Rock of Ages


2012年9月22日(土)「ロック・オブ・エイジズ」

ROCK OF AGES・2012・米・2時間03分

日本語字幕:丸ゴシック体下、藤沢睦実/ネスコ・サイズ(デジタル、Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/rockofages/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1987年、祖母の手で育てられた歌手志望のシェリー(ジュリアン・ハフ)は、祖母の勧めもあり、故郷のオクラホマを出てバスでハリウッドに向かう。しかし着いた途端に荷物を盗まれたところを、近くライブ・ハウス「バーボン・ハウス」の歌手志望のバーテン見習い、ドリュー(ディエゴ・ボネータ)に声をかけられ、店のオーナー、デニス(アレック・ボールドウィン)に紹介してもらってウェイトレスの職を得る。二人は惹かれあい、やがて付きあうようになるが、「バーボン・ハウス」で人気バンド「アーセナル」から独立した伝説のロック・スター、ステイシー・ジャックス(トム・クルーズ)のライブが開かれることになる。しかし、街を浄化するという公約で新しくLAの市長になったマイク・ウィットモア(ブライアン・クランストン)の妻パトリシア(ギャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、さっそく悪の根源と決めつけるロックの追放を始める。

72点

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 ロック・ミュージカル。タモリのようにいきなり歌い出すミュージカルは苦手という人にはまったく向かないコテコテのミュージカル。逆に、ミュージカル好きには楽しい映画ということになるだろう。ただし、エロはかなりのもので、大学生以上くらいにしかお勧めできない感じも。よくミュージカルにあるように、とんでもない悲惨さとか、酷過ぎる展開を音楽で柔らかくしているという側面もある。普通に描いたらエロすぎるし、ロックはやっぱり世の中の害かもと思ってしまうほど。

 ロックンロールとはロックンロール・ミュージックのほかに、もともと黒人のスラングでセックスを意味する言葉だそうで、ウィキペディアによれば初期のロックンロールは性的なイメージのものが多かったらしい。それもあって、この映画で描かれているように嫌われていたこともあるのだとか。

 使われている曲は、ボクでもほとんど知っているような有名なものばかり。好きな人にとって、どの曲が使われ、どの場面で、どのタイミングで。どう使われるのかというのはとても興味深いことだろう。そして、意外性もありつつ、ハマりすぎているほどピタリとはまって使われている。この辺はやはりエンターテインメントの国アメリカというか、ハリウッドの真骨頂だろう。音楽と映像のシンクロが興奮を一層盛り上げる。この高揚感。コテコテだが、アンチ・ロック派が「この街をあなた達の勝手にはさせない」と言った時、ロック派が全員でスターシップの「ウィー・ビルト・ジス・シティ」を歌うところは感動した。

 ストーリー自体はあまりいただけないというか、感心しないというか。ガール・ミーツ・ボーイ・ストーリーで、「コヨーテ・アグリー」(Coyote Ugly・2000・米)や「バーレスク」(Burlesque・2010・米)などと同じ何もない田舎を出て都会で一旗揚げる若者のストーリーで、ライブ・ハウス再生の物語で、アンチ・ロック派とロック派の対立の物語で、すでに結構明らかになっているがロックの裏側(スターとマネージャー、記者、ファンなど)を明かす物語でもある。もちろん同性愛もある。元はブロードウェイのミュージカルなんだとか。

 ヒロインのシェリーはジュリアン・ハフ。なんと似たような話の「バーレスク」が劇場映画デビュー作だそうで、それが評価されて本作に繋がったらしい。歌手としては2008年から活躍しており、ヒットを飛ばしている。

 相手のドリューはディエゴ・ボネータ。歌手として活躍する傍ら、TVドラマにも出演していたようで、劇場映画は本作が初めて。

 伝説のロック・スター、ステイシー・ジャックスはトム・クルーズ。クスリで行ってしまっているような役だが、さすがに見事に毒々しく演じている。「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)以来の汚れ役。たまにはこういう役を演じたくなるのかも知れない。

 店のオーナー、デニスもややヨゴレで、演じたのはアレック・ボールドウィン。かつてはアクションものが多かったが、最近は恋愛ものとか普通のドラマが多くなってきた。太っちゃったしなあ……。しかし数々の賞を受賞しているベテラン俳優で、本作のような役もリアルに演じている。

 その店の従業員で、エキセントリックなロニーはラッセル・ブランド。アダム・サンドラーの「ベッドタイム・ストーリー」(Bedtime Stories・2008・米)で、おバカな同僚を演じていた人。イギリス生れのコメディアンなんだとか。強烈な個性とビジュアルはインパクトがある。

 トム・クルーズ同様、市長の妻パトリシアというヨゴレを演じたのはサリン・ゼタ=ジョーンズ。美人で名声も得たのに、あえてこういう役を演じるとは。美形が売りの人は、ときどきはじけたくなるのか。「マスク・オブ・ゾロ」(・1998・)のときは完璧とも思える美女だった気がするが、さすがに歳を取ったという感じだろうか。

 小悪党のマネージャー、ポールはポール・ジアマッティ。こんな役が多い人で、つい最近「スーパー・チューズデー 正義を売った日」(The Ides of March・2011・米)で主人公の破滅のきっかけとなる反対陣営の選挙参謀を演じていた。

 浮気をしている市長はブライアン・クランストン。最近色んな作品に出まくりで、本作の前に「トータル・リコール」(Total Recall・2012・米/加)に出ている。印象的だったのは「ドライヴ」(Drive・2011・米)の自動車修理工場のボスか。

 これまたヨゴレの、かなりエロティックな女性記者はマリン・アッカーマン。本作の前に「キリング・ショット」(Catch.44・2011・米)でグロックをぶっ放すウエイトレスを演じていた。まさかこんな役をやるとは。

 クリス・ダリエンソのミュージカル舞台のオリジナル脚本を映画用に直したのは、ジャスティン・セロー、クリス・ダリエンソ本人、そしてアラン・ローブの3人。

 クリス・ダリエンソは他にも3本ほどライターの作品があるものの、2本は小さな作品で、前作「Barry Munday」(2010・米)は監督もしているが、エロもあるコメディだった模様。ジャスティン・セローは、脚本家でもあり、監督もプロデューサーもやっているが、一番多いのは役者で43本。マイケル・マンの「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米/独ほか)にも刑事役で出ている。脚本は5本で、コメディの「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)や「アイアンマン2」(Iron Man 2・2010・米)を書いている。アラン・ローブは数学でギャンブルに挑戦する「ラスベガスをぶっつぶせ」(21・2008・米)や、話題作の続編「ウォール・ストリート」(Wall Street: Money Never Sleeps・2010・米)など、ちょっと深いドラマを書く人。本作に深みを与えているのはこの人のおかげか。新作が6本も控えている。

 監督は製作総指揮も兼ねるアダム・シャンクマン。この人も監督や、プロデューサー、俳優などの顔を持つが、もっとも多いのが振付師。34本もの作品に関わっている。監督をしているのはヴィン・ディーゼルのコミカル・アクションの「キャプテン・ウルフ」(The Pacifier・2005・加/米)日本でも話題になったミュージカル「ヘアスプレー」(Hairspray・2007・米/英)、「ベッドタイム・ストーリー」など。最近はTVが多かったようで、アメリカで大ヒットとなった 「glee/グリー」(2010〜2012・米)も手掛けている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分くらい前についたらアニメの「TIGER & BUNNY」のグッズを買い求める人の長い行列が。1人何コまでとか制限がかかっていた。そして若い女性が多かったのが意外だった。アニメ人気は相変わらずスゴイものがある。

 10分ほど前に開場になって場内へ。意外と20代くらいの若い人から中高年まで幅広い。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性が多いか。最終的には157席に8割くらいの入り。良く入っていたようだが、もともとキャパが小さい。こんなものか。

 気になった予告編は……またまたリュック・ベッソン製作で……上下マスクの「ロックアウト」はほとんど「ニューヨーク1997」(Escape from New York・1981・英/米)の宇宙版ではないか。薄いと思うが、見てしまうだろうなあ。11/23公開。

 第1作が不評だったと聞いたが続編が作られるという。上下マスクの「ゴーストライダー2」は、まだティーザーで内容は不明。2013年2/8公開。

 上下マスクの「アウトロー」はトム・クルーズのアクションらしいが、内容はまだ不明。2013年2/1公開。

 野球のスカウトマンを演じるクリント・イーストウッドの父と、エイミー・アダムス演じる一人娘との確執、すれ違いを描くらしい上下マスクの「人生の特等席」はこれだけでもう泣けそうな雰囲気。11/23公開。

 スクリーンが上から狭まってシネスコ・サイズになってから、1979年にイランで発生したアメリカ大使館占拠事件を描く「アルゴ」は、CIAが嘘の映画撮影の話をでっち上げ人質を救出するというものらしい。アラン・アーキンも出ている。ベン・アフレック監督・主演で、10/23公開。


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