・米)で悪役を演じていたが、あちらはがんばっているのが見えてしまうのだが、本作は自然。良い役をもらったのではないだろうか。

 ウェイランド社の社長、ピーター・ウェイランドは、超老人メイクで誰かわからないが、実はガイ・ピアース。つい最近「ハングリー・ラビット(Seeking Justice・2011・米)に組織の男の役で出ていた。悪役が多くなった気がするが。ただ、ウェイランド・ユタニじゃなかったっけ? 日系企業の。

 脚本は、ジョン・スペイツとデイモン・リンデロフの2人。ジョン・スペイツは製作総指揮も兼ねており、「ダーケストアワー 消滅」(The Darkest Hour・2011・米)に続き2本目の脚本。「ダーケストアワー 消滅」は今年の年末に日本公開されるらしい。公式サイトによれば、もともと小説家で、映画化された衝撃のミステリー「パッセンジャーズ」(Passengers・2008・米/加)の原作を書いている。

 デイモン・リンデロフはTVで「刑事ナッシュ・ブリッジス」や「LOST」の脚本や製作総指揮で関わり、映画では「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)のプロデューサー、「カウボーイ&エイリアン」(Cowboys & Aliens・2011・米)の脚本をやっている。冒険物的なものが得意な人のようだ。本作では製作総指揮としても関わっている。

 監督は言わずと知れた巨匠にして、オリジナル第1作の創造者リドリー・スコット。1937年生れだからもう75歳。とてもそうとは思えない本作の過激さは、やはり凄いとしか言い様がない。監督作品のすべてが傑作というわけではないとしても、「エイリアン」や「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香/英)は人類の財産として映画史に残るものだろう。2005年くらいから製作総指揮が多かったが、最近の監督作で良かったのはレオナルド・ディカプリオのアクション「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米/英)あたりだろうか。その前になると「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米/英)か。

 銃も出てきて、エイリアンの襲撃で、火炎放射器とともにハンドガンを使う。しかし引きのカットで短いため、オートマチックであることしかわからなかったのだが、imfdbによるとワルサーGSPの.32口径らしい。

 本作の字幕は斜体になってもギザギザ(ジャギー)が気にならなかったが、なぜなんだろう。IMAX版があるから高解像度で作ったのだろうか。劇場で上映する映画ならすべて高解像度でやってもらいたいものだが。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。なぜかキャパの小さな劇場での公開。先行、先先行公開が芳しくなかったのか。これはでかいスクリーンで見たいのに。10分前くらいに開場になり場内へ。観客層は若い人から中高年まで幅広く、下は中学生くらいからいた。男女比はほぼ半々くらい。最終的に157席がほぼ埋まった。満席とは言え157席って。

 相変わらず遅れてくるヤツは多いし、ケータイを使っているヤツは多いし、室内で帽子を被っているヤツや、いつまでもしゃべっているヤツ……マナーCMはなんだったんだろうと。

 気になった予告編は……スクリーンが上下に狭まってシネスコ・サイズになってから、3Dめがねを掛けるように指示があって「ホビット 思いがけない冒険」の3D予告。たしかに奥行きがある気はするが、3Dの必要があるのかなあと。高いし。暗いシーンがあると3Dの効果は出にくいし、予告じゃカットが短過ぎて3Dと認識する時間がない。

 さらに3Dシネスコで「リンカーン/秘密の書」の新予告。暗いシーンが多く、3Dの効果がわかりにくかった。


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