Th e Expendables 2


2012年10月21日(日)「エクスペンダブルズ2」

THE EXPENDABLES 2・2012・米・1時間42分(IMDbでは103分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT

(米R指定、日PG12指定)(日本語吹替版もあり)


公式サイト
http://www.expendables2.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

自称、消耗品軍団の傭兵グループ「エクスペンダブルズ」は、ネパールにある反乱軍の基地に3台の装甲車で突入。中国人実業家を救出するが、同時に捕虜になっていたライバル傭兵グループのリーダー、トレンチ(アーノルド・シュワルツェネッガー)も救出する。アメリカへ戻ると、若いスナイパーのビリー(リアム・ヘムズワース)が今月いっぱいで辞めて、パリの彼女の元に行きたいと申し出る。ところが、リーダーのバーニー・ロス(シルベスター・スタローン)をCIAのチャーチ(ブルース・ウィリス)が待っていて、撃墜された中国機の中の金庫に入っているものの回収を命じられる。前回の依頼で島を吹き飛ばし、CIA職員を殺し、500万ドルも奪っているから、断れば刑務所へぶち込むという。しかも、金庫を開けることができる女性マギー・チャン(ユー・ナン)を連れて行けという条件付き。すぐに「エクスペンダブルズ」はアルバニアへ向かうが……。

73点

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 一言でいえば、痛快活劇。何も考える必要なし。能天気に、頭を空っぽにして楽しめる作品。ヘタなへ理屈をこねるものより、ずっとわかりやすくて面白い。それぞれのスターの見どころも満載で、とにかく観客を楽しませてくれる。腐っている時なんかは、こういう映画を見てスカッとしたい。まさにそういう映画。たまには、こういう映画も見たいもの。陰謀も何も、単に徹底的に悪いヤツと、良いヤツとの戦い、殺し合い。同じアクションでも「ボーン・レガシー」(The Bourne Legacy・2012・アイルランド)とは正反対の立ち位置。どちらも必要。

 こういう映画は、いかに盛り上げるか。前作に引き続いて、本作も憎たらしくて、嫌らしい、強力な悪役が登場。とにかく敵が徹底して悪くて強くなくてはいけない。本作はヨーロッパの空手チャンピオンのジャン=クロード・ヴァン・ダムが実にいい味を出している。

 そしてアクション・ヒーロー役のオール・スター、豪華な顔合わせ。それぞれに見せ場が用意してあって、魅力が炸裂。自らをパロディにしたようなセリフ回しも笑わせてくれるし、決めゼリフはカッコいい。そして抜群のタイミング。爆破、パンチ、セリフに音楽がシンクロしている。まるでミュージカルのよう。次第にノってくる。

 そして、各スターたちのキレの良いアクション。だいたいピークを越えた人たちがメインなので、往時のキレはないものの、それでもまだまだ現役、若造には負けていられないとばかりに頑張る姿がまた良い。ただ。ロートルのアクションばかりでは辛いので、ジェット・リーやジェイソン・ステイサムは今がピークという感じで、素晴らしいアクションを見せてくれるが。

 しかも、気持ち良いほどに撃ちまくってくれる。年1回のマシンガン大会のよう。撃って、撃って、撃ちまくる。銃もどでかいし、ナイフもナタみたいにでかく、ドカン、ドカン爆発もあって、戦車も出てくるし、ヘリも飛んで、ロケット砲までぶっ放す。こんなこと、まずありえない。

 ただ。物語の展開はまったくのご都合主義。主人公たちが絶体絶命のピンチになると、自分たちの機転や何かが起きてその状況を脱出するのではなくて、どこからともなく知り合いが現れて助けてくれるのだ。将棋で持ち駒を好きなところに打つようなもので、観客は主人公側にどんな駒があるのか全くわからない。たった1人で戦車もやっつけちゃうの? ある意味インチキな感じもするが、それを言い出すとこの作品は楽しめない。

 リーダーのバーニー・ロスはシルベスター・スタローン。監督もかと思ったら、脚本だけだった。これだけアクション映画にたくさん出て、ヒットを飛ばし儲けているにも関わらず、アンチ・ガン派らしい。ハリウッド・スターにしては、いい人らしいんだけど……。公開を控えている作品が4本。1946年生れというから66歳。まだまだ暴れるか。いろんな作品でカスタムの銃やナイフを使い、流行らせてきた人。本作では前作に引き続き、2挺のキンバー・ゴールド・コンバットIIのカスタムとファニング専用にカスタムしたSAAを使う。長物はノベスキーのフラッシュ・サプレッサーを装着したショート・バレルのM4カービン。ラストにポンコツの複葉機をプレゼントされ、クリスマスが「ミュージアムものだ」というと「オレたちもだ」と応える自虐ネタ。

 相棒のクリスマスはジェイソン・ステイサム。とにかくアクションが本物。めちゃくちゃカッコいい。この体のキレ。みごと。銃の扱いも一流で、ロウ・レディ・ポジションがほかの役者たちよりはるかに本格的で決まっている。実際に正式な訓練を受けた人間の動き、扱い方だ。機載機銃のFN MAG、装甲車の車載機銃のM2のほか、アンダー・バレル・ショットガンのM26MASSを装着したM4カービンを使い、ドア・ノブを吹き飛ばして見せる。1967年生れのバリバリ45歳。

 CIAのチャーチはブルース・ウィリス。2011〜2012年はパッとしなかったが、公開を控えている作品が、アクションを中心に6〜7本もある。本作で使っていたの銃は高級M4のHK416、UMP、ハンドガンはサイ・ホルスターに入れていたが、使っていなかったのでは。各キャラクターのポスターの中で、トリガーに指が掛かっていないのはこの人だけ。ステイサムでもかかっているのに……。やっばりちゃんと訓練を受けているだろうし、日ごろも銃を撃っているのかも。シュワちゃんに「次はランボーか」なんて言っている。1955年生れの57歳。まだまだやれる。

 初めと終わりだけ登場するトレンチ役のアーノルド・シュワルツェネッガーは前作から引き続きの出演だが、ハリウッド復帰第1作となる。そして早くも5作品が公開を控えているというから驚き。フルオート・ショットガンのAA12を、エクスペンダブルズのヘイル・シーザーから奪い取るようにして使っている。アクション作品でバリバリ銃を撃っているのに、州知事時代は厳しいガン・コントロールを施行した。1947年生れの65歳。

 憎たらしい敵役を見事に演じたのはジャン=クロード・ヴァン・ダム。たぶん久々のハリウッド大作。低予算のB級映画が多かったようだが、本作の後もそれが続く感じ。それでも公開を控えている作品は5本ほどある。シリーズ5作目の「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」(Universal Soldier: Regeneration・2009・米)でもドルフ・ラングレンと共演。その続編でも共演するらしい。使っていた銃は、P99のゴールド・スライドと、長物はAUG。1960年生れの52歳。ジャンプしての高い回し蹴りはまだ健在。

 都合の良いときにあらわれるワン・マン・アーミー、一匹狼のブッカーはチャック・ノリス。空手のミドル級世界チャンピオンで、「ドラゴンへの道」(The Way of the Dragon・1972・香)でブルース・リーの相手役を演じ注目され、以後アクション映画に良く出るようになった。最近はTVの「テキサス・レンジャー」シリーズなどに出ていたらしい。ピークは「テキサスSWAT」(Lone Wolf McQuade・1983・米)から始まる、1983〜1985年にかけての主演アクション5本。すごかった。初めて登場するときマカロニ・ウェスタン調の曲って、イーストウッドの「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)か!。使っていた銃は3連マガジンを装着したG36C。一番の高齢で、1940年生れの72歳。

 一番の若手、スナイパーのビリーはリアム・ヘムズワース。オーストラリア出身で、「アベンジャーズ」(The Avengers・2012・米)のソー役のクリス・ヘムズワースの弟。劇中、一番の若手だから、軍でもないのにいちいち命令に「イエス、サー」と答えるところが初々しくて、まじめな感じも出ていて非常に良かった。つい最近「ハンガー・ゲーム」(The Hunger Games・2012・米)に主人公の恋人役で出ていた。使っていた銃はバレットのM82A1(M107)。1990年生れの22歳。

 薬物依存から復帰したという設定のガナーはドルフ・ラングレン。「ロッキー4/炎の友情」(Rocky IV・1985・米)からシルベスター・スタローンとの関係は深いようだ。主にB級映画で活躍しているようだが、日本劇場公開作品は少ない。それでも新作は6本ほども控えている。「ユニバーサル・ソルジャー」シリーズでずっとジャン=クロード・ヴァン・ダムと共演している。今回のヴァン・ダムの出演はドルフ・ラングレンの推薦でもあったのだろうか。使っていたのは、どでかいボウイ・ナイフと、UMPサブマシンガン。1957年生れの55歳。

 ボス、ヴィランの右腕ヘクターはスコット・アドキンス。冷酷で憎たらしい感じが素晴らしかった。B級作品が多いようだが、ハリウッド大作にもちょっと出ていたりする。「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏/米/英)では、直接からんではいないと思うが、ジェット・リーと共演している。そして2011年の日本劇場未公開作品でジャン=クロード・ヴァン・ダムとも共演している。このあとヴァン・ダムとラングレンと共演した「ユニバーサル・ソルジャー 殺戮の黙示録」(Universal Soldier: Day of Reckoning・2012・米)が日本劇場公開される。使っていた銃はショート・バレルのAKMSU。スチルではトリガーに指が掛かっていない。1976年生れの36歳。

 紅一点のマギー・チャン役はユー・ナン。日本アニメの実写化「スピード・レーサー」(Speed Racer・2008・米/豪/独)に出ていたらしい。2007年の日本劇場未公開作品でドルフ・ラングレンと共演している。使っていた銃はUMP。ハンドガンはわからなかった。中国生れだが、英語とフランス語が堪能なんだとか。1978年生れの34歳。

 脚本はリチャード・ウェンクとシルベスター・スタローンの2人。リチャード・ウェンクは監督もやるが、面白かったブルース・ウィリスの「16ブロック」(16 Blocks・2006・独/米)の脚本や、つい最近ジェイソン・ステイサムによるリメイク「メカニック」(The Mechanic・2011・米)の脚本を書いている。

 監督はイギリス生れのサイモン・ウェスト。プロデューサーとしても多くのTV作品などを手掛けるが、監督デビュー作はニコラス・ケイジのアクション「コン・エアー」(Con Air・1997・米)。その後ジョン・トラボルタのミステリー「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」(The General's Daughter・1999・独/米)や「トゥームレイダー」(Lara Croft: Tomb Raider・2001・米/英ほか)を手掛ける。本作の前に「メカニック」を撮っている。アクションはお得意というところか。1961年生れの51歳。

 ほかに出ていた銃は、AKM、G36、P226、P229、M4カービン、ミニ14、ベネリM4ショットガン……など。アーマラーはロケ地によって変わるが、ブルガリアのキー・アーマラーはマーリン・タコフ。ヴァン・ダムの「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」(Universal Soldier: Regenaration・2009・米)のアーマラーをやっている。ほかにキー・アーマラーでブライアン・ウェンツェル、セット・アーマラーでステュアート・ウェンツェルの名もあった。ブライアン・ウェンツェルはTVの「24」などのほか、アンジェリーナ・ジョリーの「すべては愛のために」(Beyond Borders・2003・米/独)、つい最近実話の映画化ジェラルド・バトラーの「マシンガン・プリーチャー」(Machine Gun Preacher・2011・米)を手掛けている。ステュアート・ウェンツェルは1980年代からアーマラーとして活躍し2000年代に入ると仕事をしていないようだから、ブライアンの父か? だいたいB級系作品のようで、「アメリカン忍者」など日本劇場公開されていない作品がほとんど。日本劇場公開されたのは「サイボーグコップ」(Cyborg Cop・1992・米)シリーズなど数本。

 それにしても、画質が良くなかった。ツブツブの砂をまいたようなザラ付き、粒状感。フィルムで撮ったのがあだになったか。そして字幕が斜体になるとジャギーが出るのもいただけない。解像度低過ぎ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、初回のみ2番目の広さの劇場で、2回目から最大劇場での上映。時間の都合もあり、しようがなく初回を選択。10分前に開場し観客層は最初の20人くらいは、15〜16人が中高年男性で、オバサンが3人くらい。以降もほぼこんな感じ。最終的には、遅れてくるヤツも多くハッキリしないが、301席の7割くらいが埋まった。

 気になった予告編は……ほぼ前日の「SAFE セイフ」の時と同じ予告で、特になし。ただ邦画が増えたせいなのか、洋画の見たい作品が残念な劇場で上映され、なんとも悔しい思い。「新宿ピカデリー」のような劇場を知ってしまうと、口が肥えたのか、スクリーンが良く見えない劇場、小さくて暗いスクリーンの劇場ではもう見られなくなってしまった。同じ料金だもんなあ。ボクもかつては良く通った「銀座シネパトス」が2013年3月31日で閉館だそうだが、まあしようがないかなと。

 なんと、早くも「エクスペンダブルズ3」製作決定だそう。冒頭に、日本語字幕で出た。

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