Nobou no shiro


2012年11月4日(日)「のぼうの城」

2011・TBSテレビ/アスミック・エース エンタテインメント/毎日放送/中部日本放送/東宝/小学館/C&Iエンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/アサツー ディ・ケイ、ジェイアール東日本企画/WOWOW/ハピネット/TBSラジオ&コミュニケーションズ/RKB毎日放送/北海道放送/静岡放送/中国放送/Yahoo! JAPAN/日本出版販売/サイバードホールディングス/朝日新聞社/シブサワコウプロダクション/テレビ埼玉/東北放送/テレビ山梨/TSUTAYA/新潟放送/エフエム東京・2時間25分

シネスコ・サイズ(デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://nobou-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

天正18年(1590年)、日本統一を目前にした羽柴秀吉(はしばひでよし・市村正親)は、関東を治める北条家を攻め落とすため、本城たる小田原城の攻撃を開始する。しかし北条勢の支城は関東全域に20もあり、それも攻め落とさなければならなかった。関東北部、現在のさいたま県にあった忍城(おしじょう)の攻略は、兵2万、大谷吉継(おおたによしつぐ・山田孝之)、長束正家(ながつかまさいえ・平 岳大)らの武将とともに、総大将・石田三成(いしだみつなり・上地雄輔)に託された。忍城城主・成田氏長(なりたうじなが・西村雅彦)は北条家の命を受け手勢の半分の500騎を引き連れて小田原城入りし、家老の成田泰季(なりたやすすえ・平泉成)が病死したことにより、何の取り柄もないが民には人気があり、でくのぼうから「のぼう様」と親しまれていた従兄弟の成田長親(なりたながちか・野村萬斎)が城代を務めることになる。500名の成田軍には槍の名手、正木丹波守利英(まさきたんばのかみとしひで・佐藤浩市)、軍略の天才、酒巻靭負(さかまきゆきえ・成宮寛貴)、剛腕の柴崎和泉守(しばざきいずみのかみ・山口智充)らがいた。城主は小田原城に入ったらすぐ関白(羽柴)に内通するから、軍勢が来たら開城しろと、長親に言い残していた。長親もそのつもりでいたが、横柄な天下軍の軍使・長塚の態度に、思わず「戦いまする」と答えてしまう。

74点

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 ちょっと長いが、500対20,000、面白かった。痛快。ギャグも、ややオヤジ系ながらウケていて、後半には笑い声も起きていた。勧善懲悪とかそういうのではないし、大局では負けているのだが、局地戦では負けなかったと。しかも史実で、実際に当時の名残が今も史跡として残されていると。

 ただ、冒頭の30分くらい、軍使が忍城に行くあたりまでの普通のドラマ部分がヒドい。むしろ、無くても良いくらい。プロに対して失礼だが、名優と呼ばれる人が出ていても、まるで学芸会レベルのような印象。芝居は大げさ、メイクは舞台のような強調されたもので、顔に絵を描いたよう。気持ちは笑っていないのに、無理して顔だけで笑っている感じ。見ているこちらが恥ずかしくなってくる。役者も、ついカメラを見てしまうような、そんな不自然さ。麦踏み歌とか、田植え歌の踊りなどは、見ていられなかった。マンガか!?

 それ以外は、後半になると怒鳴ったりの戦いになるので芝居がしやすいからか、違和感は消え、物語はスムーズに展開していく。野村萬斎も自然なでくの坊感だし、佐藤浩市はどこにいても佐藤浩市だし、久々に見た鈴木保奈美が実に自然に溶け込んでいて、特に良いのが上地雄輔。大声でしゃべる感じは総大将らしいし、わくわくしている感じの時、本当に目がきらきらと輝いている雰囲気が出ているのにはビックリ。うまい。

 ちょっとデジタル処理は使い過ぎの感も。パノラマ・ショットは壮観だが、多過ぎる気がしないでもない。これ見よがし。水攻めの奔流はリアルさが少し欠けて、いかにも合成といった違和感も(これがあったので去年公開できなかったのか)。そして、合成のためなのか、一部の画質が粒状感があって良くなかった。そして、たぶんほとんどの画像をいじっていると思うのだが、晴れていても青空がほんのちょっとしかなく、あとは白く飛んだ空ばかり。どうせいじるなら青空にして欲しかったなあ。

 不思議なのは、首が飛んだり、斬られて血がほとばしったり、死体の傷口がリアルに映されたりしているのに、レイティングなし。

 雰囲気は、「BALLAD名もなき恋のうた」(2009・日)によく似ていた。城内の雰囲気、戦場のパノラマ、戦闘シーン……カメラ・アングルまで……。ロケ地が、カメラマンが、VFX関係が、一緒なのだろうか? リメイク版「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」(2008・日)もちょっと入っていたか。

 銃はもちろん火縄銃。狙撃のシーンで銃身の長い種子島が登場する。銃器特殊効果はBIG SHOT。城門が銃撃で穴だらけになるシーンなど、リアルで良かった。ただ、投石器で飛ばす焼き石は爆弾のようで、演出なのだろうが、大げさ過ぎたのでは。

 ラスト、エンド・クレジットで、現在に残る地名、遺跡、寺などが映像で出てきて感慨深かった。近くを新幹線が走っている。史跡を訪ねてみたい気になった。埼玉県行田市の水城公園が忍城趾で、桜の名所なんだとか。確かに荒川と利根川に挟まれている。

 正木丹波守利英は佐藤浩市。この人はもちろんうまいが、何を演じても佐藤浩市だ。佐藤浩市として存在感がある。これも珍しいことだと思う。CMでも、三谷幸喜のコメディでも、シリアスな刑事ものでも、佐藤浩市として溶け込んでいる感じ。最近スクリーンで見たのは「最後の忠臣蔵」(2010・日)だったか。

 とにかく良かったのは石田三成を演じた上地雄輔。いきいき、キラキラしていた。演じるのが楽しい感じ。もともと俳優なのに、つい歌手として見ていた。劇場ではほとんど見ていない。「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」(2008・日)の妖怪役くらいか。特殊メイクで良くわからなかったし、それもほとんど印象に残っていない。実はうまい人なんだ。

 あまり出番はないが、大谷吉継の山田孝之と、ひさびさ芸能界復帰の鈴木保奈美は、さすがの説得力ある存在感。自然でうまい。

 強いものには弱く、弱いものには強く出るという、ちょっと突っ張った感じの長束正家は平 岳大。たぶん彼のおかげで印象に残った役。うまい。トゲトゲした感じが絶妙。平幹二朗と佐久間良子の息子なんだとか。なるほどうまいわけだ。良いDNAを受け継いだのだろう。「SP野望篇」(2010・日)シリーズに出ていたそうだが、エリート集団の1人か? 切腹時代劇「一命」(2010・日)にも出ていたらしい。もっと大きな役で活躍して欲しい。

 脚本は小説家でもある和田 竜。1969年生れというから33歳という若さ。2003年にら映画の脚本「忍ぶの城」で城戸賞を受賞し、それを小説化した「のぼうの城」で2007年に小説家デビューしたらしい。本作のその映画バージョン。今後の活躍が楽しみ。

 監督は犬童一心と樋口真嗣の2人。どういう分担だったのか。樋口監督は「ガメラ大怪獣空中決戦」(1995・日)の特撮で観客の土肝を抜いた人なので、特撮絡みが樋口監督か。WWII潜水艦もの「ローレライ」(2005・日)やSFパニック「日本沈没」(2006・)、時代劇の「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」も監督している。

 犬童監督は「ジョゼと虎と魚たち」(2003・日)や「メゾン・ド・ヒミコ」(2005・日)を撮っているが、どれも小劇場公開で見ていない。なので、わからない。話題になった「ゼロの焦点」(2009・日)では脚本も書いている。ミステリー系のドラマが得意な人だろうか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。10分前くらいに開場。下は小学生くらいからいたが、合戦シーンはちょっと刺激が強かったのではないだろうか。メインは中高年で、男女比は5.5対4.5くらいで、やや男性が多い感じ。最終的には301席がほぼすべて埋まった。まあ、当然というところだろう。今後もクチコミで増えるかも。

 気になった予告編は……日本映画はいまひとつビンと来ないものばかり。なんで映画なのかも良くわからない。

 「綱ひいちゃった」は「シコふんじゃった」(1991・日)みたいなタイトルで、仕事を失いそうになって、綱引き大会に出ることになるとか何とか。笑いもあるスポ根的感動物語と、大分の地元興し的作品か。11/23公開。

 上下マスク「悪の教典」は新予告に。クラス全員皆殺し、とは穏やかではない。ポイントが使えたら見たい。11/10公開。

 上下マスクの「任侠ヘルパー」はヤクザが老人ホームの経営をするというフジテレビのドラマの映画化。人事ではない感じと、予告編だけで泣きそうで、見れそううもない。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから、わざわざ左右マスクで「今日、恋をはじめます」は人気漫画の映画化らしい。OVAもある。女子には人気なのだろう。武井 咲なので若い男子も注目か。

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