Haywire


2012年9月30日(日)「エージェント・マロリー」

HAYWIRE・2011・米/アイルランド・1時間33分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ネスコ・サイズ(デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル、DATASAT(IMDbではSDDSも)

(米PG-13指定)


公式サイト
http://www.mallory-movie.com/index.html
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

民間軍事会社の敏腕オペレーター、マロリー・ケイン(ジーナ・カラーノ)は、ニューヨーク州の北部にあるドライブインで待ち合わせをしていた。しかしそこにやって来たのはケネス(ユアン・マクレガー)ではなく、アーロン(チャニング・テイタム)だった。いきなりアーロンに襲われたマロリーは、そこに居合わせた青年スコット(マイケル・アンガラノ)に助けられ、彼の車で脱出。何があったのか、説明を始める。

71点

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 うーむ……たった93分の作品なのに、長く感じた。途中、一瞬気を失ったほど。アクション・シーンは悪くない。というか、かなり良い。パンチやキックは本当に当たっているように見えるし、壁に投げ飛ばしたり体当たりするのは、本当に飛んでいるように見える。スピード感も充分。リアル。高いビルの上で飛んだりはねたり、実際にやっているようだし。 銃声も、遠くと近くで完全に変えられており、大きくまがまがしく怖い。しかも、格闘中に顔の近くで撃ったりする。ちゃんと薬莢が飛んでいるが、実際に撮影でこんな事をしたら危険きわまりない。これがまた怖さを増している。一体、どうやって撮影したのだろうか。デジタル処理か。

 なのに、ドラマ部分でも何でもないようなカット、普通ならもっと編集で刈り込んだり、逆に省略して時間の経過を表すようなところを、じっと描いている。無意味に長いカットが多く、テンポが悪いというか、リズムが乱れている。そのため、せっかくの怖い格闘も生きてこず、緊迫感、緊張感が失われて、なんだか気持ちの悪いものになってしまっている。残念。惜しい。

 キャストは、こんなB級アクション作品で、主演が本物の女性総合格闘家とはいえ、映画出演2本目という女性の作品とは思えないほどの豪華キャスト。ほとんどオール・スター・キャスト状態。これは女性総合格闘家ジーナ・カラーノへの期待もあるだろうが、やはり監督がスティーヴン・ソダーバーグというのが大きいのだろう。ただ、この人、当たり外れがあるからなあ……。

 映画の構成もどうなんだろう。現在から始まって、過去の回想シーンと絡めながら進行していくわけだが、感覚的に半分以上を過ぎても事件の真相がわからない状態で、観客はずっと宙吊り状態のまま。ある程度、いま何が起きているのかわからせてもらわないと、観客はついていけない。そんなに長く緊張状態を維持できない。「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)もなかなか真相が明かされない映画だったが、細かなエピソードをその都度、解決していくことでうまく緊張と緩和をコントロールしていた。さらに最大の謎にしても、詳細が不明なだけで、大まかには観客にわかってしまっている。実は物語全体としては大きな問題ではない。

 使われていた銃はグロックが多く、フルサイズのグロック17、ちょっと短いコンパクトの19、そして一番短サブコンパクトの26も出ていた。またSIGの229とH&KのUSPも出ていたような……。サブマシンガンでは、ミニ・ウージ、マイクロ・ウージーも火を吹いていたし、アイルランド警察の特殊部隊はH&KのMP7にイオテックを付けていた。

 一部のシーンで銃の横に赤いテープが付いていたが、あれは何だったのだろう(公式サイトで見られる)。軍などの演習では空砲と実弾で見分けるため青テープと赤テープを使ったりすることはあるようだが、映画撮影では考えにくい。撮影場所の法規制か……はたまた敵味方識別とか? imfdbでは銃のトレーナーがイスラエルの人だったので、イスラエル治安部隊の敵味方識別を再現したものではないかとしている。スライドを引くのに、スリング・ショット・メソッドを使っていたり、冒頭銃のハンマーが起きていなかったり、気になるカットもあったものの、ちゃんとマガジン・チェンジをしていたり、敵から奪った銃を1回スライドさせて弾を詰め直したり(確認するより早い。でも先に1発撃っているような……)、リアルな表現でプロっぽかった。

 主役のマロリー・ケインは女性総合格闘家のジーナ・カラーノ。1982年のテキサス生れだそうで、30歳。さすがに動きのキレが違う。ちょっと怖い感じもあるが、美人で、ムキムキで、強い。ゲームへの出演、キャンペーン・キャラクター、TVなどを経て格闘技映画「Blood and Bone(未)」(2009・米)でスクリーン・デビュー。本作は2作目ながら初主演作。もっと良い作品に恵まれたら、大ブレイクしそう。

 バルセロナでの相棒アーロンを演じたのはチャニング・テイタム。「G.I.ジョー」(G.I. Joe: Rise of Cobra・2009・米/チェコ)や「パブリック・エネミーズ」(Public Enemies・2009・米)に出ていた人。会社の上司ケネスはユアン・マクレガー。意外と悪役の多い人。ボクが最近見たのは「アメリア永遠の翼」(Amelia・2009・米/加)。ダブリンでの相棒ポールはマイケル・ファスベンダー。つい最近「プロメテウス」(Prometheus・2012・米/英)で無表情なアンドロイドを演じていた。父親役はピル・パクストン。なんだか偽物臭い感じがつきまとうのはこの人のキャラか。最近あまり見かけなかったが、TVのシリーズものがあったようで、映画でボクが見たのは「サンダーバード」(Thunderbirds・2004・英/仏)あたり以来か。指名で仕事を依頼するロドリゴは「レジェンド・オブ・ゾロ」(The Legend of Zorro・2005・米)以降、あまり見かけないアントニオ・バンデラス。スコットはフランスの監督でもある「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)のマチュー・カソヴィッツ。見方か敵か良くわからないCIAのコブレンツは「ウォール・ストリート」(Wall Street: Money Never Speep・2010・米)のマイケル・ダグラス。ダイナーでマロリーを助ける青年は「ドラゴン・キングダム」(The Forbidden Kingdom・2008・米/中)で主演したマイケル・アンガラノ。いやはや、凄いメンツ揃え過ぎ。

 脚本は、レム・ドブス。アクション系が多い人で、スティーヴン・ソダーバーグ監督とは「KAFKA/迷宮の悪夢」(Kafka・1991・仏/米)と「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)で仕事をしている。本作の前にはロバート・デ・ニーロのクライム・サスペンス「スコア」(The Score・2001・米/独)を書いている。

 監督はスティーヴン・ソダーバーグ。デビュー作は話題になった「セックスと嘘とビデオテープ」(Sex, Lies, and Videotape・1989・米)。「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich・2000・米)と「トラフィック」(Traffic・2000・独/米)の2本でアカデミー監督賞にノミネートされ、「トラフィック」で受賞。当たり外れというか、合うものと合わないものの差が激しい感じ。最近ではオール・スターで感染爆発を描いた「コンテイジョン」(Contagion・2011・米/アラブ首長国連邦)を撮っているが、どうなんだろう。

 公開3日目の初回、六本木の劇場は全席指定。金曜にムビチケで確保して、30分前くらいに到着して、当日券を発券。15分前くらいに開場。最初は12〜13人で、若い人から中高年まで、幅広かった。女性は3人くらいで、若い感じ。最終的には124席に50人くらい。これは厳しいか。

 気になった予告編は……非常口のランプがスクリーンに映り込んで、本編では消えるから良いが、予告編ではじゃまだった。内容は「アイアン・スカイ」と同じ。まだやるとは信じられない「パラノーマル・アクティビティ4」とか、上下マスクの「リンカーン/秘密の書」は同じ映像で、そろそろ飽きてきた。11/1公開。

 入場プレゼントで「マロニーちゃん」の試供品をもらった。


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