The Woman in Black


2012年12月1日(土)「ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館」

THE WOMAN IN BLACK・2012・英/加/スウェーデン・1時間35分

日本語字幕:丸ゴシック体下、表記なし/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル、DATASAT、SDDS

(英12A指定、米PG-13指定)


公式サイト
http://www.womaninblack.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

20世紀初頭のロンドン、弁護士事務所で働くアーサー(ダニエル・ラドクリフ)は、妻に先立たれ失意の日々を送っていた。仕事が手に付かず生活費にも困るようなありさま。そんなとき、雇い主からある田舎町で先月亡くなった夫人の屋敷に行き、すべての書類を調べて遺言状を探せと命じられる。仕事ができない人間を雇っておくことはできない、これが最後のチャンスだと。そこで一人息子の4歳のジョセフ(ミーシャ・ハンドリー)を若い乳母(ジェシカ・レイン)に預け、単身、その町の外れにある古いお屋敷へ向かう。途中、列車で知り合ったデイリー(キアラン・ハインズ)に、町では自分1人しか持っていないという自動車で宿まで送ってもらう。しかし、予約は入っておらず、部屋も満室で泊まれない、別な町へ行けと言われる。しかも誰も町の外れの館には行こうとしないのだった。料金を大幅に上乗せして馬車で屋敷に向かうと、奇妙な音が聞こえてくる。

70点

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 うーむ、これは……。何が言いたかった映画なのだろうか。これは「死」しか解決がないということ? すべての問題から解放してくれるのは「死」しかないと。それを望んでいなくもないところが、救いなのかもしれない。ただ、観客の多くはそうではないと思っているし、少しでも生きたい人にとっては、これは大いなる悲劇。どんなに努力し、良いことをしても、報われないという話になってしまう。原作小説があるようなので、脚本のせいではないのかもしれないが、映画としてはこの結末はどうなんだろう。変えても良かったのではないだろうか。非常に欲求不満が残る。怖いというより、かわいそうな映画。

 これは、つまり呪いをかけた女の怨みが、あまりに深くて強かったということなのだろう。しかし、ここまでやってもらって、恩をあだで返すとは。これほど思いを深く持つことができるなら、感謝の感情も強く深く持つことができるのではないかと思ってしまう。逆に、お礼をして、「その後幸せに暮らしました」という、おとぎ話のような結末をプレゼントしても良いくらい。それを裏切るとは。終わった途端、出て行く人の多かったこと。当然の感情、行動だろう。ボクも出たくなったが、クレジットが見たかったので耐えた。

 まあ、全体では音で脅かすやりかた。じわじわ怖いとかでは無く、びっくりの怖い。ゴシック・ホラーな感じはしない。ビックリ・ハウスというか、今風のお化け屋敷的怖さ。見終われば何も残らない。後で思い出して怖いということもない。霊たちも目が大きく落ちくぼんでいて黒く、ありがちなパンダ系のメイク。残念。

 とにかく主人公はかわいそう。せっかく息子が誕生したのに、奥さんがそのために死亡し、仕事がうまくいかずクビ寸前の状態。今回の仕事がダメなら最後だと。4歳の息子を男手1つで育てなければならないのに、収入が無くなる(それでもなぜか乳母を雇っているが……)。この問題をこんな方法で解決するなんて。とくにビジュアルもすごいところがあるわけでもなく、どこが見どころなのか微妙。なんか心配しながら見たのがバカみたい。その気持ちを返してくれ。

 ただ、ホラーの雰囲気だけは良く出ていた。素晴らしいロケーション。イギリスの海岸沿いにある古い館。フランスのモン・サン=ミッシェルのように海側に突き出た島のような土地にあり、満ち潮になると1本道が埋まって外界と遮断されてしまう。そんな半島(?)の林の中に屋敷がある。これはすごい。

 主演のダニエル・ラドクリフは「ハリー・ポッター」シリーズ以外に、劇場作品で青春映画の「ディセンバー・ボーイズ」(December Boys・2007・豪)に出ているが見ていない。ただTVムービーのWWIも「ダニエル・ラドクリフのマイ・ボーイ・ジャック」(My Boy Jack・2007・英)は見て、感動した。青年将校役が実にうまかった。本作もかわいそうな身の上のシングル・ファーザーを好演している。なので、怖いというより、一層かわいそうな感じが立ってしまっている。うむむ……公開を控えている作品が3本もあるということで、「ハリー・ポッター」シリーズは終わってしまったが、しばらくは大丈夫のようだ。

 ホラーの雰囲気を高めていたのは地元の名士デイリーを演じたキアラン・ハインズ。実に不気味な感じが素晴らしい。だいたい悪役かホラーという感じ。スピルバーグの傑作「ミュンヘン」(Munich・2005・米加仏)の暗殺チームの一員が良かった。最近ではアンソニー・ホプキンスのホラー「ザ・ライト エクソシストの真実」(The Rite・2011・米ほか)で神父をやっていた。「ハリー・ポッターと死の秘宝Part 2」(Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 2・2011・米/英)でダニエル・ラドクリフと共演している。

 原作はスーザン・ヒルの「黒衣の女 ある亡霊の物語」(ハヤカワ文庫刊)。すでに1度、1989年にイギリスでTVムービー化されており、それはIMDbで7.4点と高評価を得ている。本作は劇場作品でありながら6.5点と評価を落としている。

 脚本はジェーン・ゴールドマン。ファンタジーの「スター・ダスト」(Stardust・2007・英/米/アイスランド)、痛快ヒーロー・アドベンチャーの傑作「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)、コミック原作の大ヒット・シリーズ最新作「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)の脚本を書いている。どれもすべて高評価で面白かった。それで、なんでこうなっちゃうんだろう。

 監督はジェームズ・ワトキンス。短編も入れて脚本5本、監督作2本。日本公開されたのは2本で、1本は脚本。つまり本作が日本監督デビュー作。もう1本の監督作、日本未公開のホラー「バイオレンス・レイク」(Edaen Lake・2008・英)が高く評価されて(IMDbでは6.9点)、本作につながったらしい。うむむ。

 霧の中から文字が浮かんでくるタイトルはマット・カーティス。2001年からタイトル・デザインを手掛けていて、冒険アクション「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英/西ほか)、「スター・ダスト」、「キック・アス」、最近では「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(The Iron Lady・2011・英/仏)のタイトル・デザインを担当している。うまい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保、30分前くらいに付いたら大混雑。映画の日で当日券1,000円の日だった。12〜13分前に開場し、場内へ。やはり中高年がメインで、若い人は数人。女性の方がやや若い感じ。男女比はほぼ半々。関係者は2人か。遅れてくる人が多くはっきりしないが、最終的には157席の9割ほどが埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「ブレイキング・ドーン」はまだやっていたんだという感じ。どうでもいいわ。12/28公開。

 「レ・ミゼラブル」は新予告に。暗い話だが面白そう。12/21公開。

 スクリーンの上が下がってきてシネスコ・サイズになり、本編へ。


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