The Hunger Game


2012年10月6日(土)「ハンガー・ゲーム」

THE HUNGER GAME・2011・米・2時間23分(IMDbでは142分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、石田泰子/ネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)(日本語吹替版もあり)


公式サイト
http://www.hungergames.jp/
(全国の劇場リストもあり)

パネム国にはかつて13の地区があり、第13地区が反乱を起こして戦争となり国内が荒れたため、戦後「自由には代償が必要」ということから、残った12の地区の12〜18歳の子供から男女1人ずつプレーヤーを選んで、最後の1人になるまで殺し合いをする「ハンガー・ゲーム」が毎年開催されていた。第74回の今回、第12地区から選ばれたのはピータ・メラーク(ジョシュ・ハッチャーソン)と12歳の少女プリムローズ(ウイロー・シールズ)だったが、妹思いの姉カットニス(ジェニファー・ローレンス)が替わりに出場すると宣言する。

70点

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 重々しさを出そうとしたのか全体に暗く、面白くない。悲惨な話だから、楽しさを狙ってはいないだろうが、ここまでノれないとは。しかも、シネスコ・サイズなのに手持ちカメラの揺れ、ズーム、パン、ティルトとカメラが動きまくり。軽いめまいのようなものを感じて、気分が悪くなってくる。ちっとも集中できない。シロートか。やりたかったらビスタかスタンダードでやれ。しかも、長い。感情も全く伝わってこない。途中何回か眠くて気を失った。IMDbでは7.3点という高評価。しかしボクはまったく楽しめなかった。

 SFならではのビジュアルも、目を見張るようなものでは全然無くて、レトロフューチャー、まるで中世か何かのよう。それでいて、未来っぽいキャピタルでは人々の衣装、メイク、インテリアなどがすべて違和感満載で、観客をイライラさせるようなものばかり。ここでも集中が削がれる。これはアート・ディレクターの責任か、監督の責任か、プロデューサーの責任か。二輪の戦車で登場するシーンなんて「ベン・ハー」(Ben-Hur・1959・米)の縮小版。オマージュなんだろうが真似にしか見えない。

 しかも設定が納得できないものが多い。なぜ若者が各地区男女1人ずつ選ばれて、殺し合いをしなければならないのか。映画の説明だけでは(ほとんど文字の説明だ)ちっとも理解できなかった。さらに言えば最後の1人になるまで戦うのだったら、1地区1人の代表でもいいはずだし、途中で主催者からルール変更で、1地区の男女の生き残りでもOKなんて、簡単に替えて行くなら、そもそものルールなんて意味がない。選ばせる武器もナイフ、槍、弓といった中世的なもの限定。なのに、出てくる傷薬は、塗っただけで重傷が翌朝には完治しているようなハイテク。お助けアイテムは落下傘で投下するのに、渡したい相手のすぐ近くにちゃんと落ちるなんて。

 さらに、142分でも語りきれていない部分が多く、続編を作る気満々という感じがあふれている。結局この戦いはヴァーチャルなのかとか、主人公の彼氏らしい男を最初描いておきながら、あとはほとんど触れないって……。最後には日本語字幕で「ハンガーゲーム2日本公開決定」と出るという始末。ボクは少なくとも同じ監督なら見る気がしない。

 主役のカットニスを演じたのはジェニファー・ローレンス。「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)で、レベッカ・ローミン=ステイモスに代わってミスティークを演じていた人。アート系の作品で多くの賞を受賞しているようだが、日本ではほとんど知られていないのでは。役柄からだろうが、暗い雰囲気で、いまひとつなじめない感じ。続編にも出演し、現在撮影中とか。

 相棒となるピータ・メラークはジョシュ・ハッチャーソン。小さな頃から子役で大作に出演していた人。「ザスーラ」(Zathura: A Space Adventure・2005・米)ではメインの少年を演じていた。そして感動ファンタジー「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米)では、アナソフィア・ロブの友人というか小さな恋人となる少年を演じていた。他にはアトラクション映画とか言った「センター・オブ・ジ・アース」(Journey to the Cenyer of the Earth・2008・米)や残念な吸血鬼映画「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)にも出ている。さすがに、本作ではもう青年の雰囲気。

 カットニスとピータのトレーナーもヘイミッチはウディ・ハレルソン。オリヴァー・ストーンの「ナチュラル・ボーン・キラーズ」(Natural Born Killers・1994・米)が強烈だっだけにその印象が強いが、最近ではホラー・アクション・コメディの傑作ゾンビ映画「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)でいい味を出していた。本作では、ハリウッド映画にありがちな、無精ヒゲでアル中気味の無礼なかつてのヒーローという、型にはまった役を演じている。

 変なメイクとファッションで、それだけでイラつかせるキャラ、エフィー・トリンケットを演じていたのはエリザベス・バンクス。最初のサム・ライミ版「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)の新聞社の秘書役で注目された美女。プロデューサーと結婚し、ブルース・ウィリスのSFアクション「サロゲート」(Surrogates・2009・米)では製作総指揮も務めている。最近見たのは「崖っぷちの男」(Man on a Ledge・2011・米)のハリウッド的タフな女刑事役。

 ちょっとオカマチックな雰囲気で、顔が久保田利伸に似ているなあと思ったスタイリストのシナ役は、ミュージシャンというのかアーティストというのか、あのレニー・クラヴィッツ。こんな雰囲気の人なんだ。

 思わせぶりな登場で、ちっとも活躍しないカットニスの彼氏、ゲイルはリアム・ヘムズワース。「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)のクリス・ヘムズワースの弟だ。「エクスペンデブルズ2」(The Expendables 2・2012・米)に出ているらしい。これから活躍するのか。公開を控えている作品が6本もある。

 大統領は大ベテラン「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)のドナルド・サザーランド、TVの司会者は「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米ほか)のスタンリー・トゥィッチ。

 原作は2008年に出版されたスーザン・コリンズのベスト・セラー小説。ニューヨーク・テイムズ紙の週間ベスト・セラー・リストに180週もランク入りしたらしい。3部作で、全米だけの売り上げが3,650万部なんだとか。しかも48カ国で刊行されているそうな。本作でスーザン・コリンズは共同脚本と、製作総指揮も務めている。

 共同脚本はビリー・レイと監督も務めるゲイリー・ロスの2人。ビリー・レイは第二次世界大戦時の捕虜収容所での殺人事件を描いたブルース・ウィリスの「ジャスティス」(Hart's War・2002・米)、無差別殺人鬼の「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)、実話に基づくスパイ事件を描いた「アメリカを売った男」(Breach・2007・米)では脚本のほか監督も務めている。だいたい推理、サスペンスものを手掛けている人だ。それがなぜ本作を?

 監督のゲイリー・ロスはハート・ウォームなファンタジー・コメディ「ビッグ」(Big・1988・米)で脚本家デビューした人で、その後「ミスター・ベースボール」(Mr. Baseball・1992・米/日)や「デーヴ」(Dave・1993・米)とやはりコメディ系の作品を書いている。傑作感動SFファンタジー「カラー・オブ・ハート」(Pleasantvill・1998・米)では監督も務めている。競馬馬を描いた「シービスケット」(Seabiscuit・2003・米)あたりからコメディではなくなり、本作になるわけだが、どうなんだろう。しかもシネスコ・サイズは「シービスケット」から2本目。うむむ。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。30分ほど前についてコーヒーを飲みながら待っていると10分ほど前に開場。観客層は若い人から中高年まで以外と幅広く、女性は1/3ほど。アクションなのに、女性が主人公からだろうか。まあデートということかもしれないが。最終的には127席に5.5割ほどの入り。まだ2週目でこの入りでは「2」は危険だと思うが……。

 半暗で始まった、気になった予告編は……アニメの「宇宙戦艦ヤマト2199」は、まだやっていたんだ。第三章になるらしい。10/13公開。

 上下マスクの「砂漠でサーモン・フィッシング」って一体どういう映画なのか。実話らしいが……。12/8公開。

 ダニエル・ラドクリフのホラー、上下マスクの「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」は新予告に。イギリスらしい湿ったダークな雰囲気で、かなり怖そう。期待できるか。12/1公開。

 ジェイサン・ステイサムの上下マスク「SAFEセイフ」は公開間近ということで、新予告に。面白そうだが、印象としては「トランスポーター」(The Transporter・2002・米/仏)とそっくり。10/13公開。

 ニコラス・ケイジの上下マスク「ゴーストライダー2」は「1」の評価が酷かったのになぜ作ったんだろう。しかもその「2」がIMDbでは「1」の5.2点を下回る4.4点という驚きの低評価。見る価値あるのかと。セット販売だったんだろうか。アクション・シーンのみカッコいい感じがした。2/8公開。

 リュック・ベッソン印の上下マスク「ロックアウト」はどう見てもジョン・カーペンターの「ニューヨーク1997」(Escape From New York・1981・英/米)とそっくりなのに、なんで「誰も見たことのない……」なんだろう。そこが気になる。たぶん見るけど。11/23公開。

 スクリーンが左右に広がりシネスコ・サイズになってから「レ・ミゼラブル」は重厚な映像と、クリアーで迫力のある絵で圧倒される。この予告のクオリティの高さ。12/21公開。

 もうすっかり忘れていたが「トワイライト・サーガ ブレイキング・ドーンPart 2」もまたやるらしい。しかもお正月映画。ボクにはわからないが、見る人がたくさんいるんだろうなあ。

 字幕のクォリティが低かったのはなぜ? 正体だと斜めの線でもジャギーは出ていないのに、斜体になるとジャギーが出るなんて。しかもルビの位置がズレている。ちゃんとチェックしていないのだろうか。DVDやブルーレイでは直るというのは、本末転倒という気もするけど……。

 それにしても、日本語吹替版なんてこの映画にいる?


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