日本語字幕:細丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(Arri)/ドルビー・デジタル、DATASAT
(米PG-13指定)
1818年、アメリカ・インディアナ州。エイブラハム・リンカーンは親友の黒人少年ウィルを助けようとしてトラブルになり、父はクビになり、雇い主のパーツ(マートン・ソーカス)から借金もすべて返せと言われる。父が金はないと答えると、パーツは他の方法で返してもらおうという。その夜、何者かが現れ、翌日から母の体調が悪くなり、そのまま亡くなってしまう。8年後、父も亡くなり、1人となったリンカーン(ベンジャミン・ウォーカー)は母の敵を討つため銃を手に入れ、パーツに向かって至近距離から発砲する。しかし、パーツは固めを失っただけで、逆に反撃してきて危うく殺されそうになる。その時、ヘンリー・スタージス(ドミニク・クーパー)が現れ、凄い力を発揮すると救ってくれる。彼は、リンカーンにヴァンバイア・ハンターにならないかと言い出す。
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なんで3Dなのか。ほとんど効果なしだし、3Dにした意味がわからない。ちゃんと3D効果があるシーンもあるが、だいたいはピントが浅いし、アクション・シーンはカメラの動きが速くて、3Dに向かない。動きが速いと3Dでは認識が間に合わない。とても疲れる。集中もしにくい。唯一すごかったのは、3Dのおかげなのか不明だが、透明感があって光るヴァンパイアの目だった。 それで「秘密の書」って? 日記は出てくるが、そのことか。ヴァンパイア・ハンターでは稚拙過ぎると思ったか。主人公がリンカーンである必要もない。大統領選挙があるからわざわざ選んだのか。見終わっても必然性がわからなかった。原作小説があるらしいが……。 ただ、映画としてはノン・ストップ・アクションといった感じで、スピード感たっぷり。ヴァンパイアも凶悪そうで、いい雰囲気。ただ、銃はあまり活躍せず、主に銀をコーティングしたオノが使われるのはちょっと残念。それに「銀」って狼男じゃなかったっけ? 心臓に杭も打たず、基本は頭をはねるだけ。普通に(?)血が飛び散るだけで、燃え尽きたりしないし、日光のもとに出ても何ともない。日焼け止めとサングラスだけ。これでパンパイア? 銃は基本マズル・ローダー(前装銃)。当初フリント・ロックが使われていたようだが、後半、南北戦争ではパーカッションに。リンカーンが使うオノに仕込んだ銃は、たぶん映画のオリジナル・デザインだろう。ヘンリーがリンカーンに勧める銃は、映画の中ではピストルをスコティッシュ・ハイランドと呼んでおり、長物をブランダーバスと呼んでいる。ブランダーバスは銃口がラッパのように広がっている銃。石なんかも詰めて撃ったらしい。別名ラッパ銃。 南北戦争のシーン、ゲティスバーグで、リンカーンの妻メアリーが使っているのはスペンサー・カービン。列車の攻防戦ではヘンリーがショルダー・ホルスターに入れて2挺のスタールM1858を使う。さらにラストのヴァンパイアの南軍との合戦では、銀の弾が撃てる銃としてスプリングフィールドの刻印を探して兵士たちに支給している。M1861だろうか。ラスト、現在で若い男がバーで持っている銃はM92のシルバー。 リンカーンを演じたベンジャミン・ウォーカーは、髪形のせいもあるのかもしれないが、なんだか雰囲気がリーアム・ニーソンに似ている気がした。比較的新人のようで、短編やTVに出ているようで、映画はイーストウッドの「父親たちの星条旗」(Flags of Our Fathers・2006・米)など。本作が初めての大きな役のよう。 リンカーンの妻となる美女のメアリーは、メアリー・エリザベス・ウィンステッド。「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でマクレーン刑事の娘を、「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(Scott Pilgrim vs. the World・2010・米/英ほか)で主人公が憧れる少女を演じていた子。大人になったなあという感じ。老けメイクにはビックリ。 黒人の友人ウィルはアンソニー・マッキー。「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)で爆発物処理班の1人を演じていた人。SFミステリーの「アジャストメント」(The Adjustment Bureau・2011・米)でエンジェル、SFロボット・アクション「リアル・スティール」(Real Steel・2011・米/印)や「崖っぷちの男」(Man on a Ledge・2012・米)にも出ている。 リンカーンの父はジョゼフ・マウル。つい最近「シャドー・チェイサー」(The Cold Light of Day・2012・米/西)でシガーニー・ウィーヴァーの部下の殺し屋を演じていた人。 ヴァンパイアのボスはルーファス・シーウェル。悪役といえばこの人という感じ。悪魔崇拝者を描いた「ブレス・ザ・チャイルド」(Bless the Child・2000・米/独)も怖かったが、中世騎士物語「ROCK YOU ![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)の憎たらしい伯爵も良かったし、「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)の皇太子役も良かった。最近ではジョニー・デップの「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏)に謎の男役で出ていた。この人はうまい。そして出ているだけで存在感がある。 原作は、脚本と製作総指揮も務めるセス・グレアム=スミスの「ヴァンパイアハンター・リンカーン」。1976年生れというから、まだ36歳。短編などの撮影監督としてキャリアを始め、TVの脚本を手掛けるようになり、パロディ小説「高慢と偏見とゾンビ」で人気作家の仲間入りをしたのだとか。本作でプロデューサーを務めるティム・バートンの「ダーク・シャドウ」(Dark Shadows・2012・米)で映画の脚本を手掛けるようになったという。さらにティム・バートンの次回作「ビールトジュース2」の脚本も手掛けるらしい。 監督は製作も兼ねるティムール・ベクマンベトフ。驚きのSFダーク・ファンタジー「ナイト・ウォッチ/NOCHONOY DOZOR」(Nochnoy dozor・2004・露)の脚本と監督だ。3部作と言われながら、どうにか第2部「デイ・ウォッチ」(Denevnoy dozor・2006・露)は前売り券なしで劇場公開されたものの、第3部「ダスク・ウォッチ」はどうなったんだろう。IMDbでは2作の間に「Nochnoy bazar」(2005・露)があるようだが……。 映画の日の1日公開で、3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。10分前くらいに開場して場内へ。ほぼ中高年で、女性は1割弱くらい。公開3日目で3Dだというのに127席という小劇場での上映。それでも8割くらいの入りはリッパというところか。 気になった予告編は……トム・クルーズが元軍の捜査官ジャック・リーチャーを演じる、上下マスク「アウトロー」は、やっぱりカッコいい。銃の撃ち方もうまいし、格闘技もキレがあって鮮やか。かなりの訓練を積んだのだろう。期待できそう。2/1公開。 半暗のまま3D眼鏡を掛けるように指示があって、上下マスクの「ライフ・オブ・パイ」は3Dの新予告。サーカスを乗せた船が沈没して、生き残った少年が救命ボートを見つけ中をのぞいたら虎がいた、というような話らしい。この2人がどうやってサバイバルするのか。絵画のようなビジュアルは3Dに合っている気がした。3Dで見たい。1/25公開。 暗くなって、スクリーンが左右に広がって、本編へ。 |