Mirror Mirror


2012年9月16日(日)「白雪姫と鏡の女王」

MIRROR MIRROR・2012・米・1時間46分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(デジタル、with Panavision、IMDbではSony)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米PG指定)


公式サイト
http://mirrormirror.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

人々が歌って踊る陽気な王国で、世継ぎとなる女の子が生れ、スノー・ホワイト=白雪姫と名付けられたが、間もなく母の女王が亡くなり、しばらくは父王に溺愛されて育てられた。しかし男親では教えられないことがあると気付いた国王は、再婚を決意、新しい女王をめとる。しかしこの女王は魔女で、父王はある日、白雪姫に短剣を渡すと姿を消してしまう。10年後、ずっと幽閉されていた白雪姫(リリー・コリンズ)が18歳の誕生日を迎えたとき、女王(ジュリア・ロバーツ)の浪費により国は疲弊し、人々は誰も歌い踊らなくなっていた。白雪姫はこっそり城を抜け出すと、途中で従者と冒険旅行しているヴァレンシア国の王子(アーミー・ハマー)と出会う。王子と従者は七人の小人の盗賊に襲われ、身ぐるみはがれて木に縛りつけられていた。王子と従者を助けた白雪姫は村へ向かい、王子は半裸のまま助けを求めて城へ向かう。ちょうど国の財政を建て直すため、金持ち国の王子と結婚することを決心していた女王は、ヴァレンシア国が裕福な国だと知ると、王子を誘惑するため舞踏会を開くことにする。しかし侍従のブライトン(ネイサン・レイン)から、とてもそんな費用はないと言われた女王は、増税を命じる。

78点

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 IMDbではわずかに5.6点という低評価。しかしボクはめちゃくちゃ面白かった。おとぎ話という前提で始めて、その枠内で想像の翼を広げきっちりと世界観を作った上で、ムチャクチャやりつつ笑いをちりばめて、ピュアと悪い魔女の戦いをやり、感動までさせてしまうとは。絵に書いたような画の美しさはもちろん、鮮やかな色使い、陰影、そして目を見張るばかりの美しい衣装の数々。舞台の演劇を見ているような感覚に近いだろうか。それが受け入れられるか、受けいれられないか。主にアメリカでは受け入れられなかったのだろう。

 ヒロインのリリー・コリンズはめちゃくちゃキュートだし、悪役のジュリア・ロバーツは笑顔でさらりと嫌らしい事を言う皮肉や的な感じが抜群で、王子様は背が高くてハンサムで、まあ見事。7人の小人も悪党なんだけれど、実は良い奴たちで、キングもいかにもキングという感じ。つまりは、絵に描いたようなおとぎ話。素晴らしい。参った。

 まったくありえないファンタジーの世界。実話とは正反対の世界を正面から描く。これもまた映画ではないだろうか。タイトル文字から始まって、人形劇(風CG、たぶん)でプロローグが語られて、歌と踊りがあって、めでたし、めでたし、The Endの文字で終わる。正統派のおとぎ話で、正統派の映画ではないか。

 ラストの、英語の歌だがインドのマサラ・ムービーのような雰囲気が、意外とおとぎ話にあっていて驚いた。"I Believe In Love (Mirror Mirror Mix)"。早口言葉のようだが、いい曲。リリー・コリンズがうまいのは父譲りだろうか。

 主演の白雪姫はリリー・コリンズ。現在、大学院に通っている学生なんだそう。10代からアメリカでモデルを始め、サンドラ・ブロックの「しあわせの隠れ場所」(The Blind Side・2009・米)で劇場映画デビュー、その後SFホラー・アクションの「ブリースト」(Priest・2011・米)、ヤング・アクションの「ミッシングID」(Abduction・2011・米)と立て続けに出演。フィル・コリンズの娘にして、濃い眉がチャーム・ポイントの美女。今後の活躍が楽しみ。

 見事な悪役っぷりの女王、ジュリア・ロバーツは、ギャグなども所々に入れ、それほどドギツイ悪ではないような雰囲気で、なかなかの悪い奴を好演。恋愛ものが多い気はするが、この前にトム・ハンクス監督・主演の「幸せの教室」(Larry Crowne・2011・米)に出ている。

 ちょっとオツムが弱そうな感じの二枚目の王子様はアーミー・ハマー。話題になった映画「ソーシャル・ネットワーク」(The Social Network・2010・米)で双子の兄弟を演じ、クリント・イースウッド監督、レオナルド・ディカプリオ主演の「J.エドガー」(J. Edger・2011・)でエドガー長官の恋人役を演じていた人。軽い役もうまい。何と公開を控えている新作が5本もある。

 侍従長らしいブライトンはネイサン・レイン。コメディかアニメの声担当が多い感じ。実写劇映画ではメル・ブルックスのリメイク「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)以来か。画面に出てくるだけでおかしい雰囲気を漂わせる。

 7人の小人は、ナポレオン、ハーフ・パイント、グラブ、グリム、ウルフ、ブッチャー、チャック、それぞれのキャラクターが立っていて、見事。うまい。そして竹馬を使って巨人に見せていて、伸び縮みするというアコーディオン式というアイディアが秀逸。

 正統派おとぎ話の脚本は3人が関わっていて、マーク・クライン、ジェイソン・ケラー、メリッサ・ウォーラック。マーク・クラインは、ジョン・キューザックとケイト・ベッキンセールの感動のラブ・ストーリー「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)や見ていないがリドリー・スコットの「プロヴァンスの贈りもの」(A Good Year・2006・米/英)を書いているらしい。ジェイソン・ケラーは、衝撃の実話の映画化「マシンガン・プリーチャー」(Machine Gun Preacher・2011・米)を書いた人。メリッサ・ウォーラックは、これまた見ていないがコメディの「幸せのセラピー」(Bill・2007・米)の脚本・監督をやった人。たしかに、この3人が合わさると、本作のような感じになるのかもしれない。

 とにかく見事な衣装デザインは石岡瑛子。フランシス・フォード・コッポラの「ドラキュラ」(Dracula・1992・米)でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞、広く知られるようになり、ターセム・シン監督の劇場長編デビュー作「ザ・セル」(The Cell・2000・米)以降、すべての作品の衣装デザインを手掛けた。かつてのエキスポ70(日本万博)のポスターもデザインしているそう。惜しくも2012年1月に74歳で亡くなっている。この人の衣装デザインは本当に素晴らしいと思う。

 見事な絵を鮮やかな色彩で切り取ったのはブレンダン・カルヴィン。ただこの手法がこの人のスタイルというわけでは無く、「エネミー・ライン」(Behind Enemy Lines・2001・米)などの冷たい感じの絵も撮っている。しかしターセム・シン監督と組んで「インモータルズ -神々の戦い-」(Immortals・2011・米)を撮って、あの絵のような画を撮っている。

 独特の世界観を描いた監督はターセム・シン。公式サイトではターセム・シン・ダンドワールと表記している。広告業界でCM監督として活躍。「ザ・セル」で劇場長編デビューを飾ると、独特のビジュアルが高く評価され、「落下の王国」(The Fall・2006・米/印)は衝撃だった。ファンタジー世界のあの風景。実際に存在するところだというのだから余計に驚かされた。当然衣装も素晴らしかった。ほとんど監督の自己資金で撮ったらしい。自主映画に近い。続いて撮った「インモータルズ……」より本作はもっと良い感じ。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由。金曜に前売り券を当日券に換えておき、40分前くらいに付いたら、1Fのボックス・オフィスに20人くらいの列。エレベーターはまだ5Fまでしか動いていなかったので、そこで待つが、いつエレベーターが7Fまで行くようになるのかがわからない。案内も来なかった。そのうちボックス・オフィスが開いたようで、1人の男性がやって来てエレベーターに乗って、まだ行かないのにと思っていたら7Fまで上がっていった。いつの間に。案内もなかったのに。あわててエレベーターのボタンを押すと、最初の1団がやって来た。何か工夫をして欲しいなあ。

 観客層はオバサンがメイン。石岡瑛子の名か、ターセムの名か。それともどこかの女性雑誌で誉めたのか、有名人がほめたのか。若い女性もチラホラ。若い男性は少ない。男女比はだいたい2対8くらいで圧倒的に女性が多かった。最終的には469席に6割くらいの入り。IMDbの評価は低いが、日本人にはあっているような気がする。もっと入っても良いと思う。

 もぎりでジバンシーのパルファムの試供品(1回分?)をもらった。

 気になった予告編は……日本映画の予告は画質が昭和という感じで、酷かった。とても新作とは思えない。しかもTVの予告の方が画質が良い感じなのは、なぜ? 劇場予告にはお金を掛けていないということか。キネ旬の粘土アニメCMも画質は酷かった。

 対比でハリウッド作品の画質の良いこと。上下マスクの「シャドー・チェイサー」は父親がCIAで事件に巻き込まれ、上司か何かでシガニー・ウィーバーが出てくると。凄い顔合わせ。上映劇場次第かな。10/27公開。

 上下マスク、ダニエル・ラドクリフの「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」は古い時代の話のようで、かなり怖そう。風景や建物だけでも怖い。新宿ピデリーがあるので、見ても損はないだろう。12/1公開。

 上下マスク「マン・オン・スチール」は寂れた漁村から始まる予告で、やがて漁船の漁になって、「ランボー」のようになって、お前は特別な存在だとナレーションが入って、なんだろうと思っているとスーパーマンが飛んでいて、衝撃波のようなものが出ていて、音速を突破して…… スーパーマンのリアル版か。製作はクリストファー・ノーラン、監督はザック・スナイダーだとか。2013年夏公開。

 上下マスク「ルーパー」はブルース・ウィリスとジョセフ・ゴードン=レヴィットが出るSFアクション・ミスタリーらしい。すごいアクションと不思議な映像。キャッチ・コピーは「自分を殺せ」。タイム・パラドックスがテーマか。2013、1/12公開。

 上下マスク「推理作家ポー最期の5日間」は、面白そうなミステリーなのだが……問題は上映劇場だけか。使っていたのはコルトのネービーあたりか。R-15で10/12公開。


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