Rurouni Kenshin


2012年8月26日(日)「るろうに剣心」

2012・ワーナー・ブラザース映画/アミューズ/集英社/KDDI/C&Iエンタテインメント/Yahoo! JAPAN/・2時間14分

シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル

(一部フィルム上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

幕末の1868年1月、京都鳥羽・伏見の戦いで、勤王派の暗殺者「人斬り抜刀斎」(佐藤建)は、新撰組の斉藤一(江口洋介)と対決しようとしていたが、錦の御旗が勤王派にもたらされ戦いは終了してしまう。抜刀斎は自らの剣を捨て、今後人を斬らない誓いを立てる。しかし、その剣を鵜堂刃衛(吉川晃司)が拾い、手にした瞬間「人斬り抜刀斎」のものと感じ取る。10年後の1878年11月、東京。陸軍省で山県有朋(奥田瑛二)が「新しい時代」の宣言をしていた頃、豪邸に住む貿易商の武田観柳(香川照之)は、高荷恵(蒼井優)ら子飼いの医師たちに調合させた常習性の高い新アヘン「クモの巣」により、国内はもちろん、海外にもアヘン中毒者を作って金を儲けようとしていた。口封じのため医師らは、用心棒の外印(綾野剛)、戌亥番神(須藤元気)、人斬り抜刀斎と名乗る男(吉川晃司)らに殺され、恵だけが辛くも逃げ出す。
ニセの人斬り抜刀斎が警察官等を惨殺する際、斬奸状を現場に残し、そこに神谷活心流と書かれていたため、神谷道場の娘で師範代の神谷薫(武井咲)は嘘を正すため人斬り抜刀斎を倒そうと東京を歩き回っており、偶然にも鵜堂刃衛と出会い、戦いを挑むが実力の差は明らかで、返り討ちにされそうになる。その時、緋村剣心(佐藤建)が現れ、薫を連れて逃げる。

76点

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 日本映画には珍しく、アクション満載でちゃんとドラマを構成している。明治初めの時代感、剣道場の跡取り娘と、正体不明の流浪人、彼にあこがれる子供剣士、何でも金で思い通りにしようとする成金の貿易商、金で雇われた戦いのプロたち、警察……。それぞれが実にうまく描かれている。極端な設定だが、ちゃんとリアリティがあり、いかにもいそうなキャラクター。そこに、陰謀、因縁の戦い、生き方、恋心などを盛り込んで、きちんとまとめている。すばらしい。過剰なウエットさもない。てんこ盛りのエンターテインメント。

 ライティングやアングルにもこだわって、スローも交えながら、斬新な視点で描いているのがいい。型にはまっていて、誰が作っても似たようなものができ上がるのとは訳が違う。そして、ひさびさに、凄い早くて、息を呑むような、ある意味型破りなチャンバラが堪能できる。

 明治ということもあり、セリフも正統派の時代劇とは違い、セリフっぽくないところが良い。ただ、主人公の「……でござる」だけは浮いていた。原作がそういう設定なんだから仕方がないのだろうが、どうもわざとらしい感じがする。ちょっと漫画の「忍者ハットリくん」みたいでもあるし。

 そして、あとヘンなのは、各人の超人的なジャンプ力と、妙に銃口が小さくてマガジンがどこか見当たらないガトリング砲か。弾着は豪快で良かったのに、残念。あっ、あと、鵜堂刃衛のコンタクト・レンズと武田観柳の受け口の下の義歯かなあ。リアルさが今ひとつ。

 緋村剣心は佐藤建。建は「たける」と読むらしい。最近の若い人たちの名前は読むのが難しい人が多くて困る。2007年のテレビ朝日系「仮面ライダー電王」をやった人で、TBS系「ROOKIESルーキーズ」シリーズ、同じくフジテレビ系「メイちゃんの執事」(2009)などを経て、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」(2010)で岡田以蔵を好演、本作につながったらしい。かなりスレンダーな二枚目で、ガムのCMでダンスを踊っているのなどからはイメージがわきにくいが、さすが仮面ライダーということか、アクションも素晴らしい。撮影前に2〜3カ月の特訓をしたということで、動きに説得力があり、キレもいい。 剣だけでなく、徒手の格闘技も見事。1989年生れの23歳、今後も期待したい。

 ヒロインの神谷薫は武井咲。咲は「えみ」と読むんだとか。2006年の全日本国民的美少女コンテストで2部門を受賞したらしい。今あちこちで見かけるが、まあカワイイというか愛らしい。TV・CMと大活躍だが、映画は「愛と誠」(2012・日)に続いて2本目。テレビ朝日系「アスコーマーチ〜明日香工業高校物語〜」(2011)がかわいかった。1993年生れの19歳。今後も大活躍ということになりそうだ。

 もう1人の美女は蒼井優。スナックのCMは驚いたが、本作では美人に撮られていて妖艶な雰囲気さえ漂う。1985年生れだから27歳か。若くから活躍しているので、もうベテランの雰囲気。TVより映画で活躍しているイメージがある。一番強く印象に残ったのは、やっぱり「フラガール」(2006・日)だろう。

 強烈な悪役、ニセの人斬り抜刀斎こと鵜堂刃衛は吉川晃司。やっぱり敵役がいいとヒロインも主人公も光り輝く。若干漫画チックな感じはするが、凄みのある怖さがいい。芸能界デビュー作が映画の「すかんぴんウォーク」(1984・日)だそうで、続いて「ユー★ガッタ★チャンス」(1985・日)、「テイク・イット・イージー」(1986・日)と作られた。時代劇「必死剣 鳥刺し」(2010・日)で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞したらしい。最近は「仮面ライダー」の映画版なんかでヒーローをやっていたりする。

 そして、やっぱりいい味を出していたのは、ゲームのキャラクターが持っている大きな剣のようなもの、馬を切るための刀という「斬馬刀」を持つ相良佐乃介役の青木崇高。うまい。存在感が半端ない。特にNHKの大河ドラマ「龍馬伝」(2010)の後藤象二郎は凄かった。1980年生れというから32歳なのに、あの貫録というか落ち着いた感じ。まるで往年の名優、三船敏郎のような存在感。ただ、現代劇より時代劇の方がはまっている気はする。デビュー作は「バトルロワイヤルII鎮魂歌」(2003・日)なんだとか。もっと長いこと活躍しているベテランのような気がする。

 原作は週刊少年ジャンプ他で連載中の和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」。最初が1994年というからもうすぐ連載20年。脚本は藤井清美と監督でもある大友啓史の2人。藤井清美は劇作家で演出家だそうで、日本テレビシナリオ登竜門優秀賞を受賞して映像作品にも進出した人。ラブ・ストーリー系の作品が多いようだが、意外なことにアニメの「豆腐小僧」(2011・日)も書いているらしい。本作はだいぶ傾向が違うと思うが、確かに緋村剣心と神谷薫の微妙な関係は見事なラブ・ストーリーだ。

 監督は大友啓史・慶應からNHKに入って、アメリカへ2年留学。ハリウッドで脚本や演出を学んだらしい。帰国して、話題になったNHKの朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」(2001)の演出を担当。TVドラマの劇場版「ハゲタカ」(2009)が劇場作品デビュー作。その後、あの「龍馬伝」を演出、高い評価を得る。今年の4月に独立したという。この先、どんな作品を見せてくれるのか楽しみ。

 アクション監督は谷垣健治。倉田アクションクラブから香港へ行き、ドニー・イェンのもとで学んでアクション監督になったらしい。そのドニー・イェンとともに手掛けた「修羅雪姫」(2001・日)のアクションは秀逸だった。釈由美子がアクション女優に見えた。その後、ドニー・イェン作品を手掛け、日本映画では「リアル鬼ごっこ」(2007・日)などもやっている。つい最近、金城武が出たドニー・イェンの「捜査官X」(武侠・2011・香/中)を手掛けている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。15分前くらいに開場。下は小学生くらいから、中高年まで幅広い。漫画が原作ということだからか。NHKの「龍馬伝」の影響もあるのだろう。男女比はほぼ半々。最終的には607席に7.5割くらいの入り。さすが。

 気になった予告編は……「大奥」がまたTVと映画でやるらしい。すごいなあ。

 スクリーンが左右に広がってシネイコ・サイズになってから、「ホビット 思いがけない冒険」12/14公開、北野武映画「アウトレイジ ビヨンド」10/6公開、「ロック・オブ・エイジズ」9/21公開、の予告。やはり大画面は大迫力。ビスタの上下マスクとは印象が違う。


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