Iron Sky


2012年9月29日(土)「アイアン・スカイ」

IRON SKY・2012・フィンランド/独/豪・1時間33分

日本語字幕:丸ゴシック体下、高橋ヨシキ、字幕監修:町山智浩/シネスコ・サイズ(デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル

(フィンランドK-12指定、独12指定、米R指定、日PG12指定)


公式サイト
http://gacchi.jp/movies/iron-sky/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

2018年、アメリカの月着陸船が月面に無事着陸した。しかし2人の宇宙飛行士が下り立つと、軍服のようなデザインの宇宙服を着た一団が現れ、1人を射殺、ワシントン(クリストファー・カービイ)を捕虜として月の裏側(ダークサイド・オブ・ザ・ムーン)に連れ去る。そこにには1945年以来、ウォルフガング・コーツフライシュ総統(ウド・キア)率いるナチス・ドイツの一団がが地球から逃れてきて基地を作っていたのだった。親衛隊のクラウス・アドラー准将(ゲッツ・オットー)は、地球征服のためワシントンをガイドとして使おうとする。しかしクラウスのフィアンセで女性教師のレナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)が逃亡を試みたワシントンと出会い、心惹かれたことから彼を助けようとし、事態は思わぬ展開を見せる。

72点

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 ハワイアンのような穏やかな曲から始まる、とんでもなく残虐な宇宙戦争物語。基本的には登場人物はほとんど異常者というか、善い人はいない。みんなヘン。

 とにかく本気のSFXがすごい。月の裏側の鉤十字型の基地、レトロフューチャーな宇宙船、宇宙服(ちょっと押井守監督の「紅い眼鏡」(1987・日)的デザインではあるが)など、実にカッコよく、本気が感じられる。コメディにありがちな安っぽさはみじんもない。雰囲気的には「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)や「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Duide to the Galaxy・2005・米/英)の路線だろうか。ギャグと、とんでもない設定と、ありえない展開と、リアルな映像。そして、美女たちと、ちゃんと残忍で怖い悪。

 ちょっと惜しいのは、ギャグが弱い感じがすること。奇をてらったギャグや、笑わせようという意図満々のギャグ、ただバカなギャグは無い方が良いが、もう少し「ギャラクシー……」や「銀河……」のようにちゃんと笑えるギャグを入れてくれないと、映像のリアルさに内容が付いて行かないというか、バランスが悪い。シリアスにするならもっとリアルさがいるだろうし、コメディにしてはギャグが少ない。この辺をどうとらえるかで、評価は変わってくるだろう。面白かったのだが、ボクにはもう一歩という気がした。

 字幕監修で変えられたのか、字幕で「ありえねえ」や「アンポンタン」は非常に違和感があった。

 月面の総統ウォルフガング・コーツフライシュはウド・キア。たぶん全出演者の中では日本で最も知られている人だろう。見事な死にっぷり。怪優というイメージが強い。もともと「悪魔のはらわた」(Flesh for Frankenstein・1973・米/伊/仏)などで有名になった人だが、ベテランとなった最近でもB級作品が多いようで、アート系で公開された「メランコリア」(Melancholia・2011・デンマークほか)に出ている。その前はリメイク・ホラーの「ハロウィン」(Halloween・2007・米)や「グラインドハウス」(Grindhouse・2007・米)に出ている。日本公開は少ないが、俳優としてはB級路線が仕事が多く安定しているのだろう。

 親衛隊のクラウス・アドラー准将はゲッツ・オットー。いかにも堅物で、悪そうな面構え。日本公開作は少ないが、どこかで見たような気がすると思ったら、古くは「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(Tomorrow Never Dies・1997・英/米)で、最後に基地で戦った相手役をやっていた。そして衝撃的だった「ヒトラー〜最期の12日間〜」(Der Untergang・2004・独/墺/伊)にも出ている。

 美人女性教師のレナーテ・リヒターはユリア・ディーツェ。フランス生れだそうで、1981年だから31歳! 驚きだ。これまではドイツのTVなどで活躍していたようだ。年齢的に厳しいかも知れないが、活躍が楽しみ。

 白人にされてしまう黒人宇宙飛行士ワシントンはクリストファー・カービイ。オーストラリアをベースに、主にTVで活躍している人。映画ではサム・ワーシントンが出たシェイクスピアの現代劇「マクベス」(Macbeth・2006・豪)に出ている。

 女優はみな美人だが、アメリカ大統領がサラ・ペイレン似のステファニー・ポール。1999年頃から活躍しているようだが、日本公開作はない模様。大統領の女性広報官ヴィヴィアン・ワグナーはペータ・サージェント。宇宙戦艦「ジョージ・W・ブッシュ」号はそれだけで笑ったが、羽飾りを着けた衣装でその艦長になるとは。オーストラリアのTVで活躍している人。

 オリジナル・ストーリーはヨハンナ・シニサロ。小説家でTVの脚本も手掛けている。オリジナル・コンセプトはフィンランドの人でヤルモ・プスカラ。本作の監督のビデオ作品「スタートレック皇帝の侵略」(Star Wreck: In the Pirkinning・2005・フィンランド)を書いている。

 脚本はマイケル・カレスニコと、監督も務めるティモ・ヴオレンゾラの2人。マイケル・カレスニコはカナダ生れで、日本公開は少ないが、コメディの「舞台よりすてきな生活」(How to Kill Your Neighbor's Dog・2000・独/米)では監督もやっている。

 監督はティモ・ヴオレンゾラ。1979年のフィンランド生れ。なんと32歳という若さ。「スタートレック皇帝の侵略」が評価されて本作へと繋がったらしい。ミュージシャンでもあるらしい。今後どんな作品を作ってくるのか楽しみ。

 登場した銃器は、月のナチスが当然ワルサーP38、PPK、MP40など。アメリカ軍はナチスの円盤攻撃に対してA10やF/A18などの航空機を出撃させる。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定で、ムビチケで前日に確保。いちいち劇場まで行かなくてすむのは楽で良い。運賃もかからないし、ほとんど時間も掛らない。で、当日は30分前くらいに着いて、予約番号で当日券を発券し、コーヒーを飲みながら待つと15分前くらいに開場。

 観客層は20代くらいから中高年まで割と幅広かった。むしろメインは20〜30代くらい。2/3くらいが若い人で、女性は2割ほど。ゲームやアニメ系の感覚に近いのだろうか。最終的には150席がほぼ満席となった。ただ関係者の一団が7〜8人いて、しかも2〜3人の若い女性がナチス系の軍服を着ていたのには引いてしまった。変なイベントなど無くて安心したが、終わったところでアンケートをやっていたようだ。

 気になった予告編は……TOHOシネマズのCMが恋愛ドラマ仕立てで、それも別れる別れないのウンザリするような内容で、本当にTOHOシネマズのCMになっていたのか? しかもその主演の男性がCDデビューするとかなんとか。うむむ……。

 新しい予告は無く、上下マスクの「のぼうの城」11/2公開と、上下マスク「007スカイフォール」12/1公開が、ついつい気を引かれた。


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