Trouble with the Curve


2012年11月24日(土)「人生の特等席」

TROUBLE WITH THE CURVE・2012・米・1時間51分

日本語字幕:手書き風書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(米PG-13指定)


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/troublewiththecurve/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

アトランタ・ブレーブスの名スカウトマン、ガス(クリント・イーストウッド)は、PCを使わず高校野球の試合を自分の足で見て回り、勘や経験を頼りに優秀な選手を発掘する古いタイプ。しかしここ3〜4年で1人しかスカウトしておらず、ゆくゆくはGMを目指す野心的な若いスカウトマン、フィリップ(マシュー・リラード)が、3ヶ月後の契約切れを機に追い出しを画策していた。そんな時ガスは目に異常を感じかかりつけの医師から、専門医の精密検査を受けるように言われ落ち込む。様子がおかしいと感じたガスの上司ピート(ジョン・グッドマン)は、ガスの1人娘で、有能な弁護士でもあるミッキー(エイミー・アダムス)に、スカウトに同行して話をしてはどうかとすすめる。しかし父娘はお互い疎遠で、コミュニケーションをうまく取ることができなかった。

72点

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 うーむ、野球大国アメリカだから成立したような映画。そこそこに面白く感動的なのだが、ごくごく普通のドラマ。もしイーストウッドやエイミー・アダムスら有名俳優が出ていなかったら、たぶんこれはTVのドラマ、せいぜいTVムービー・クラスだろう。

 作品的には「マネーボール」(Moneyball・2011・米)のカウンターパートのような映画。片やデータと統計、いわばデジタル世代の球団経営。片やPCを否定した勘によるアナクロな選手スカウト。分野が違うし、単純な比較はできないが、結局はどちらも大事ということだと思う。どちらにも優れたところがあり、片方を否定して存在するわけではない。ただイーストウッドが演じると説得力が出る。とはいえ、IMDbでは1つの答えが出ていて、「マネーボール」は7.6点、本作は6.8点。

 笑えるセリフ回しや設定が随所にあるが、意外と笑う人が少なく、盛り上がらなかった。客の年齢層が高いため、老人ネタには笑うに笑えないということなのかもしれない。ただ、ボクはかなり笑えたし面白かった。凹んだ車を娘に「どうしたの?」と言われ「ガレージが縮んだんだ」とか、「アイス・キューブは俳優じゃない」などなど。

 ただ中高年にはグサリとくるエピソードも多い。目が見えなくなってくる緑内障か黄斑変性症の疑いがあるとかは、本当にひとごとではない話。オシッコの出が悪くなって、老眼鏡が手放せなくなって、ときどきイスとかテーブルにぶつかって、文句ばっかり言って……。うむむ、歳を取るって、アメリカでも一緒なんだ。

 それと、かなりのメジャー・リーグ・ファンでないとわからないネタも多い。メジャー・リーグのドラフト会議みたいなシステムとか、野球クイズなんて、ボクにはさっぱりわからない。あと、映画マニアらしいスカウトマンの会話も、「ロバット・レッドフォード」の話とか「アイス・キューブ」の話とかは、そこそこ映画に詳しくないと楽しめないかも。

 「ユー・アー・マイ・サンシャイン」はややあざとい感じがしたが、イーストウッドがつぶやくと感動する。ただ。斜体の字幕の解像度が低く、まるで昔のビデオみたいにジャギーが出ていたのにはガッカリ。興ざめ。酷い。

 主演のクリント・イーストウッドは「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)以来5年ぶりの映画出演作。1930年生れだから82歳。娘役のエイミー・アダムスは38歳だからちょっと無理がある感じ。どちらかといえば孫。無理をしないでガンバって欲しい。

 そのエイミー・アダムスは「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)以降、地味な作品が多かった印象。元野球選手で今はスカウトのジョニーはジャスティン・ティンバーレイク。つい最近SFアクションの「TIME/タイム」(In Time・2011・米)に出ていた。

 上司役が「アルゴ」(Argo・2012・米)のジョン・グッドマン、GMが「デンジャラス・ラン」(Safe House・2012・米/南ア)のロバート・パトリック。野心あふれる若手スカウトが「ファミリー・ツリー」(The Descendants・2011・米)のマシュー・リラード。

 脚本はランディ・ブラウン。熱烈な野球ファンだそうで、何と劇場長編映画の脚本は初めてとか。ネタにもなっていたから、たぶん映画にも詳しいはず。これまでTVの脚本に関わっていたらしい。

 監督はロバート・ロレンツ。1991年、第2班の助監督からキャリアをスタートさせ、「マジソン郡の橋」(The Bridges of Madison County・1995・米)で初めてイーストウッド作品の第2助監を勤めた。以後イーストウッド作品に助監として関わり、「ブラッド・ワーク」(Blood Work・2002・米)からプロデューサーを勤めるようになった。本作でついに劇場長編映画の監督デビューを飾った。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、10分ほど前に開場して場内へ。ほぼ中高年というか、白髪が目だっていた。女性は1/3ほど。場内でケータイが鳴って平気で出るジジイもいた。下品なマナー広告は全く効き目がないようだ。暗くなっても入ってくるのでわからないが、たぶん最終的には287席に3.5割くらいの入り。

 わけのわからないQPのCMのあと、映画のようなクォリティの高いCMが流れ、予告かと思ったらルイ・ヴィトンだった。驚いた。この差。

 気になった予告編は……スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってから「ホビット」はもの凄い迫力。強烈な絵の力と音響。12/14公開。

 そしてスケールの大きなSFらしい「クラウド・アトラス」も驚きの映像の数々。トム・ハンクスとハル・ベリーがいろんな姿で登場する。これは見なければ。3/15公開。


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